研究ノート
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位置情報を活用したゲーミングの地域ツーリズムへの適用に関する一考察
井上和久(東海学園大学経営学部)
論文要旨▼
携帯電話の加入契約数の増加とともに携帯ゲーム市場が急速に拡大している。近年、地方公共団体や商工会、観光協会などが、地域ツーリズムに関連するゲーミングを制作・配信・協力・協賛する事例が登場している。さらに、クールジャパン戦略においても、アニメやマンガなどと同様に、ゲーミングへの期待は高まりをみせている。本稿では、特に観光と関係が強いと考えられる、位置情報を活用したゲーミングに着目し、地域ツーリズムへの適用による効果を明らかにすることを研究目的として、類型化を通じた分析を試みた。その結果、位置情報を活用したゲーミングの地域ツーリズムへの適用による効果として、ゲーミングにおいて名勝や特産品を指定することによる集客効果や、地域情報に関する広報効果が存在することが明らかになった。
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統計調査に関する官学連携インターンシップの考察
—岐阜大学次世代地域リーダー育成プログラムにおける協働教育を事例にー
今永典秀(名古屋産業大学)松林康博(名古屋経済大学)益川浩一(岐阜大学)
論文要旨▼
少子高齢化に伴い、統計調査員の高齢化・担い手不足が社会課題となっている。本研究では、統計調査の重要性や統計調査員の仕事内容を理解するとともに、地域課題解決に向けてリーダーシップを発揮できる人材育成を目指した統計調査に関する官学連携インターンシップを考察の対象とする。本研究では、岐阜県環境生活部統計課と岐阜大学が連携して2017年度・2018年度に実施した次世代地域リーダー育成プログラム産業リーダーコースにおける「自治体協働型インターンシップ」に着目し、参加学生への事前事後の意識調査と、統計調査員として登録し実践した学生への追跡インタビュー調査により、教育効果、統計普及、公務員・統計調査員に関する学生の職務理解の向上について明らかにした。また、文部科学省が提唱する「就業体験」「正規の教育課程」「事前・事後学習・モニタリングの実施」「実施後の教育効果の測定の仕組みの整備」「原則5日間以上」「大学と企業が協働する」を満たした大学における教育効果の高いインターンシッププログラムが2017年度に新規開発された。そのインターンシッププログラムは、実務家教員と統計課職員による共同指導により、「仕事理解型」「業務補助型」「課題協働型」が融合され、統計調査員として正課のプログラム外での任意登録を推奨し、実践できる独自の新規プログラムである。
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小果実「カシス」を原材料とした関連産業振興のための調査と統計的分析
内山大史(弘前大学)
論文要旨▼
青森県の 「カシス」生産者、加工業者および支援機関等とのヒアリングを経て明らかになった、原材料の賞味期限という課題解決策の一つである、ワイン造りという観点をふまえた調査を行い、一般消費者がもつ小果実「カシス」に関するイメージ、興味のある商品、健康・機能性、地理的表示など付加価値に関する意識について分析を行った。結果、関連商品への興味を引き付けるためには、「カシス」の認知度合いを高めることが重要であること、加えて消費者の世帯年間所得、健康・機能性への意識(差別化)、農産品の信頼性を担保することが「カシス」認知度合いと関連性があることを明らかにした。
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共創型デザインの視点からみる地域鉄道の観光振興
金山 智子
(情報科学芸術大学院大学)
論文要旨▼
近年、観光振興を目的とした取組みを実施する地域鉄道が増加している。輸送事業とは異なる新たなビジネスを企画・実践していく中で、地域との協働が重要であることが指摘されてきた。持続可能な社会において共創型デザインが求められる中で、本研究では地域鉄道と地域の多様な主体との連携による観光の取組みを共創型デザインとして据え直し、その存在意義を探求することを目的とした。本研究では、全地域鉄道のウェブサイト分析と事業者へのインタビュー調査から、地域鉄道が地域観光ビジネスのジャンルとして確立されていることを明らかにし、地域鉄道の観光振興が持続可能な社会における共創型デザインとして有効なモデルとなることを示した。
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正規の教育課程 による地方創生インターシップの実施条件
—地方企業の インターンシップ受入れを促す、就業体験の動機づけ内容と就業体験カリキュラムの解明—
鈴木誠二(法政大学地域研究センター)
論文要旨▼
