地域活性学会 The Japan Association of Regional Development and Vitalization

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|研究論文集「地域活性研究」Vol.12(2020年3月発行)目次


 

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~ 目次 ~
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研究論文

地域活性化を目指す市町村組織の管理職リーダーシップ

市田明子、高野研一(慶應義塾大学)

論文要旨▼

人口減少傾向の市町村が地域活性化策を成功させるには、担い手である市町村職員がやりがいと地域への貢献感を持って職務に励むことが肝要である。本研究では、市町村職員の職務満足は管理職のリーダーシップや組織文化の影響を受けるという仮説を定量的に実証することを目的とする。675 サンプルについて多変量解析を行った結果、地域が活性化している市町村では、対人配慮指向のリーダーシップが職員のやりがいと地域への貢献感を促進し、そのリーダーシップは、創造性を育くむ協調的な組織文化が支えていることが明らかになった。地域活性化を目指す市町村においては、管理職は対人配慮指向のリーダーシップの視点を取り入れて、職員の育成に努めることを提案する。

離島・都市部・農村部に住む虚弱高齢者の活動能力と人付き合いに関する性差

井上高博、 山口善子

(活水女子大学看護学部)

論文要旨▼

【目的】離島・都市部・農村部に住む虚弱高齢者の活動能力と人付き合いに関する性差を明らかにする。【方法】虚弱高齢者382 名(離島104 名、都市部154 名、農村部124 名)を対象に、質問紙調査を行った。【結果】虚弱高齢者の活動能力は、都市部(女性:9.3±2.7 点、男性:9.3±2.9 点)が高く、離島男性(6.6±3.6 点)が最も低かった(p<.01)。同じ社会背景をもつ人との付き合いでは、離島女性(3.5±1.0 点)は最も高く、離島男性(2.4±1.1 点)は最も低かった(p<.01)。【結論】都市部の生活機能は、男女ともに高かった。離島の人づき合いには性差があった。

観光リピート意向と関係人口はいかに形成されるか     

-リピート循環モデルによる検証-

岩永洋平(法政大学地域研究センター)

論文要旨▼

旅行者の観光経験とその後の行動が、リピート意向にどう影響するか。観光が地域愛着、地域コミットメントを喚    起して関係人口を形成するか。国内旅行者、約2 万人の調査によって検証した。国内人口はシュリンクする上、インバウンドの流入も無限ではない。また地方人口の減少のなか、地域への愛着を持って支える「関係人口」の形成が求められてい る。調査データに共分散構造分析を適用したところ観光経験から直接というより、地域コミットメントを介して再訪意向が    起きていた。その地域コミットメントは訪問時のリレーション経験や旅行後の情報受発信、産品の消費で喚起されていた。旅先のもてなしにより地域愛着が高まり、ボランティア実践や移住検討に至ったサンプルも現れた。リピート促進のためには現地でのリレーション経験の提供と、旅行後のアプローチで地域コミットメントを高める必要があるとの示唆を得た。

産業遺産への満足をもたらす要因に関する定量分析

―石見銀山跡における経験の評価からの接近―

古安理英子(鳥取大学大学院)・赤沢克洋(島根大学)

論文要旨▼


本研究では、旅行者の産業遺産における経験の評価を通して産業遺産への満足をもたらす要因を明らかにすることを目的とした。そのために、石見銀山旅行者を回答主体とした質問紙調査を実施し、2つの分析課題に取り組んだ。その結果、重回帰分析から、産業遺産における経験の多くが産業遺産への満足をもたらす効果が高いことが示された。特に、五感が刺激される経験、驚きや珍しさを感じる経験、高揚感を感じる経験、リラックスする経験、知識や視野が広がる経験および地域の人々に親近感を感じる経験は有効性が高い。また、自由回答の集約結果から、銀山跡の存在、五感の経験、自然および接客対応が産業遺産への満足をもたらす要因となり、アクセス、産業遺産の価値の伝達および観光サービスに関する不満や要望への対応が増進要因となることが示唆された。

地域への主体的参加を促進する集合住宅のコミュニテ形成過程の研究

坂倉杏介・三木裕子・林和眞(東京都市大学)・高田友美(神山つなぐ公社)・

保井俊之(慶應義塾大学)

