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|研究論文集「地域活性研究」Vol.18(2023年3月発行)目次


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~ 目次 ~

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学術研究論文

 

●参加型の地域健康づくりが高齢者の行動や健康状態に及ぼす影響

垣花 渉(石川県立看護大学看護学部)

論文要旨▼
本研究の目的は、地域を基盤とした参加型研究によるコミュニティ・エンパワメントの構築が、高齢者の健康状態に有用となることを検証することであった。研究者と高齢者が協働して地域健康づくりを作り上げる2年5ヶ月の介入プロセスを、トライアンギュレーション法を用いて質的に分析した。併せて、介入に伴う高齢者の体組成および体力の変化を、対照群のそれと比較した。地域健康づくりは、義務の状態から身体活動による恩恵の受容を経て、主体的なものへ変容した。それに伴い、高齢者の筋肉量および6分間歩行が有意に改善した。地域健康づくりには、コミュニティ・エンパワメントの構築が重要な役割を果たし、高齢者の健康が維持・増進された。
 
 

 

 
 

観光土産品店における利用者が希求する価値に関する定量分析

古安理英子(就実大学)・赤沢克洋(島根大学)
 
論文要旨▼
本研究では、観光土産品店に対して利用者が希求する価値を明らかにすることを目的とした。そのために、潜在クラス分析を適用し、商品属性や経験に対する希求傾向によって利用者を類型化した。その結果、希薄型、商品総合型、行動経験型、商品行動標準型、地域経験型、多様型の6つの類型が得られた。また、マーケティング戦略上の知見として、①商品総合系統の商品属性と行動経験系統の経験は希求のベースとなり、これらを組み合わせた顧客価値の提供が効率的であること、②地域経験系統の経験、商品単独系統の商品属性および感情経験系統の経験を希求する利用者がターゲットとして有効であること、③観光土産品購入行動に付随しない休息に関わる価値や経験等の付加が重要であることが示唆される。

 

 

茨城県内市町村の住民参加・協働による地域の防災活動について

                                    髙野 俊英(法政大学大学院)

 
論文要旨▼
本研究は、茨城県内市町村の住民参加・協働による地域の防災活動において、東日本大震災後の地震・津波対策や地球温暖化による豪雨等の災害対策とコロナ禍前から現在のコロナ禍での防災活動について同県の市町村の防災担当部署へのアンケート調査により、その課題等を探り地域の安全や活性化に貢献する防災活動について考察した。

●観光リカレント教育プログラム修了者の事後活動の評価

―いしかわ観光創造塾・北陸観光コア人材育成スクール修了者の事例分析―

 

 種村 聡子(文教大学・北陸先端科学技術大学院大学後期博士課程)・敷田 麻実(北陸先端科学技術大学院大学)

 
論文要旨▼
地域観光の振興のために、大学と連携したリカレント教育が重視される中、観光経営人材育成が2016年以降各地で行われてきた。受講後のフォローアップや学習効果の評価が必要であることが指摘されているが、実際には系統的な調査がされておらず、学習効果も明らかになっていない。そこで、石川県で行われている観光経営人材研修プログラムを事例に、研修後の行動変容や成長体験を分析した。そして修了後の行動と学習効果を考察することを目的とした。その結果、同期修了者との交流が修了者の行動変容を促進していることを明らかにした。また運営担当者や講師との交流は限定的であり、人的ネットワークの拡大に限界があることが示唆された。

●農業参入企業の成長過程の探索的研究:NOUEN社の知識創造に着目して

 

                                     金沢星稜大学 中尾 公一

 
論文要旨▼
農業経営体は創造された知識の客体と見られ、知識創造の主体者としての研究関心は栽培技術や情報活用に留まり、流通面も含めて知識創造を行った事例研究は十分になされていない。本研究では携帯電話等の販売促進を本業とし、代表者の故郷で農業に参入した株式会社NOUENを事例に関係者に聴取調査を行った。その結果、同社は高齢化した地元生産者の農地を耕作放棄地とせず栽培技術とともに継承しつつ、流通部門は本業の販売促進の経験や農作業の厳しさの実体験を基礎に関係者の助言を得て青果物や開発した加工品を販売し、生産者や販売先の共感を得て、全国で廃棄されそうな農産物の加工品開発・販売を手がけ、課題解決を図る地域商社として活動している様子が確認された。
 

