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|研究論文集「地域活性研究」Vol.17(2022年11月発行)目次


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~ 目次 ~

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学術研究論文

 

美術館の経営戦略に関する定量分析

赤沢克洋(島根大学)・古安理英子(就実大学)

論文要旨▼
本研究では、美術館の経営戦略の採用状況を定量的に把握するために、全国の美術館を回答主体として実施  した質問紙調査のデータを用いて、運営方針・運営目標の設定と提供価値の設計における各戦略の採用状況に関する平均的傾向と組み合わせ類型を推定した。その結果、運営方針・運営目標として標的市場戦略と顧客対応戦略、提供価値として知的関心価値が高頻度・高強度に重視される傾向にあった。さらに、運営方針・運営目標については、運営消極型、地域観光重視型、標準収集調査型、顧客市場対応型、戦略多様型の5つの類型、提供価値については、価値提供消極型、標準無形価値型、施設特化型、地域情報中核型、美術興味娯楽型、提供価値多様型、価値提供強力型の7つの類型が得られた。
 
 

●伝統産業における価値づけと価格の受容 ―オリジナル色無地を事例として―

荒木 由希(金沢大学大学院人間社会環境研究科博士課程)
 
論文要旨▼
本稿は、高付加価値化戦略が行き詰ったきもの産業に着目し、価値づけのあり方によって産業の再興が可能ではないかを検討する。戦後から高度経済成長期、きもの産業は、格式高さ、ハレの衣装といった要素によってきものの価値を高め、市場での高価格を受容させることに成功したが、いまや多様化するニーズと乖離しつつある。ニーズに対応できずに価値づけのあり方が硬直化する理由は、伝統を解釈する根底にある社会の評価基準や制度が関係している。そこで、本稿は、社会が価値を評価する仕組みである「装置(dispositifs)」について着目し、価値づけの仕組みと市場における価格の受容を分析する。そしてU社のオリジナルな色無地を事例として、きもの以外の茶道という装置によって新しい価値づけの評価軸が構築され、ピンポイントでのマッチングにより価格の受容につながることを分析する。そして本稿は、伝統の価値づけのあり方によって、きもの産業の生き残りの道がありうることを示す。
 
 

●地域活性における図書館の役割

近藤広志 ( 慶應義塾大学法学部乙類)
 
論文要旨▼
日本の生涯学習は遅れているのではないだろうか? これが本研究の出発点である。
生涯学習のための施設である図書館を見て行くことで、どれだけ図書館が活用されている
のか、若しくは活用されていないのかを調べてみたいと思ったのである。実際に調べてみ
ると多くの点で、予算が少ない等の問題点が浮き彫りになった。地域活性のためにも生涯
学習の先進国である北欧諸国と比較研究を行うことで、より日本の図書館のどこが遅れて
いるかを明らかにする。また研究、調査で明らかになった点を多くの人に知ってもらい、
生涯学習や図書館がいかに地域活性に必要な施設かを言及していきたい。

 

 

●まちづくりにおける協働のプラットフォーム形成に関する一考察
復興まちづくり推進協議会を事例に

  高橋結(宮城大学博士後期課程),東海林信篤(世田谷区役所),風見正三(宮城大学)

 
論文要旨▼
東日本大震災からの復興においては、コミュニティに対する人的支援の必要性から、総務省(2012)が復興支援員の制度を設置し、直接的なコミュニティ支援からまちづくり、地域活性化に資する取り組みなどが展開されている。それらを支援する目的で多様な主体による協働のプラットフォームが形成されてきたが、中長期的な支援体制の形成には課題もある。本稿では、県、NPO、大学が協働し、コミュニティの人的支援を行った事例を対象に、協働ガバナンスモデルを援用しながら、プラットフォーム形成過程に不足していた因子を定性分析によって考察した。その結果として、主体間での共通理解の形成についての困難性が示唆された。

 

実務研究論文

 

●地域中小企業による有償ジョブ型インターンシッププログラムの構築プロセス
-愛知県瀬戸市の建設業による長期実践型インターンシップより-

 

今永 典秀(名古屋産業大学)
 