論文要旨

過疎地域における移住定住支援において、転入者と地域住民の関係構築や地域参加の促進は不可欠である。本研究では、徳島県神山町の「大埜地の集合住宅」の建設プロセスを事例に、入居者と地域住民の双方の地域意識と主体性の獲得がどのように深化するかを明らかにした。入居者・関係者への効果を実証するため、神山町神領地区の全戸を対象とした質問紙調査と比較し、インタビュー調査によってその要因を分析した。その結果、地区一般の住民と比較して入居者・関係者の地域の将来への参加意識が特に高いことが明らかになり、その要因が入居及びプロジェクト参加による人間関係の広がり、仕事や地域に対する意識の変化といった総合的な変化の結果であることが示された。

地域における男女共同参画への阻害要因の個別性の解明

— 熊本県を事例として-の研究

鈴木えり子(法政大学大学院 政策創造研究科)

論文要旨▼

本稿の目的は、男女共同参画の阻害要因である性別役割分業意識は、他者や社会へのかかわり方に対する自己の認識の影響を受け、その影響要因は地域における歴史文化に基づく根強い価値観と関係していることを、熊本県を事例として明らかにすることである。全国521 名と熊本305 名のweb 調査の結果、影響要因は一律ではなく、熊本の特徴として男女共同参画推進には男女ともに、他者が何と言おうと自分が正しいと思うことをやり通す意識が強く影響している。また熊本女性は和や同化を重んじる意識が高く、「女性の家庭への役割肯定」に影響をしているなどが分かった。さらにこれらの要因は、熊本の歴史文化に根付く意識と関係していることが示唆された。

大学発ベンチャーの事業化と地域特性に関する実証研究

鈴木 勝博 (桜美林大学)

論文要旨▼

2001年に発表された平沼プラン以降、順調にその数を増やしてきた大学発ベンチャーだが、その成功事例はまだ限定的である。本稿では、経済産業省が公開している大学発ベンチャーのデータベースを活用し、サステナブルな事業を実現(黒字化し、累積赤字を解消)するための成功要因、ならびに、その実現企業の様相を、地域の観点も交えて半定量的に探った。ハイテクベンチャーが多い大学発ベンチャーが成長していくためには、通常のベンチャーよりも長い期間が必要となることが予想されるが、「企業年齢」や「従業員数」といった基本的なファクターに加え、海外への「特許出願」が有意に寄与することが分かった。また、現在入手できるデータからは、各種リソースがそろった東京よりもむしろ、「北海道」、「近畿」、「四国」といった地域のほうが、事業ステージを先に進める上で優位となる傾向が明らかとなった。ただし、個々の企業の実像については、「地域における産業・雇用の創出に寄与する企業」というよりは、「着実にビジネスを推進する小規模ハイテク企業」というイメージが強いものであった。スケーラブルな地域スタートアップの実現に向けては、まずはその前提条件として、教育等の場を通じた創業候補者のマインドセットの醸成が必要となろう。

 

研究ノート

 

有償ボランティアへのインセンティブ設計に関する考察

~ 三重県紀北町あいのり運送実証事業から  ~

泉谷和昭(三重大学大学院 地域イノベーション研究科)

論文要旨▼


ボランティア人材は地域活性化を目的とする公共施策の実施に際して有力な担い手と期待できる。ところが、その確保や維持には課題も多い。本稿では、紀北町に於いて、過疎地域における新たな公共交通手段である「あいのり運送」の実施適合性を確認する目的で行われた実証事業に関連し、ボランティア・ドライバーへのアンケートとインタビューを実施し、その結果をもとに有償ボランティアに対するインセンティブプログラムの設計要点について考察する。より幅広くボランティア人材を求める観点から、複合インセンティブ設計の重要性を示し、ある種の「プロ意識」を抱く考えと「自発性」 を重視する考えとの関係に注目を与える。

 

 

「若年層移住者」増加の要因と効果に関する一考察

ー東日本大震災後の宮城県気仙沼市唐桑町の事例からー

大友 和佳子(JA共済総合研究所)