●行政・地域データの横断的連結モデルによる多角的分析とEBPMへの活用

~石川県羽咋市での健康増進分野を事例に~

 

                                     

                        平子紘平1・板谷智也2・原田魁成3・佐無田光3

1(金沢大学 先端科学・社会共創推進機構)・2(金沢大学 医薬保健研究域)・3(金沢大学 融合研究域)

 
論文要旨▼
様々な社会課題が複雑に山積する今日において、限られた行政資源の中で効果的に課題解決を行うためには、部局横断的な連携体制及び客観的で科学的な根拠に基づいたエビデンス・ベースド・ポリシー・メイキング(EBPM)の実践が重要である。一方で専門分業に慣れ親しんだ自治体では部局を横断することのハードルが高く、その結果として未だ多くの自治体においてEBPMが適切に運用されていない。筆者らは石川県羽咋市と連携し、各部局が保有するデータの横断的連結モデルを開発した。また健康分野のデータ解析例を通じて、行政データ連結の有効性について議論する。本研究の成果は横断的データ連結を構想する自治体のモデルケースとなるであろう。
 

●地域活性化成功事例の再現性向上における課題構造解明フレームの有効性検証

-馬路村ゆず加工品の成功事例から-                

                        矢野健三*  那須清吾** 

シ―アンドアイ株式会社、高知工科大学大学院、**高知工科大学)

 
論文要旨▼
近年地域活性化策において、政府の地域活性化重要政策として、地域における食品関連クラスター組織の編成と「地域ブランド商品」の開発が提唱され、全国各地で数多くの成功事例に関する研究報告がされている。なかでも高知県「馬路村ゆず加工品」の事例は際立つ成功事例として周知されており、参考に用いる自治体が多いとされるが、他の地域で地域活性化に至る成果に繋がった事例は極めて少ない。そこで、矢野・那須(2022)で提示された組織間関係による戦略の連続性モデルを用いて、成功メカニズムと再現性向上における課題構造の解明を行い、将来戦略の導出を試みた。
 

課題構造解明フレームを用いた今治タオル産業における将来戦略の導出

               

                        矢野健三*  那須清吾** 

シ―アンドアイ株式会社、高知工科大学大学院、**高知工科大学)

 
論文要旨▼
近年の地域活性化策の中小企業庁による「JAPANブランド育成支援事業」は、ブランディングによる商品開発や販路開拓等において、多くの団体や中小企業等で取り組まれている。なかでも、輸入商品浸透率が80%を超える国内タオル産業において、「今治タオル」ブランドによる地域活性化は稀有な成功事例として周知されており、参考に用いる自治体が多いとされる。本研究では、矢野・那(2022)で提示された組織間関係による戦略の連続性モデルを用いて、今治タオル産業における著者による将来戦略の導出と、多くの先行研究・文献で提唱される将来戦略の論理的妥当性の検証を行う。その後、インタビュー調査にて、それらの戦略に対する評価及び検証を行った

 

実務研究論文

 

行政インターンシップの改善プロセス 
-愛知県瀬戸市役所の部署横断プログラムの開発事例-

今永 典秀(名古屋産業大学)
 
論文要旨▼

愛知県の瀬戸市役所における行政のインターンシップの改善プロセスを明らかにする。従前は、各部署が独自でプログラムを検討し、受入を行うため負担も大きかった。また、受入可能な学生数も少なく、学生が参加可能なのは1部署に限定された。行政の仕事の全体像の把握は困難で、限られた人数の受入が課題であった。そこで、人事課担当者が、アクションリサーチの実践者の助言をもとにプログラムを改善した。人事課が総合的にコーディネーターとしての役割を果たし、瀬戸市役所で働くことのイメージの向上や瀬戸市の魅力を理解することをテーマとし、複数部署の説明や見学、就業体験が可能で、複数名の受入が可能な5日間のプログラムを開発した。

 
 

城下町に残る伝統的町家の町並みを守る取組みの実績と継続要因について

―福井県大野市七間通りの事例より―

                        今村智子*、藤生慎**、森崎裕磨**、高山純一**

                          (*金沢大学大学院博士後期課程、**金沢大学)