地域の活性化に向けては、地域に存在する企業の競争力を高め、雇用の拡大と所得の向上を実現させる必要がある。しかし地方企業は進学や就職を機とした人材流出の影響を受け担い手不足に陥り、その結果 地域の活性化は停滞している。本稿では、「地方企業の競争力を高める担い手創出 」に向け、ローカリティの概念を用い 正規の教育課程による地方創生インターンシップの展開方法を検討した。検討にあたっては東京成徳大学と産学連携し、地方創生インターンシップの受入れを開始する 地方企業(観光宿泊業・介護サービス業・介護人材派遣業・技能実習生派遣業・自動車部品卸業)を事例に用いた。研究により、「働き甲斐を有する社会人生活に向けた、行動変革を促す機会」 とする カリキュラムを設計すれば、地方企業の参画を促し、 都市と地方に新たな関係性を創出させながら、体験学生の就職意識を高められると明らかにした。実現に向けて は、①事前学習で 利己動機を触発し地方企業での就業体験と接合させること、 ②就業体験で働きかけが求められるカリキュラムを繰り返し行なうこと、③事後教育で、オリジナリティを発展させるオープン管理の実装が求められる。
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中国の少数民族地域における行政主導による観光開発の展開
-新疆北部キョクトカイ風景区を事例として
冒茜茜(法政大学大学院・公共政策研究科)
論文要旨▼
本研究では新疆北部キョクトカイ風景区の事例を取り上げ、行政主導による民族観光の開発がどのように推進されているかを実証的に解明しながら、様々な観光資源の開発・利用をめぐる政府側と地元民の対応策を明らかにした。キョクトカイ風景区の観光開発において、鎮政府及び上級の県政府による資金投資や施設整備などは観光開発の基礎となり、同時に地元民も積極的に飲食店やホテル経営などのサービス業を展開し、観光客への対応を強化しつつある。こうした成功例と言われるキョクトカイ風景区の観光開発では、政府と地元民が一体となって取り組む姿が見られ、地域経済を活性化させ、観光産業の方向性を見出すことができた。
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観光地経営における観光ビッグデータの活用マネジメントに関する探索的研究
‐北近畿地域における観光ビッグデータの活用ケースを事例にして‐
佐藤充 福知山公立大学
論文要旨▼
本研究は、観光地経営における観光ビッグデータの効果的な活用のあり方を検討するために、北近畿地域の取り組みを対象にした事例分析を行った。その結果、主に位置情報に関する観光ビッグデータがマーケティングリサーチで用いられていた。その一方で、観光ビッグデータの活用にあたって、明確な目的の設定、データプラットフォームの形成、データ取得のコスト抑制、データマネジメントを担う人材の確保・育成が課題となっていた。将来的には、スマートツーリズムの実現やスマートデスティネーションの形成という視点からの活用が望まれる。
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地方都市における地域資源を活かしたMICE の可能性に関する考察
温泉旅館・ホテルにおける国際会議の事例
高澤由美(山形大学)
論文要旨▼
地域活性に資するMICE の取組として温泉施設における国際会議の事例を分析した。1)温泉施設における国際会議開催は主催者の希望がきっかけであり、これを機に山形CB が誘致をはじめた2)開催実績は2010 年から9 件で、規模は100 名未満の小規模なものが多く、外国人の参加率が高い3)受け入れ自体に大きな問題はなく会議内容に応じてフレキシブルに対応している。食事やレセプション会場、誘致活動において地域資源が活用されている。4)会議の主催者は温泉施設をユニークベニューとして捉え、開催地決定の大きな要因となっている。また評価はサポート体制や温泉利用に関して高く、他方でアクセスや周辺環境への評価は比較的低いことを明らかにした。
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電子地域通貨の利用者属性と加盟店での決済状況に関する研究
:飛騨信用組合によるさるぼぼコインを事例に
保田 隆明(神戸大学)
論文要旨▼
地方創生への処方箋の一つとして、IT技術の進展によって電子地域通貨が見直されている。本研究では、わが国での電子地域通貨導入への検討材料として、飛騨高山地方で展開されている「さるぼぼコイン」の利用者及び加盟店舗の利用データを分析をした。結果、利用者は金曜日や年金および給与支給日の前後にチャージする傾向があること、女性は日用品などの少額決済が多い一方、男性は目的買いでの利用が多く、女性よりも一回当たりの決済金額が大きいことがわかった。なお、コインを受け取った加盟店の多くが現金に換金しており、城内でのコイン循環はあまり生まれていない。電子地域通貨の城内循環には、地域内での産業チェーンの有無が影響しうる。
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