論文要旨

本稿は、地方の「若年層移住者」増加の要因と効果について考察した。対象地域は宮城県気仙沼市唐桑地区である。要因は次の4 点である。第一に、東日本大震災をきっかけに受け入れ側と移住者の協働の関係が構築されたことがある。第二に、地域の自然環境や地域文化、漁村特有の共同体の在り方が移住者を惹きつけている。第三に、住民と移住者をつなぐ場・人(キーパーソン)や「開かれた自治」の存在が活躍を支えている。第四に、若年層のチァレンジを応援する環境、目指すべき移住者のモデル、中間支援組織による継続した若年層の地域への呼び込み等がある。効果は、「若年層移住者」によって地元住民が地域の誇りを発見し、まちづくりの状況が変化している点である。

 

 

震災復興における「ビジネス・プラットフォーム」の形成

高力美由紀(新潟食料農業大学)

論文要旨▼

東日本大震災以降、被災地中小企業の多くは震災前の販路を失いその回復は容易ではなかった。ビジネスの復興には「新たな顧客基盤の構築」が必要であり、そこでは「エクイティ文化」に基づく被災地生産者・企業と消費地の企業、さらには消費者を結び付けるビジネス・プラットフォームの構築が有益であると考えられた。本研究では、このようなプラットフォームならびにコミュニティ形成を試みている事業者の事例研究を行った。結果、震災復興のためのビジネス・プラットフォームの形成には、「志」やWEB 上での様々な情報共有を行うバーチャルな繋がりを育むリアルなコミュニティとIT ネットワークシステムの構築という両輪が求められていることが示唆された。

 

地域製造業の海外展開によるローカル・サプライチェーンへの影響

ー 山形県製造企業実態調査から ー

國分一典,野田博行,中島健介,小野浩幸,兒玉直樹(山形大学)、  田中陽一郎(東北大学)、 柊 紫乃(愛知工業大学)

論文要旨▼

本研究は、地域製造業のグローバル化に伴う地域経済に及ぼす影響に関するものである。山形県の製造業は戦後の工業再配置政策により電子・電気機械産業への集約化が進み、さらにグローバル化の影響を大きく受けた。この点に注目し、ある中核企業とその形成されたローカル・サプライチェーンの海外展開を取り上げた。先行研究に基づき「代替的」海外投資は国内生産の減少を招く一方、「補完的」海外投資はむしろ国内生産を活性化・高度化させる側面があることを期待したが、現実には単純な図式だけでは必ずしもなく、諸事情が複雑に影響することが明らかにされた。

 

スポーツ交流型まちづくり〉に向けた施策展開のあり方に関する基礎研究

ー埼玉県戸田市の取組みを対象にー

高久 聡司、大西 律子

(目白大学社会学部)

論文要旨

スポーツを軸とするまちづくり、特に、2020  年東京オリンピックを前に「レガシー」に着目し、それを地域活性化や観光振興に繋ぐ動きが、今日、注目されている。しかし、今後を見据えた時に、「過去」の「レガシー」が地域にどのように 根付き、〈スポーツ交流型まちづくり〉へと連動するのか、との視点に立った検討は重要である。本論文では、スポーツツ ーリズムの枠組みを用い、1964 年東京オリンピックの「レガシー」(ボートコース)を有する埼玉県戸田市を対象に〈スポーツ交流型まちづくり〉へ向けての半世紀に亘る施策展開の整理と時代毎の特徴の抽出を試み、今後の当地での課題を、スポーツを見る人・支える人を養成する関連施策の立案にあることを導出した。

 

防災に資する「記念碑等」の活用について-宮城県内市町村の事例から-

髙野 俊英(法政大学大学院)

論文要旨▼

本研究では、東日本大震災後における自治体の「記念碑等」の活用に関するアンケート調査等から、「記念碑等」に関する自治体の保存等の状況と、新たに保存が決定された「震災遺構」の維持・活用等の取り組について探った。また、その「震災遺構」についてはその決定された理由等を調査した。「記念碑等」の保存が住民の理解を得るためには地域の活性化にもつながる観光の「文化資源」としてその価値を高め、いかに活用するかが課題であった。イベントの事例では災害の記憶の伝承や地域と参加者との交流の場として活用されていたが、震災復興のため応援に資する多様なイベントとの連携による活用は、地域のにぎわいを取り戻す契機となり、被災地への震災復興の支援が「地域の活性化」とつながっていることが本研究から見えてきた。

 