 
論文要旨▼

景観まちづくりの継続要因を検証するため、地方の景観形成地区で現況調査と活動継続上の課題調査を行った。調査の結果、労働人口の増加、商店街会員数の維持等に効果が見られた一方、課題として「担い手の高齢化」、「地域社会の高齢化による弱体化」があげられ、先行研究とは異なる継続要因も示される結果となった。また、地域と行政の間には課題の認識に錯誤があることが分かった。地域の課題を解決せず現行のまま施策を進めると、地方の商店街は衰退もしくは解散することが見込まれ、今後は景観の維持と合わせ、高齢化が進む地方を意識した、生活、経済、地域社会の健全な発展に寄与する政策が必要であることが明らかとなった。

 

地域づくり活動の継続性に関する比較分析

                         今村智子*、藤生慎**、森崎裕磨**、高山純一**

                           (*金沢大学大学院博士後期課程、**金沢大学)

 
論文要旨▼

地域づくりが継続する団体と継続していない団体との違い及びその原因を明らかにするため、まず、活動を継続している地域づくり団体から活動の流れを調査し、活動の流れを段階に分け4段階の発展モデルを設定した。継続要因を含む活動のポイントについて、継続している団体と継続していない団体それぞれにアンケートを実施し、評価の違いについて統計的手法を用い分析した。結果、組織作りを進める発展段階において、団体の行政への依存、もしくは、行政の団体への深い関与が活動継続の妨げになる場合があることが明らかになった。また、活動の継続には団体の自己資金確保が必要になることも明らかになった。

 

五感体験アンケートと地域マンダラで把握する地域の環世界

                          上田 洋平(滋賀県立大学地域共生センター)

論文要旨▼

本稿では、地域の持続可能性を確保する上で、記憶を継承することの意義を提示し、その継承の切り口として、地域固有の環世界の存在を措定し、そのような環世界を把握するための手法を提示した。地域固有の環世界とは、個々の地域共同体にあって認識のレベルまでふみこんだ意味での環境と人間とのかかわりの構造が重なり合い、住民によって共有されるものと定義した。このような地域の環世界を把握する手法として開発した「五感体験アンケート」及び「地域マンダラ」によって地域の環世界がどのように把握できるかを考察した。その結果、地域の環世界を構成する空間的構造と時間的変化のダイナミックな関係性を抽出し、表現できることを確認した。

 

奥能登における経営・起業家支援~TANOMOSHIラボの成果とその一考察~

小笠原 由佳・豊田 麻里子(一般財団法人社会変革推進財団)
論文要旨▼

地域が抱える課題に対し、経営支援・起業支援策を通じた地域活性化を目指す試みは多い。本論は、人口減少・過疎化が進む奥能登地域で、株式会社御祓川が企画・運営した、地域活性化を上位目標と置いた、経営・起業家支援事例を取り上げ、内容、プロセス、特徴及び成果を詳細に紹介した上で、設定したアウトカムを達成できた主要因が、暗黙知の交換や外部ネットワークと連結されたコミュニティ形成である点を示した。その上で、有効なコミュニティ形成のためには、多様なメンバーが結集し参加者同士が交流する、異質な知識や経験を統合されるような有効なプラットフォーム機能が重要であると考察した。

 

●プロセスモデルを用いた地域活性への取り組み 7事例

                             岡山 大成 、大西 昌子、 西村 訓弘
                               (三重大学院地域イノベーション研究科)

論文要旨▼

昨今の地域活性化研究においても、客観担保を重視するために地域や組織においてアンケート調査、インタビューなどの活動を行い、その結果を分析するという構成のものは多い。一方で課題解決の為にどのような取り組み方をするのかという主体の行動管理に関しては、研究というよりも実務再度で実績として積み上げられる。本研究では、そのような実務において得た知見や経験を地域活性に生かせないかを試行錯誤の上で一つのモデルとして築き上げた。そして、その末にたどり着いた形としてプロセスモデルの活用を提唱し、本研究ではその確認と検証を行い報告するものである。

 

持続可能な地域づくりのためのサーキュラーエコノミー実践研究

― 福島市DMOの取り組みを事例として ―

熊坂 仁美(法政大学大学院)*,大川 朝子(法政大学大学院)*,吉田 秀政(山形大学/福島学院大学)
論文要旨▼

持続可能な社会の実現が求められる中、環境に配慮し経済価値を生み出す循環型経済(サーキュラーエコノミー)への転換への必要性が急速に高まっている。また、過疎化に伴う経済規模の縮小が懸念されている地方都市においては、その対策として地域リソース利活用の最大化を目的として、多様なステークホルダーが参与する地域循環経済圏の実現が求められている。本研究では、福島市DMOが主体となり、「規格外桃」利活用の最大化を企図した「サーキュラーエコノミー」エコシステムの効果検証を目的とする。その結果、環境および経済の面で一定の効果が認められ、地方都市における地域内経済循環システムとしての同手法の可能性が確認できた。