論文要旨▼
地域中小企業による長期実践型インターンシッププログラムの構築プロセスを明示する。研究方法としてアクションリサーチの手法により、「設計」「募集」「実施」「総括」の4つの観点で、企業外の第三者が企業との対話を通じてプログラムを構築したプロセスを実証した。インターンシッププログラムは、企業のビジョンや経営戦略に基づき、企業の事業領域と学生の教育・研究領域が重なる領域であり、企業が恩恵を受けられる長期間の有償で特定領域のジョブ型のプログラムが構築された。また、学生の教育効果を高め、企業のインターンシップが継続発展するための仕組みとして「日報」やSlackなどのSNSツールが有効に機能することが確認できた。
 
 

●香川大学型アクションリサーチに基づく主体性促進型事業形成プロセスの構造化

長尾敦史(香川大学)
 
論文要旨▼
本研究は過疎に悩む地域運営組織(コミュニティ協議会)が、香川大学が実施した地域づくりの三要素と地域性を加味したアクションリサーチの過程の中でいくつかの機能を持つことにより主体性が生まれ郷土愛の醸成や地域でのコミュニティビジネス創造や組織自らがコミュニティビジネスに取り組む事業形成プロセスについて事例分析を行う。これら活動における大学が果たした役割について考察する。
 
 

●オンライン協同調理・共食による地域の価値の再認識

平塚弥生(情報科学芸術大学院大学)
 
論文要旨▼
コロナ禍により在宅勤務やオンライン会議が普及し、懇親会や飲み会などのオンライン共食が一般的に行われるようになった。どこでも離れた地域の人と交流が出来ることで利便が上がる一方で、主催者、参加者間の場所性は曖昧になり、誰がどこに住んでいるなどといった、地域との繋がりを希薄にしている。本研究では、リアルな場で協同調理と共食により地域コミュニティにコミュニケーションを誘発するという仮説のもと、地域性の希薄なオンライン空間においても、協同調理と共食を通して発生する繋がりや参加者間のコミュニケーションから参加者自身が地域の価値を再認識する機会となることが示唆された。
 
 

●地域と大学が連携した地域づくり~香川大学Bonsai☆Girls Projectを事例として~

                          古川 尚幸(香川大学経済学部)

論文要旨▼

当研究室では、地域課題の解決と地域活性化人材の育成を目的として、香川県内の様々な地域やテーマにおいて、学生プロジェクトを展開してきた。これら地域活性化のための一連のプロジェクトを遂行するなかで、大学生が主体となった学生プロジェクトの運営に関する知見を蓄積してきた。本研究は、地域課題の解決に向けたひとつのアプローチとして、これまでに蓄積してきた学生プロジェクトによる知見が、地域が抱える様々な問題に対して、現実的、実践的に適応可能な手法であり、地域課題の解決に向けた一助となり得ることを示そうと試みたものである。ここでは、その事例として、高松市の伝統産業のひとつである「高松盆栽」を取り上げ、その認知度向上と普及に取り組む香川大学Bonsai☆Girls Projectの活動内容について概要を説明し、その適応可能性を検討する。

 

 

●レジリエンスな地域社会実現のための藤堂藩の防災文化の検証

三橋源一(三重大学大学院地域イノベーション学研究科)
論文要旨▼
災害が頻発する現代社会において、地域活性化の実現には、災害にしなやかな強さで立ち直る“レジリエンスな地域社会”が土台として必要であり、地域の災害対応先行事例である「防災文化」を活用することが有効である。本論文では藤堂藩の無足人層の安政伊賀地震時における速やかな災害対応を検証した。その結果、地域社会と公的機関を繋ぐ中間層の存在が、災害時対応に有効な効果を示したことを確認した。地域に受け継がれてきた「防災文化」を検証することで、現代の災害対応も地域住民に根ざしたものになる可能性があり、ひいてはレジリエンスな地域社会醸成に効果を表す可能性がある。
 
 

●大手食品小売業者の流通再編に伴う地域小規模食品加工業者における課題構造の解明

                             矢野健三 那須清吾
          (シ―アンドアイ株式会社、高知工科大学大学院、高知工科大学)