小田原市の柑橘樹園地を対象とした農地価格の検証

都丸孝之

慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科

論文要旨▼


神奈川県小田原市では農家の高齢化にともない、樹園地の耕作放棄地が年々増加している。耕作放棄地の増加は、農業生産量の減少のみならず、雑草や害虫の発生、鳥獣被害の増加といった様々な悪影響を及ぼす。そのため、耕作放棄地になる前に新規就農者に農地を受け渡していく必要があるが、農地の売買は年間数件程度にとどまっている。その理由の1つとして、樹園地の農地価格が適正に算出されておらず、新規就農者が安心して農地を購入できないことが挙げられる。そこで本研究は、小田原市の樹園地を対象に、DCF 法を用いて農地価格を算定した。特に小田原の主要柑橘であるみかんとレモンの農地価格と実勢価格の比較、さらに、耕作放棄地の農地価格と収穫可能な既存の農地価格の比較に着目して検証を行った。その結果、みかんの耕作放棄地の農地価格は、収穫可能な既存のみかん農地価格と比較して、1/10 であることが判明した。さらに、収穫可能な既存のレモンの農地価格は、収穫可能な既存のみかんの農地価格の3.6 倍になることが判明した。

 

NPO が関わる文脈で「地域活性」はどのように捉えられるか

~関連研究誌と NPO の定款のテキスト分析から~

中尾 公一(兵庫県立大学)

論文要旨▼

NPO が地域活性に果たす役割は、政府や研究者によって広く認められつつある。しかし、研究上捉えられてきたNPO の役割とNPO 自身が捉える「地域活性」の差異や、NPO が捉える「地域活性」の経時変化やNPO 所在地の差異までは分析されていない。本論文では「地域活性研究」等の学会誌二誌138 本の論文の550 余の文章表現や、2,700 余の「地域活性」等を含むNPO 法人の定款に含まれる語句を分析・比較した。論文とNPO 定款の頻出語の間には視点の違いが見られた。またNPO 法人の定款の頻出語は、1998 年から2019 年にかけて、教育・文化活動推進から高齢化対応、情報発信、観光へと経時変化し、大都市圏と非大都市圏の間では、人々、場、情報の捉え方に差異が見られたことを明らかにした。

 

精密板金会社における金属3D プリンタ事業化を通じた新規事業の成功要因に関する分析

藤尾宗太郎(信州大学)

論文要旨▼


本研究では、筆者自身が地方企業の新規事業立ち上げを成功させた経験を基に、エスノグラフィを用いて成功要因を分析した。筆者は産学官連携地域活性化プロジェクト「信州100 年企業創出プログラム」へ参加し、精密板金業タカノにおける金属3D プリンタ事業化へ取り組んだ。その中で筆者が実際に行った活動及び産学官連携コンソーシアムがもたらした効果を検証した。その結果、成功要因は「1.適切な要素の組み合わせ」「2.組み合わせを十分な速度で成長させる仕組み」「3.明確な達成指標の設定」「4.当事者意識」「5.ネットワーク形成」であることを明らかにした。

 

地域酒造の戦略的価値の特徴に関する考察―島根県の清酒製造を対象として―

永野 萌1・保永 展利2 *

1 島根大学自然科学研究科

2 島根大学

論文要旨▼


本研究の目的は、地域活性化の担い手である地域の清酒製造業者(以下「地域酒造」)が経営戦略において重要と考えている要素がどのように異なるのか、またその地域酒造間の差異に関連している要因を明らかにすることである。島根県酒造組合に所属する酒造会社を対象としてアンケート調査および聞き取り調査を行い、その結果から AHP(Analytic Hierarchy Process)を用いて、地域酒造の経営戦略における各要素の重要度(戦略的価値ウェイト)を算出した。また、算出した戦略的価値ウェイトを用いてクラスター分析を行い、聞き取り調査結果をもとに地域酒造の類型別の特徴について考察を行った。その結果、(1)地域酒造の経営戦略の傾向は3 つのグループ「バランス重視群」「販売重視群」「製造・販路重視群」に類型化できることが明らかとなった。(2)戦略的価値ウェイトの差異の要因として、「市場規模」「生産量」「販路」「歴史・創業年」などが関係していることが明らかになった。地域の市場規模が小さい地域にある酒造では、地元や県内での消費を求めるより、さらに人口の多い地域や県外へと販売先を求める傾向にある。これらの結果は、類似傾向をみせた個々の地域酒造を取り巻く立地条件や歴史的背景に基づき、マーケット戦略における類型化を行うことができる可能性を示唆している。