 

収入構造の経年変化分析から抽出した高レジリエンス地域DMOの共通特性

吉田 秀政,野田 博行,高澤 由美,小野 浩幸(山形大学)
 
論文要旨▼
本研究では、地域DMO を対象にCOVID-19 前後年の収入構造1)の経年変化分析から、環境変化に対して強靭であるかどうかの資質(本研究では「レジリエンス」という。)を明らかにする。まずは前提条件に当てはまると推定される14 の地域DMOを抽出し、組織や行動の共通特性を分析した。その結果、実質経営者(本研究では「GM(General Manager)2)」という。)の79%が民間出身者で、全体平均44%よりも高い値を示した。また、それらの組織から得たアンケート調査結果を先行研究から導出した「高レジリエンス組織の行動特性(7 要素)」に照らしたところ、「評価・分析能力」、「即応力」、「回復力」、「維持力」、「協働力」の5 要素で8 割以上の当てはまりが明らかとなり、先行研究との整合性を確認した。

 

 

 

 

 

学術研究ノート

 

観光客の季節乖離性に関する一考察 -中部圏9県に基づく比較分析-

青木卓志(金沢星稜大学) 
論文要旨▼

本稿では、中部圏9県を対象に、季節バランスの季節乖離度についての時系列分析を、日本人及び外国人宿泊者別に、主に2011年~2021年の状況を対象に行ったものである。結果としては、(一部時期を除き)各県とも日本人の季節乖離度は外国人の季節乖離度より小さいものの、改善傾向は外国人の場合のほうが顕著であったこと、宿泊者数の大小が必ずしも当該数値に影響を与えるものでもないこと、宿泊者数増加と季節乖離度の改善は、一定の条件の下ではあるが、双方ともある程度は同時に達成することが可能なこと等が判明し、季節各乖離度から判明した県の相違点・特徴を踏まえた各県ごとの効率的な政策の重要性が認識された。

 

 

●レジリエンスとしての地域外との持続的関係性:信頼とコミットメントの形成

                                     岩永洋平(九州産業大学)

 
論文要旨▼
地方企業が域外消費者との相互作用を通じて、不確定性を超える信頼をいかに形成して事業成長を実現するか。また危機に際して顧客のコミットメントが、どう復興に貢献するかを被災企業のケースで検討した。消費者は初回購買段階で、地域についての知識を適用し、また提供者の人格認識によって売り手を信頼して商品を購入した。事業者は自己表出を動的に操作する表現開発能力により信頼を形成していた。持続的購買段階で顧客は、売り手の振舞いを観察し、過去の行ないと未来への意思などの知識を得て信頼を深め関係を持続させた。事業者は顧客と価値を共創する動的な商品開発能力を得ていた。危機に際して顧客はコミットメントによる支援の意味をもって購買関係を持続し、売り手側も事業実践を返報の意味に捉え返していた。
 
 

 

シティプロモーションにおける地域情報の提供と地域コミットメントに関する実証的研究

-葛飾北斎のデジタルイベントを事例として-

宇治田 里与(慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究所)
 
論文要旨▼
自治体では地域の魅力を発信するシティプロモーション(以下、CP)に注力している。CPの1つとして地域イベントの実施が挙げられるが、一時的な集客数や経済効果を狙って実施される傾向があり、必ずしも地域コミットメントの形成を意識したものではない。本研究では、持続可能な地域活性化に必要な地域コミットメントを高めることを意識したCPを企画・実施し、アンケート調査を行った。重回帰分析を用いて地域コミットメントを高める条件を分析した結果、興味を持つ情報に併せて地域情報を与えると、その地域への関心、愛着が増すとともに、訪問、イベント参加、社会貢献活動など、その地域に対する行動意欲が高まることが明らかになった。
 

 

関係人口を創出するシェアハウスとその機能

内田考生(信州大学)・林靖人(信州大学)
 