 
論文要旨▼
近年食品関連産業は構造的課題と流通再編に伴い、多くの地域小規模食品加工業者は経営依存度の高い販路が断たれ、経営難に直面しているとされる。打開策として矢野・閔・中村(2021)にて、地域アイコン商品を開発し、地域適正技術化クラスター組織の編成により規模の拡大を行い、食品小売業者惣菜部への商品提供が有効な施策であると示された[1]。しかし、著者の知見と経験知から創出された成功事例であり、施策の着想に至る論理的プロセスが非提示のため、食品関連事業に精通した人材が不足する多くの地域では、再現性に欠ける課題が残されている。そこで、実務的視点から課題解決の実行手段として組織間関係の連関モデルの提案を行い、応用可能性を試みる。
 
 

●地域小規模食品加工業における「地域適正技術化サプライチェーンモデル」の構築
-地域アイコン商品を用いた愛媛県南予地域産業活性化の試み-

矢野健三  閔庚炫  中村正伸
(シ―アンドアイ株式会社、高知工科大学大学院、佐賀大学, 香川大学)
論文要旨▼
矢野・閔・中村(2021)において、「地域適正技術化サプライチェーンモデル」による「地域アイコン商品」の開発と、McGrath(2013)の提唱する「一時的競争優位戦略」の連続モデルの概念を用いた販売戦略が、地域活性化という点で有効な施策であることが示唆された[1]。しかし、より精巧で再現可能性の高いロジックモデルと販促手法の確立が課題として残された[2]。そこで、新型コロナウイルス感染症の流行により、地域の事業者が販売不振に陥り経営難に直面している愛媛県の真鯛養殖業において、消費拡大を軸に、先行研究で提示されているイノベーション概念に沿い、再現可能性の検証を試みた[7][8]。結果、経済波及効果額の推計を示し、有効性が高い販促手法を提案するに至った。
 
 

●官学連携による地域振興 ―北海道でのジオパークに関する科学コミュニケーションを事例に―

吉田 大輝(北海道), 早岡 英介(羽衣国際大学、北海道大学)
 
論文要旨▼

北海道は地域振興施策の一つとしてジオパークを活かした地域づくりの推進を図っている。2020年度には、自然科学の知見を地域振興に活かすという観点から、北海道大学との連携によってジオパークの魅力発信に取り組んだ。この実践から、地域資源の自然科学的特性に注目して地域の魅力を表現・発信する官学連携では、自治体職員と教員・理系学生の双方が学びあう関係が構築されること、また、自治体はその連携全体をコーディネートする役割を積極的に果たす必要があることがわかった。科学コミュニケーションをアプローチとする地域振興施策では、より一層の制度的・組織的なコーディネートが必要であると考えられる。

 

 

●地域DMOのマネジメント機能強化に向けての一考察

               吉田 秀政, 野田 博行,高澤 由美,小野 浩幸(山形大学)

論文要旨▼
魅力ある観光地域づくりの推進主体として日本版DMOへの期待が高まっている。本研究は、そのなかで基礎自治体のパートナーと位置付けられている「地域DMO」に着目し、先行研究や観光庁の公表データをもとに「行政との関係」、「予算獲得の方向性」、「専従最上位者(GM:General Manager)の位置づけや専門性」の要素から、地域DMOの属性分析および発達過程の類型化を試みた。そのうえで、前出データをもとに地域DMOのGMプロフィールをAIテキストマイニング等で比較分析した結果、出身職種や地域性によってGM自身が意識するマネジメントの「適性や能力」に特徴的な差異があることを確認した。これらの分析結果を筆者仮説モデル「地域DMO発達過程4類型」に照らして、約半数が発達初期段階(ステージ1)である可能性を指摘した。
 

 

学術研究ノート

 

●コロナ下における街なかのサードプレイスとしての「個人カフェ」の変化

上田真弓・明石達生(東京都市大学) 
論文要旨▼

本研究は、街なかの個人カフェを対象に、コロナ禍により「人との対面交流」が抑制されたという未曽有の状況下で、「サードプレイス」(家と職場以外の第3の居場所・交流の場)機能がどのように影響を受けたかを解き明かすことを目的としている。筆者らは、コロナ前の通常の状況と、緊急事態宣言の発令期間中における変化を調査した結果、サードプレイス機能のタイプのうち、日常の交流は大幅に減少したが常連客が店を支える動きが見られたこと、マイプレイス型ではオンライン会議など職場の代替的利用も見られたこと、イベント交流はほぼ停止したが、常連客が個人作品を展示するなどの「非集合型イベント」が継続したことなどを明らかにした。

 

 