 

地方都市の公共劇場におけるアート機能とコミュニティ機能の両立の要件

-三重県津市の劇場群の分析-

山口真由

論文要旨▼

本論は、公共劇場の社会的機能としてアート機能とコミュニティ機能を提示し、地方都市の公共劇場が、2 機能を両立するための要因を分析したものである。三重県津市に所在する劇場群を調査対象とし、事業責任者2名に対するインタビューの結果をもとに、SCAT を利用した探索的な分析を行った。その結果、4 つの要因を抽出した。①人的・組織的なネットワークの構築、②主導的人物の存在、③劇場インフラの先行、④文化政策・演劇界の転換期というタイミング、の4 要因である。さらに①人的・組織的なネットワークの構築に関しては、事業の継続性に基づく多重的・多層的なネットワークの同時    的な構築が、重要な役割を果たしていた。

 

竹富島の移住者価値とネットワークが果たす役割

大和里美(奈良県立大学)

論文要旨▼

本研究では、沖縄県の竹富島で現地調査を行い、S-D ロジックの視点から、移住者にとっての価値と価値が生まれる文脈、及び価値共創において移住者間のネットワークが果たす役割について分析し、定住に繋がる地域の価値創造について考察した。その結果、3つの主要な価値と価値を生み出す文脈が示されたが、何れの価値を高く評価するかについては、ライフステージによる違いや性差が見られた。また移住者と島民の間だけでなく、移住者間のネットワーク内で地域価値が共創されていた。島の事情に通じた定住者の存在が移住者の価値共創に寄与しており、特に住民との交流が少ない移住者の価値共創において大きな役割を果たしていた。

 

地域における歴史文化団体の組織と運営―高知県の実践活動の分析―

楠瀬慶太(高知工科大学)

論文要旨▼

本研究は、過疎高齢化で消失の危機にある歴史文化を地域資源ととらえ、記録、保存、活用などの活動を行っている歴史文化団体の組織や運営の形態、課題を実践事例から分析するものである。各団体の活動は、地道な記録活動を基盤にし、地域資源としての歴史文化を地域社会に普及していくものであった。初期段階では、専門性を持つ研究者が重要な役割を果たし、年数を経た団体ほど成熟した組織形態を有しており、より個人に依存しない体制づくりが構築されていることが分かってきた。地域での活動を長く継続させていくためには、組織の成熟や発展段階を意識した運営が必要であり、マンネリ化を打破していくための企画やアイデアも求められる。

 

住民の潜在的可能性に基づく地域づくりに関する予備的研究

―ミャンマのー開発僧による地域開発の事例を手がかりにー

松原明美(同志社大学大学院 総合政策科学研究科 博士後期課程)

論文要旨▼

本研究の目的は、ミャンマーの開発僧が実践する「心の開発」を重視した地域開発のプロセスを可視化することを通して、住民の潜在的可能性に基づく日本に応用可能な地域づくりモデルを考案するための予備的知見を得ることにある。具体的には、開発僧や村人を対象としたインタビュー調査を行い、M-GTA によって地域開発のプロセスを明らかにした。その結果、ミャンマーの開発僧は個人の抱える課題に着目し、物心両面から地域開発に取り組んでいることが分かった。開発僧は、瞑想と説法を通じた心の開発を基軸に地域開発に取り組んでいた。慈悲を持って村人と関わる開発僧の姿勢は村人に波及し、地域全体に利他の精神が育まれていく様子が確認された。この慈悲や利他の精神が地域開発の基盤にあることにより、地域の発展に重要な社会関係資本が醸成されていたと推察される。

 

 

事例報告

地域医療機関でのインターナルマーケティングによる経営活性化方法

—経営手法導入による職員満足度向上の効果測定法の一考察—

伊藤        一(小樽商科大学・商学部)  福地 純一郎(学習院大学・経済学部)

論文要旨▼

本研究は過疎地域の⺠間医療機関の中規模病院を対象にして、導⼊された営⼿法(BSC、QC 他)を経営者層が医療スタッフに実施したインターナルマーケティング活動と⾒なし、⼀連の医療経営活性化の試みの成果分析としてギャップ分析により測定した。結果、インターナルマーケティングの構成要因として、従業員が自らの役割の重要性を地域貢献とし理解させることや戦略リーダーの適切なアドバイスや事後的なフォローなどの上級管理者の支援的活動、さらには彼らの訓練・参加的管理などの活動がギャップ分析により有意であると判明した。