論文要旨▼
関係人口を創出する一つの施策としてシェアハウスに注目した。シェアハウスには一般的に共有スペースがあり、元々関わり合いが生まれる構造になっている。本研究が注目したシェアハウスではよそ者である居住者同士が関わり合いを深めるに留まらず、該当シェアハウスが位置する地域への関わり合いもが認められる。また該当シェアハウスは持続的に居住者を流動させ、結果居住経験者を創出している。本研究は、該当シェアハウスを関係人口を創出する機能を持った施策として体系的に捉え、該当地域はもとより他地域の空き家問題解決やコミュニティ維持など多様な可能性を検証する萌芽的研究として実施した。
 

 

事業者特性からみる不動産特定共同事業者の類型化に関する一考察

佐藤加奈絵*・森谷健太**・中沢峻***・佐々木秀之***

(*杏林大学地域総合研究所、**富谷市役所、***宮城大学事業構想学群)

 
論文要旨▼
本研究では、地域の課題解決に資する不動産特定共同事業の活用に対する知見を得ることを見据えた予備的分析として、不動産特定共同事業者の全国的な傾向を明らかにすることを目的とする。事業者の属性(資本金・本社所在地・設立年数・本社が立地する都市規模等)を調査し、クロス集計及びクラスター分析による類型化からその特徴を考察した。その結果、資本金と所在地の観点では、許可事業者は1億~5億円未満、登録事業者は3,000万円未満の割合が高く、三大都市圏に集中し、また、大都市大手型・大都市老舗型・大都市ベンチャー型・地方都市型の4つに類型化され、大都市を中心とした事業者の広がりであることが明らかになった。
 
●ワーケーションを活用した自治体の企業誘致政策和歌山県における事例研究―
                           薗 諸栄(追手門学院大学大学院経営・経済研究科)
論文要旨▼

近年、自治体の新たな企業誘致政策の1つとして、企業にとっては新たなワークスタイルとして、サテライトオフィスでのワーケーションへの取り組みが始まっている。本論文では、企業誘致の歴史的経緯を概観した上で、ワーケーションによる企業誘致の先駆的自治体である和歌山県と同県白浜町を事例として、実態調査に基づく自治体の取り組みの経緯と現状分析を行い、自治体の果たすべき役割を明らかにするとともに、ワーケーションの社会的意義を考察した。

アニメによる地方定住人口形成の可能性―6市町村における聖地移住の事例研究を通して―

             千葉 郁太郎(公認会計士・京都文教大学地域協働研究教育センター連携研究員)

 
論文要旨▼
聖地移住とはアニメ・漫画をきっかけとしてその作品の舞台(いわゆる「アニメ聖地」)に移住することである。本稿では6市町村における聖地移住事例をもとに、聖地移住に至るプロセスと移住者の意識・行動変容を研究した。その結果、①聖地移住とは関係人口から定住人口への移行プロセスと位置付けられること、②移住者の意識が「迎えられる側から迎える側」に変化する中で、活動も地域貢献的なものに変化していることの二点が明らかになった。また、一過性的要素がある聖地巡礼から持続的地域発展に資する聖地移住にファンを誘導するためには、自治体側における観光振興と移住・定住促進両部門の協業が必要であることを指摘した。

 

 

事例報告

 

「まちづくり条例」のもとでの地域資源を活かした「まちづくり」

福井県小浜市、山形県酒田市、岐阜県笠松町の事例をもとに

小野英一(東北公益文科大学)

論文要旨▼

近年、「まちづくり」に光が当てられ、全国で様々な「まちづくり」が展開されている。本稿では、それぞれの自然・文化・歴史等の地域資源を活かしながら、「まちづくり条例」を制定し、そのもとで個性・独自性のある「まちづくり」を進めている福井県小浜市、山形県酒田市、岐阜県笠松町の事例について取り上げ、事例報告を行う。小浜市については「食のまちづくり」、酒田市については「公益のまちづくり」、笠松町については「道徳のまちづくり」にそれぞれ取り組んでいる。それらの事例について調査・整理し、事例を踏まえた考察を行う。最後に全体を総括し、今後の研究課題について述べる。

 

門真フィルムコミッションによる映像を通じたまちづくりとその効用

                                       石原 肇(近畿大学)