●サービス産業のロジスティックモデルに基づく存在確率の推計とその応用

九澤賢太郎(エーザイ株式会社)原田魁成(金沢大学融合研究域)寒河江雅彦(金沢大学人間社会研究域)

 
論文要旨▼
特定のサービス施設が生存できる可能性を示す指標として、国土交通省が定める「存在確率」がある。存在確率は市町村内に当該施設がある場合に「存在する」と定義され、その存在可能性を人口規模別に累積することで、施設の存続できる・撤退する基準点が示される。一方で既存の定義では、基準点の候補値が複数存在し、撤退・存続可能性が過大・過小に評価されている場合がある。そこで単調性を有するロジスティック関数を用いて平滑化し、基準点を一意にする補正を行った。モデル補正後の応用として、人口減少に伴うサービス産業の撤退可能性について石川県を例に分析し、撤退可能性が極めて大きい地域の特徴や施設・産業の特徴を明らかにした。
 

 

●住民参加・協働の防災活動と地域との連携等について

髙野 俊英(法政大学大学院)
 
論文要旨▼
本研究は、東京23特別区の住民参加・協働による防災活動の現状と災害の記憶を継承する東京都の防災教育施設等との連携等について、東京23特別区の防災担当部署へのアンケート調査等から、住民の自助・共助を担う防災コミュニティ等と公助を担う行政の課題を探り、地域の安全と地域活性化に資する防災活動の役割等について考察した。
 

 

●産地ビジネス・エコシステムにおける企業家の実践
―― 燕三条ブランドと産地ステークホルダーとの相互作用 ――

中條孝一(北陸先端科学技術大学院大学)、姜理惠(法政大学)、岸田伸幸(事業創造大学院大学)
 
論文要旨▼
本研究は金属加工の産地である新潟県三条市における企業家活動についての定性研究である。産地をビジネス・エコシステムとして捉え、産地の企業家が産地ステークホルダーと産地ブランドとどのような関係にあるのかを探究する。その結果、企業家と産地ステークホルダーの相互作用は共生する方向に働き、また産地ブランドである燕三条ブランドと企業家との相互作用が企業家活動を活性化することを見出した。さらに産地の地域イノベーションを近接性の観点から見ると、先行研究においてすでに示されている地理的、社会的、制度的側面だけでなく、認知的側面が産地における企業家活動の2次元的な広がりに作用していることを特徴として捉えた。
 

 

●中山間地域における公民館を拠点とした農産物流通ネットワークの成立条件

山口 誉志也(島根大学大学院自然科学研究科),保永 展利*(島根大学)
 
論文要旨▼
本研究は、中山間地域の公民館を拠点とした地場農産物流通ネットワークの成立条件を明らかにすることを目的とした。島根県益田市真砂地区での調査、定性分析から、次の点が明らかになった。第1 に、公民館長による有機栽培方法の普及が、農産物の品質向上や生産者の生きがいにつながっている。第2 に、少量多品目を集荷し、保育施設などへ出荷する仕組みを異業種連携で成立させており、地域運営組織内で役割を変えて仕組みを継続している。第3 に、少量多品目の農産物流通を継続する上で、クラウドサービスに基づいた情報共有、決済の仕組みの導入が貢献している一方で、生産者の高齢化で安定供給が課題となっている。農地保全や新たな担い手育成、小規模農業、地域内外の連携が重要である。
 

事例報告

 

●歩き続けられる街づくりと地域公共交通に関する事例検討

伊藤和哉(早稲田大学大学院人間科学研究科)、坂倉剛(放送大学教養学部)、扇原淳(早稲田大学人間科学学術院)

論文要旨▼
身体活動量の減少は生活習慣病リスクを高め、公衆衛生上重要な課題であることを背景に、ウォーカブルな街づくりが注目されている。ウォーカブル指標の構成要素のひとつに地域公共交通が含まれており、ウォーカブルな観点から地域公共交通の検討が求められている。本研究では、埼玉県所沢市を対象に市内循環バスについて利用者動向の調査と停留所の歩行環境を評価した。その結果、客観的な利用者の乗降データの蓄積は地域公共交通施策に不可欠である点を指摘した。また、地図上に停留所環境の情報を可視化したシステムを提案・開発した。今後、ウォーカブルな街づくりに貢献する住民参加型情報集約システムとして活用を検討する。
 