「食」を起点とした地域活性化について

―山形県庄内地域における「食の都庄内」の取り組みを事例として―

小野英一(東北公益文科大学)

論文要旨▼

山形県庄内地域でこれまで進められてきた「食の都庄内」の取り組みは、山形県庄内地域という複数の市町から構成される地域が約15年間にわたり取り組んできた、「食」を起点とした地域活性化の事例である。「食の都庄内」の取り組みについては、これまで断片的な情報提供や報告などはあったが、取り組み全体を包括的に捉え、まとめたものは不在している。また論考レベルにおいても極めて限られており、その内容も限定的な状況にある。本稿では、はじめに「食の都庄内」の概略について整理する。次に「食の都庄内」の主要な取り組みを取り上げ、事例報告を行う。最後に、今後の「食の都庄内」の課題と研究課題について述べ、全体をまとめる。

スポーツ実施率向上を目指した教養教育

-美術大学における「ゴルフビジネス論」授業新設の意義と展開例―

北徹朗(武蔵野美術大学)

森 正明(中央大学)

論文要旨▼

現在、日本におけるスポーツ実施率は高くない。他方、運動スポーツのきっかけとしてスポーツマンガの影響が強いことが知られている。マンガに限らず、クリエーターがスポーツを素材とした作品を表現することで人々が影響を受け、スポーツ開始のきっかけになる。こうした背景から、美大生がスポーツの置かれた環境や背景を学ぶことは重要である。今回、スポーツ市場の中でも最大規模であり、大学教養体育でも教材とされていることが多いゴルフについて、「ゴルフビジネス論」を新設した背景と展開事例についてまとめ基礎資料として検討した。

まちづくりにおける祭りの本質とその理解

~オープンディスカッションという議論の場を用いて~

野田勝二(千葉大学)・徳山郁夫(千葉大学)・尾田正二(東京大学)

論文要旨▼

私たちはオープンディスカッションという議論の場を用いて“まちづくり”にとって重要であると提示された食(food)と農(farm)と祭(festival)のうち,重要性を認識しにくかった祭り(festival)について様々な議論を行ってきた。その結果,私たちは“余暇”が精神的態度を指す言葉であるとすれば,祭り(festival)は“余暇”の精神的態度を保ち豊かな人間性を培うための時間であるとの考えに至った。今後の“まちづくり”の視点として,心の豊かさを育むために自由学芸としての“余暇”を,あるいは祭り(festival)を行うことができる場と仕組みを,地域社会に整備していく必要があ     るのではないだろうか。

営農型太陽光発電と地域活性化

~2019 全国ソーラーシェアリングサミットin 柏開催報告~

野田勝二(千葉大学),馬上丈司(千葉エコ・エネルギー(株 ),

朝倉暁生(東邦大学)

論文要旨▼

再生可能エネルギーの特徴は,エネルギーを購入するために域外へ流出していた富を域内に留められることと,固定価格買取制度により自ら顧客を開拓しなくとも域外の富を域内に持ち込めることである。よって,再生可能エネルギーは地域間    競争を引き起こしにくいため,地域創生の切り札となり得る。再生可能エネルギーのうち,どこでも使える太陽光発電は外せない発電手段であり,そのなかでソーラーシェアリングは継続的な営農に寄与する可能性を秘めている。このサミットで,地域の抱えるリスクの可視化と共有化,エネルギー問題も含めた「まちづくり」の自分事化,そして地域社会の「自立」と「自律」に向けてコーディネートするスキームの重要性が再認識された。

災害復旧・復興円滑化による地域活性

山中 鹿次(NPO 法人近畿地域活性ネットワーク)

論文要旨▼


2011 年の東日本大震災や、2018 年の西日本豪雨など日本列島では昨今大規模災害が多発している。災害は経済損失や交通網の寸断などで、人々の交流に大きな妨げとなっている。災害復旧と復興の円滑化こそが、地域を活性できるか否かの大きな分岐点と言え、昭和から平成にかけての災害についての事情の変化を提示し、過去の災害復旧と復興の事例を踏ま    え、今後にむけての有効な対策を提示する。


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地域活性学会 事務局(堀本)
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TEL:088-821-7211

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