 
論文要旨▼
日本の一般的なフィルムコミッションはロケーション撮影を誘致する役割を担っている。大阪府の門真フィルムコミッション(以下、KFC)は、映画祭の開催、映画の制作、社会実験などの地域イベントへの参画等の取組みを行っている。本稿では、KFCの上記の取組みを把握し、映像を通じたまちづくりを行っていることを明らかにした。KFCは市民参加型映画を制作した。その映画への出演者およびその映画を観た鑑賞者へアンケート調査を行った。その結果、出演者や鑑賞者は、映画や地元に対して誇りや愛着の意識を持っていた。KFCの取組みは従来のフィルムコミッションでは見られない新しいまちづくりの形であり、市民のシビックプライドの形成に寄与していることが示唆された。
 
 

産学連携による首都圏中核人材登用がもたらす地方中小企業の課題解決の事例

海野 麻恵(信州大学)
論文要旨▼
コロナ禍によってテレワークが推進され、地方移住に興味を持つ人が増えているとはいえ、東京一極集中問題の現状は変わらず、地方では、経営戦略、新事業展開等の企画立案、プロジェクトの遂行能力を担う中核人材の不足が、成長・拡大を目指す企業での課題になっている。産学連携によって首都圏の中核人材と地方中小企業をマッチングさせ、当該企業の課題解決を通じて長野県の次代を担う100年企業創出を目指す新しい地域活性化事業である、信州大学の100年企業創出プログラムを通じて、恒常的な人材不足に悩む地方中小企業が今まで取り組むことが出来なかった新規事業展開の手法について研究を行い、企業の課題解決を行った事例を報告する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サイクルツーリズムを活用した地域での消費購買行動促進システムの構築と実践

海野 麻恵(信州大学)
論文要旨▼
日本では、令和3年5月に第2次自転車活用推進計画を閣議決定し、4つの目標を掲げた。その中には「サイクルツーリズムの推進による観光立国の実現」がある。既に全国各地でサイクルツーリズムが推進され、ハード面の整備は着実に進んでいるが、ソフト面、特に地域でのサイクリストの消費購買行動を促進するための施策は不十分である。この領域について様々な角度から調査を行なったが、論考レベルにおいても先行研究が殆ど見当たらない。そのため本稿では、サイクルツーリズムにおいて地域、サイクリストそれぞれが抱える課題を整理し、その課題解決に有効であった、地域での消費購買行動促進システムの構築と実践について報告する。
 
 
適正規模で定住する肉用牛繁殖農家と酪農家に関する考察

                           斉藤俊幸・那須清吾

                            (高知工科大学大学院起業マネジメントコース)

論文要旨▼

肉用牛繁殖農業及び酪農業で新規就農した移住者と地区で代々繁殖農業及び酪農業を営農してきた経営者を対象にヒアリングを実施した。新規就農者は、家族と過ごす時間が生業より大切であり、地域で代々営農してきた経営者は、生業の成長・拡大が大切であると話している。新規就農者には競争的な志向はなく、敢えて補助金を使い、規模拡大を行い、収益を向上する姿勢は見られない。動物福祉、フードマイレージ、放牧等による社会的価値の創出に意義を見出している。バブル崩壊後に誕生した就職氷河期世代のみならずその後のZ世代を包括する考え方であり、彼らの非競争性の特性を踏まえ非競争世代と称する。

 

地方自治体による親子ワーケーションの推進に関する研究-五島市・糸魚川市・厚沢部町の比較分析-

                      薗 諸栄(追手門学院大学大学院経営・経済研究科)

論文要旨▼
本研究は親子ワーケーションに早期的に事業に着手した3自治体(五島市、糸魚川市、北海道厚沢部町)へのインタビュー調査を行い教育環境の整備、さらにワーケーション意向との関係について明らかにすることを目的としている。研究成果として第1に首都圏在住者の子供の教育に関心ある富裕層の個人世帯に向けて長期的な地域間との人的交流が促進され、自治体のパイプラインが機能している。第2に情報発信として専用のポータルサイトを整備し、送り手の個人と受け手である自治体のマッチング機能を有している。第3に自治体政策の視点から、コワーキングスペースといったハード整備事業は促進されず、既存の宿泊施設や遊休施設を有効活用していた。
 
 
須金和紙絵は地域のシンボルとなり得るか

                         寺田篤史(周南公立大学) 中嶋克成(周南公立大学)