 

●新型コロナウイルス感染症拡大が秩父音頭祭りへ与えた影響及びオンライン世界秩父音頭祭りの試み

 

大木美穂(早稲田大学人間科学部) 岩垣穂大(金城学院大学人間科学部) 扇原淳(早稲田大学人間科学学術院)

 
論文要旨▼
世界的な新型コロナウイルス感染症の流行により、日本全国の多くの伝統的な祭りが開催中止となり、秩父音頭祭りも2年連続の中止となった。そこで秩父音頭祭りの関係者、地域住民を対象に、祭りが中止となったことに対する思いについてインタビュー調査を行った。また、早稲田大学ふるさと支援隊の活動の一環としてオンライン世界秩父音頭祭りを実施した。インタビューの結果、コロナ禍での祭りの中止という経験が、祭りを次世代に残すために変化を受け入れる必要があることを認識するきっかけとなっていた。また、実際にオンライン祭りを開催することによって、祭り開催地域との関係人口の拡大・維持に寄与できたと考えられた。
 
 

●地域課題解決のためのプロセスモデルを用いた地域特性に見合う実践的手法

大西 昌子、 岡山 大成、 西村 訓弘
(三重大学大学院地域イノベーション学研究科)
論文要旨▼
地域課題に対する取り組み方は多様であるが、その本質的なプロセス中には共通項的な部分を骨格としていると考えられる。本報告では、多数の経験から認識された共通のプロセスを基に、実際過去に経験した複数の事例を当て嵌めて検証した。著者ら個人ではモデルへの適応度が高いとしても客観性を担保できないため、更にそれらの実例から2つの地域における活動を抽出し、対照比較しつつプロセスモデルに当て嵌め流れを確認しながら論考を行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●津なぎさまち開港15周年記念シンポジウムにおける提案のまとめ

岡山 大成、大西 昌子
(三重大学大学院地域イノベーション学研究科)
論文要旨▼
津なぎさまち開港15周年記念シンポジウムが津なぎさまちのベイシスカ2階にて開催され、「持続可能な津なぎさまち創生」というテーマで討論された。その際に、著者は「若者が集い世界にはばたいていく人材育成の場としてはどうか」と提案した。シンポジウムにおいて公表されなかったアンケート調査の結果やその後の考察について報告する。また、真の課題を抽出する工程イメージとしてドリップモデルを提案する。
 
 
●北海道のワイン産業史序説

                           長村 知幸(小樽商科大学)

論文要旨▼

本稿では、北海道のワイン産業史を考察する。文明開化の時代の幕開けとともに、西欧文明開化方針を取った明治政府が殖産産業政策によって、西洋系品種のブドウの栽培を奨励し、冷涼な気候が適地と考えられた北海道で栽培が開始された。本研究の分析対象である後志地方は、道内の「食の宝庫」であり、良質な土壌を求めて多くの企業家が参入している。本研究は、後志地方のワインに関連した歴史的経緯を踏まえた分析結果をまとめたものである。

 

●長崎県五島列島赤島における雨水活用研究を契機とした離島振興

                      近藤晶・笠井利浩・三寺潤(福井工業大学)

論文要旨▼
赤島は長崎県五島市の南に位置し雨水を使って生活をしている島である。この赤島で、2017年の夏から雨水集水・貯留設備の構築やそれらを活用した環境教育プログラムも実行した。また、2018年に移住してきた若手移住者へ著者らが構築した雨水集水・貯留設備やロゴの移譲等活動支援を行った。これらの活動の結果、若手移住者が行ったクラウドファンディング達成度200%を超えて成功したほか、多くのメディア露出にも繋がり離島振興につながる結果を得ることができた。
 
 
●大学生によるYouTubeを活用した岡山市の地域活性化

                            佐々木 公之(中国学園大学)

論文要旨▼

2021年、岡山市に拠点を置く大学の学生が、ゼミナールでのPBLを通して動画共有サイトYouTubeを活用し、岡山市の地域活性化を目的とした活動を行った。大学生たちはスマートフォンと無料動画編集アプリを使い、30本のPR動画を完成させ情報発信した。本研究は、この活動がいかに地域活性化に繋がったかを検証し、実施する上で重要となった要素について考察するものである。検証の結果、学生たちが制作したこれらの動画は、岡山市の地域活性化に貢献していることが視聴回数や関係者へのインタビューなどから分かった。また、この活動の成功要因として、動画制作において学生の柔軟な発想やアイデアを尊重したことなどが重要な要素となっていると考察した。

