●津なぎさまち開港15周年記念シンポジウムにおける提案のまとめ
岡山 大成、大西 昌子
(三重大学大学院地域イノベーション学研究科)
論文要旨▼
津なぎさまち開港15周年記念シンポジウムが津なぎさまちのベイシスカ2階にて開催され、「持続可能な津なぎさまち創生」というテーマで討論された。その際に、著者は「若者が集い世界にはばたいていく人材育成の場としてはどうか」と提案した。シンポジウムにおいて公表されなかったアンケート調査の結果やその後の考察について報告する。また、真の課題を抽出する工程イメージとしてドリップモデルを提案する。
●北海道のワイン産業史序説
論文要旨▼
本稿では、北海道のワイン産業史を考察する。文明開化の時代の幕開けとともに、西欧文明開化方針を取った明治政府が殖産産業政策によって、西洋系品種のブドウの栽培を奨励し、冷涼な気候が適地と考えられた北海道で栽培が開始された。本研究の分析対象である後志地方は、道内の「食の宝庫」であり、良質な土壌を求めて多くの企業家が参入している。本研究は、後志地方のワインに関連した歴史的経緯を踏まえた分析結果をまとめたものである。
●長崎県五島列島赤島における雨水活用研究を契機とした離島振興
近藤晶・笠井利浩・三寺潤(福井工業大学)
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赤島は長崎県五島市の南に位置し雨水を使って生活をしている島である。この赤島で、2017年の夏から雨水集水・貯留設備の構築やそれらを活用した環境教育プログラムも実行した。また、2018年に移住してきた若手移住者へ著者らが構築した雨水集水・貯留設備やロゴの移譲等活動支援を行った。これらの活動の結果、若手移住者が行ったクラウドファンディング達成度200%を超えて成功したほか、多くのメディア露出にも繋がり離島振興につながる結果を得ることができた。
●大学生によるYouTubeを活用した岡山市の地域活性化
論文要旨▼
2021年、岡山市に拠点を置く大学の学生が、ゼミナールでのPBLを通して動画共有サイトYouTubeを活用し、岡山市の地域活性化を目的とした活動を行った。大学生たちはスマートフォンと無料動画編集アプリを使い、30本のPR動画を完成させ情報発信した。本研究は、この活動がいかに地域活性化に繋がったかを検証し、実施する上で重要となった要素について考察するものである。検証の結果、学生たちが制作したこれらの動画は、岡山市の地域活性化に貢献していることが視聴回数や関係者へのインタビューなどから分かった。また、この活動の成功要因として、動画制作において学生の柔軟な発想やアイデアを尊重したことなどが重要な要素となっていると考察した。
●八王子市における墓地行政の現状と展望―市営墓地の利用・管理の視点から―
福井 弘教(横浜国立大学大学院 環境情報学府)
論文要旨▼
埋葬形態の多様化や少子化で墓地を維持管理、継承することが困難となる事象などにより、墓地が公共課題として認識されつつある。本研究では中核市である東京都八王子市の市営墓地に焦点をあて、議会議事録に依拠してテキストマイニングを用いて墓地行政の現状と展望を展開した。考察の結果、墓地の管理運営を中心に管理者視点の発言が多くみられた。利用者視点からは合葬式墓地への要望が高く、それに関連した管理・増設・利用の議論が多くなされていた。同市の公園・社会福祉施設で導入済みの指定管理者制度については未導入であり、今後の動向により制度利用の検討が必要であろう。
●地域おこし協力隊による地方自治体の国際化支援の試み
ベイセンバイ ゼレ1,タペノワ グルデン1,伊藤 和哉2,鈴木 大介3,黒澤 栄則4,5,齋藤 篤5,扇原 淳6,浅田 匡6
1 皆野町地域おこし協力隊,2 早稲田大学大学院人間科学研究科,3 埼玉県立吉川美南高等学校,4 皆野町役場,5早稲田大学人間総合研究センター,6 早稲田大学人間科学学術院
論文要旨▼
埼玉県の中山間地域である秩父郡皆野町では、地域おこし協力隊が活動し、町内高校の魅力化、町の活性化事業を行っている。また、町と包括連携協定を有する早稲田大学等国内外の機関との連携により交流事業を行う等、多角的な国際化事業を行っている。2020年度からはカザフスタン共和国出身の隊員2名による、町内外でのカザフスタン文化発信、町内観光資源の外国語発信等、国際化の取り組みが進展している。今後は、コロナ禍の状況を踏まえ、町内の伝統的祝祭のオンライン化やオフラインとの並行開催、アーカイブ化による外国への発信の拡充、地域資源の知名度向上、他の地域おこし協力隊や地域住民との交流強化による関係人口の拡充が課題である。
●総務省による地方公務員の兼業等促進策は当事者の認識と合致するか
――公務員の兼業は地域貢献でなければならないのか?(問題提起)――
山本 泰弘(地方公務員、公務員Shiftプロジェクト)
論文要旨▼
国(総務省)は、地方公務員法の範囲内で地方公務員の兼業・副業等を促進するため、地方公共団体に対し兼業許可に関する通知を発した。この動きは、当事者である地方公務員の兼業・副業等に関する認識に合致したものであるか。本稿では、地方公務員を対象に行われた意識調査の結果から、当事者の認識と国の取り組みとの一致度合いを検証した。結果として、それらは合致していた。国が一定の役割を果たしたことで、当事者が満足に兼業・副業等に取り組むための環境作りは各自治体に任せられた。その上で、兼業・副業等促進の先進事例ともされる“社会貢献特化型の兼業許可制度”の問題点を議論する。すなわち、当該制度は、社会貢献とは必ずしも言い切れない事業等を不必要に排除し萎縮させる懸念がある。
●「恐竜・化石大陸ほっかいどう」プロモーションの実践
吉田 大輝(北海道) 小林 有(北海道)
論文要旨▼
北海道の化石は重要な学術的価値を有している。北海道庁では北海道の化石を地域振興に活かそうと、地域イメージ戦略を進めている。これまでに、博物館等施設へ訪問していない層を対象としたPRコンテンツの制作やキャンペーン、イベントの開催などに取り組んできた。イベント来場者に対し、アンケートを実施したところ、多くの人が北海道の化石へ興味を持っているが、実際に訪問するまでには至っていないことが明らかになった。また、化石の魅力に触れる機会を創出することで、新たに博物館等施設へ訪問する意欲が高まることがわかった。これらから、博物館等施設へ訪問していない層を対象にしたプロモーションは効果的であることが示唆された。
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