論文要旨▼

中国地方の山間部には江戸時代以来の「紙漉き」が伝えられている地域が多数存在する。山口県周南市の北東部に位置する須金地区では産業としての紙漉きは戦後に一度途絶えたが、昭和50年代に伝統文化として復興を遂げた。その際に、和紙を利用して独特の技法によって行われる「和紙絵」と呼ばれる工芸が生まれた。地方の中山間地域の例にもれず、当地でも少子高齢化が進み、紙漉きおよび和紙絵の継承は危機にさらされている。本研究では、須金和紙絵が「新しい伝統工芸」として地域おこしのシンボルとなり得るかという観点から、紙漉き・和紙絵に対する地元民の意識を調査した。

 

福岡県八女市星野村を事例とした空き家対策の実践研究

             戸澤 理紗(八女市地域おこし協力隊)、田中 幹人(法政大学大学院理工学研究科)

論文要旨▼

近年、放置空き家の増加が全国で問題視されている。地域住民による空き家対策の事例が蓄積されつつあるが、その対策の詳細が明らかにされた研究はほとんどない。本研究では、福岡県八女市星野村における空き家問題を事例として、筆者自らが3つの空き家対策を実践し、その過程や実践知を整理した。実践内容は、空き家の片付け代行、農地付き空き家の取引支援、住民参加型ワークショップの3つであり、それぞれ空き家問題解決に向けて一定の成果を得た。本研究で取り扱った実践は、地域の新規参入者でもできる一方で、実践を進めるためには地域団体からの情報や協力者などの支援も重要であることがわかった。

 

飛騨市における広葉樹の多様性を活かした価値創造

-ビジネスエコシステムの視点に基づく事例分析-

                                        野坂美穂(多摩大学)

論文要旨▼

近年、輸入材の価格高騰や国産材の需要増を背景として、国産広葉樹への注目が高まりつつある。その一方で、国産広葉樹のほとんどが木材チップとして安価に流通しており、広葉樹の付加価値を高められていないことが課題として挙げられる。本稿では、岐阜県飛騨市の広葉樹を活用した取り組みの事例報告を行う。飛騨市の取り組みでは、様々な主体による協調を通じて価値を創造しているが、この協調による価値創造を一つの「ビジネスエコシステム」として捉え、主体間のどのような協調関係を通じて広葉樹の価値が生み出されており、どのような点に課題が残されているのかを明らかにする。また、顧客が使用する商品価値の意味という視点から、広葉樹の付加価値についての検討を行う。

 

IR誘致政策と市民-横浜市と和歌山県の比較から-

                    福井 弘教(横浜国立大学大学院 環境情報学府)

論文要旨▼

2018年の「IR整備法」(特定複合観光施設区域整備法)成立以降、国内初の対面式カジノ開業に向けた動きが活発化した。多くの自治体が誘致活動を推進したが、最終的な候補としては、大阪府・市、長崎県のみとなった。有力候補として目されていた横浜市では首長交代によって、和歌山県においては議会議決によって、IR誘致政策は消滅した。誘致に向けて、巨額の予算を計上したものの、なぜIR誘致は実現しなかったのか。その背景を探ることを目的として論考を展開した。考察の結果、IRによる経済的効果を基軸として推進してきたこと、形式的には合意形成が図られたが市民を中心とした十分な合意形成が図られておらず、行政主導、行政先行の合意形成が通底していた。

 

看護職養成大学における地域枠入試の現状分析と必要な戦略

                     福山祐介 (藤田医科大学医療科学部 / 法人本部広報部 , 三重大学大学院地域イノベーション学研究科博士後期課程)

論文要旨▼

国内で実施されている看護職養成大学の地域枠入試制度の概要と運用上の問題を明らかにし、地域保健医療の更なる向上・地域の活性化へ寄与することが本研究の目的である。国内の看護職養成大学へアンケート調査を行い、現状分析と必要な戦略について検討を行った。看護職養成大学は医学部以上に多くの定員を抱えているにも関わらず、地域枠入試の実施数自体が少ないことがわかった。医療従事者の偏在が叫ばれている中、そのバランスを取るためにも地域枠の定員増枠などが求められる。また、奨学金と連動した地域枠入試の充実、ターゲットアプローチ拡充を含めたマーケティング戦略(差別化戦略)等が重要であると考察された。

 
 

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