 

●八王子市における墓地行政の現状と展望―市営墓地の利用・管理の視点から―

                                       福井 弘教(横浜国立大学大学院 環境情報学府)

論文要旨▼

埋葬形態の多様化や少子化で墓地を維持管理、継承することが困難となる事象などにより、墓地が公共課題として認識されつつある。本研究では中核市である東京都八王子市の市営墓地に焦点をあて、議会議事録に依拠してテキストマイニングを用いて墓地行政の現状と展望を展開した。考察の結果、墓地の管理運営を中心に管理者視点の発言が多くみられた。利用者視点からは合葬式墓地への要望が高く、それに関連した管理・増設・利用の議論が多くなされていた。同市の公園・社会福祉施設で導入済みの指定管理者制度については未導入であり、今後の動向により制度利用の検討が必要であろう。

 

●地域おこし協力隊による地方自治体の国際化支援の試み

ベイセンバイ ゼレ1,タペノワ グルデン1,伊藤 和哉2,鈴木 大介3,黒澤 栄則4,5,齋藤 篤5,扇原 淳6,浅田 匡6

1 皆野町地域おこし協力隊,2 早稲田大学大学院人間科学研究科,3 埼玉県立吉川美南高等学校,4 皆野町役場,5早稲田大学人間総合研究センター,6 早稲田大学人間科学学術院

論文要旨▼

埼玉県の中山間地域である秩父郡皆野町では、地域おこし協力隊が活動し、町内高校の魅力化、町の活性化事業を行っている。また、町と包括連携協定を有する早稲田大学等国内外の機関との連携により交流事業を行う等、多角的な国際化事業を行っている。2020年度からはカザフスタン共和国出身の隊員2名による、町内外でのカザフスタン文化発信、町内観光資源の外国語発信等、国際化の取り組みが進展している。今後は、コロナ禍の状況を踏まえ、町内の伝統的祝祭のオンライン化やオフラインとの並行開催、アーカイブ化による外国への発信の拡充、地域資源の知名度向上、他の地域おこし協力隊や地域住民との交流強化による関係人口の拡充が課題である。

 

●総務省による地方公務員の兼業等促進策は当事者の認識と合致するか

――公務員の兼業は地域貢献でなければならないのか?(問題提起)――

                    山本 泰弘(地方公務員、公務員Shiftプロジェクト)

論文要旨▼

国(総務省)は、地方公務員法の範囲内で地方公務員の兼業・副業等を促進するため、地方公共団体に対し兼業許可に関する通知を発した。この動きは、当事者である地方公務員の兼業・副業等に関する認識に合致したものであるか。本稿では、地方公務員を対象に行われた意識調査の結果から、当事者の認識と国の取り組みとの一致度合いを検証した。結果として、それらは合致していた。国が一定の役割を果たしたことで、当事者が満足に兼業・副業等に取り組むための環境作りは各自治体に任せられた。その上で、兼業・副業等促進の先進事例ともされる“社会貢献特化型の兼業許可制度”の問題点を議論する。すなわち、当該制度は、社会貢献とは必ずしも言い切れない事業等を不必要に排除し萎縮させる懸念がある。

 

●「恐竜・化石大陸ほっかいどう」プロモーションの実践

                     吉田 大輝(北海道) 小林 有(北海道)

論文要旨▼

北海道の化石は重要な学術的価値を有している。北海道庁では北海道の化石を地域振興に活かそうと、地域イメージ戦略を進めている。これまでに、博物館等施設へ訪問していない層を対象としたPRコンテンツの制作やキャンペーン、イベントの開催などに取り組んできた。イベント来場者に対し、アンケートを実施したところ、多くの人が北海道の化石へ興味を持っているが、実際に訪問するまでには至っていないことが明らかになった。また、化石の魅力に触れる機会を創出することで、新たに博物館等施設へ訪問する意欲が高まることがわかった。これらから、博物館等施設へ訪問していない層を対象にしたプロモーションは効果的であることが示唆された。

 
 

地域活性学会 事務局(堀本・那須)
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