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|研究論文集「地域活性研究」Vol.6(2015年3月発行)


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~ 目次 ~

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研究論文

サードプレイスにおける経験がもたらす地域愛着と協力意向の形成

小林重人、山田広明(北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科)
論文要旨▼
本稿の目的は、非常設型カフェの利用者の地域愛着を高めることで、利用者の地域に対する協力意向を形成する過程が効 果的に機能するカフェの経験と利用者の属性を明らかにすることである。そのため、非常設型カフェの利用者に対してアン ケート調査を実施した。分析結果から、地域外に居住する利用者の協力意向の形成には、地域の魅力となるメニューの提供 と知らない他者とのコミュニケーションが寄与することを示した。また、これらの二要素に対する肯定的評価と地域愛着に は有意な相関があることを示した。以上の結果から、地域愛着が中立である利用者の協力意向の形成には、カフェにおいて 二要素を経験させることが効果的であると結論付ける。

 

社会起業家の行動特性:エゴグラムによる検討

須藤 順(高知大学)
論文要旨▼
本研究では、社会起業家の行動特性を理解することを目的に、55 名の社会起業家 (男性 39 名、女性 16 名) へエゴグラム (TEG-Ⅱ) 調査を実施した。その結果、1) 批判的な親 (Critical Parent) 、養育的な親 (Nurturing Parent) 、成人 (Adult) 、 自由な子ども (Free Child) の4 つの尺度が相対的に高い、2) 順応した子ども (Adapted Child) 尺度が著しく低い、3) 高 い心的エネルギーを有する、以上が確認された。このことから、社会起業家の行動特性として、強い責任感と批判精神、思 いやりや利他的精神、理性的かつ論理的な思考、豊かな創造性、自主性や自己主張の強さといった点が顕著であることが示 唆された。

 

自治会ベースの人口統計データを用いた「消滅可能性自治会」の将来予測モデルの開発

鈴木栄之心、森薫、長瀬光市、玉村雅敏、金子郁容(慶應義塾大学)
論文要旨▼
本研究では、自治会ベースの人口統計データを用いた「消滅可能性自治会」の将来予測モデルを開発した。宮城県栗原市 を事例として将来予測モデルを適用した結果、自治会の「消滅可能性」には地域差や時間差があり、2 要素の相乗効果によ って自治会の二極化が徐々に進行していく傾向が予測され、自治体を対象とした「消滅可能性」では把握できない視点から 分析することが可能となった。また、複数の自治会から構成される小学校区単位で自治会再編を検討したところ、生産年齢 人口のボリュームに着目することの必要性が導かれた。本論文の将来予測データは既に実務で利用されており、今後は各種 計画の策定局面においても利用されることが期待される。

 
研究ノート

スタンプラリーにおける応募者の特徴と「道の駅」が果たした役割
‐栃木県内のジェラート店におけるスタンプラリーを例として‐

田中 美香(東京農工大学大学院連合農学研究科)
論文要旨▼
本研究は、地域活性化を目的とした行政主導の 27 店舗を対象としたジェラート・スタンプリー事例より、①応募者の特徴、 ②店舗の組み合わせ、③「道の駅」が果たした役割、を明らかにすることを目的とした。なお、スタンプラリー対象店舗は、 県産品を加工販売することが条件だった。その結果、①女性が 68%、②30 代が最大数(26%)、③最大数(37%)となった スタンプラリー期間は 4 週間、④「道の駅」利用者は 96%、⑤片道における平均移動距離は44.3km、⑥スタンプラリー店舗 の定番は存在せず、⑦「道の駅」がスタンプ数の増加に寄与、⑧「道の駅」は移動距離の延長化へ寄与、が明らかとなった。

 

住民と看護学生の社会的ネットワークを活かした「健康長寿のむら」づくり

垣花 渉(石川県立看護大学看護学部)
論文要旨▼
本研究は、Community-Based Participatory Research の原則に基づき、中山間地域に暮らす高齢農家の健康の維持・ 増進という課題解決に取り組んだとき、住民の健康状態や生活の質はどのように変化するのかを明らかにする。そのた め、研究者は住民と看護学生の社会的ネットワークをつくる働きかけを行った。住民は、看護学生と協働して「食・緑・ 健康」に関する地域づくりを行い、研究者や専門職はそれを支援した。3 年間の地域づくり活動における身体・社会的 健康指標の変化を分析した。その結果、住民と学生の社会的ネットワークを通して住民の社会的な健康度は増進した。 併せて、住民は身体の良好な健康度を維持した。高齢者の主体的な社会参加の有用性が示唆された。

 

地域におけるアーティストのパフォーマンス的活動と地域活性化の研究 ―淡路島を事例に―

桑島 紳二(神戸学院大学人文学部)
論文要旨▼
本研究では淡路島で地域に開かれた交流施設を設け活動を続けるアーティスト3事例を取り上げ、それらの活動と地域活 性化の関係について比較研究を行った。分析においては3事例の活動が「パフォーマンス」的傾向を持つものとして捉え、 パフォーマンス理論を援用し比較した。次にアーティストのパフォーマンス的活動が地域社会に対してどのように影響して いるのかということについて2つの仮説を立て検証を試みた。さらにアーティストのパフォーマンス的活動と地域との関わ りという視点からモデル化を行なった。

 

オープンデータ推進に向けた国内先進地域の特徴分析

早田吉伸 前野隆司 保井俊之 (慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科)
論文要旨▼
本研究では、地域課題解決の施策として注目されるオープンデータに着目し、海外の先行事例を調査するとともに、オー プンガバメントの3 段階に沿ってその特徴を整理・分析し、オープンデータの推進状況を捉えるための指標を作成した。次 に、本指標に従い国内の概要調査を行い、協働段階においてデータを活用した地域サービスが立ち上がらない課題があるこ とを確認した。更に、先進地域の詳細調査を実施し、この解決には行政職員の参加とプロデュース人材が必要であることを あきらかにするとともに、共通的な事項についてメカニズムをモデル化した。最後に有識者インタビュー等を通じ、本モデ ルの妥当性、有効性を確認した。

 

地方高齢者の購買行動特性の分析

ホーバック、白肌邦生(北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科)
論文要旨▼
日本において、高齢化社会が進むとともに食料品店舗が減少し、食料品店舗へのアクセスに課題を抱える地方高齢者が増 加している。本研究は、購買行動における動機を調査することで、地方高齢者の特性を明らかにすることを目的とする。本 研究では、136 世帯の地方高齢者に対するインタビュー調査を実施し、グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分 析をした。その結果、購買行動における動機によって、地方高齢者を作用型・自立型・義務型・交流型の4 つに分類できる ことを明らかにした。この分類に合わせて、それぞれの地方高齢者の特性に合った支援活動を展開していくことが、これか ら高齢化社会が深刻化する地域の経営に求められる。

 

地域とつながりが幸せに及ぼす影響 ―全国 15000 人アンケート調査をもとに―

栗原志功*1、筧裕介*2、楠聖伸*1、竹井真希、前野隆司*1
(*1:慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科、*2:博報堂issue+design)
論文要旨▼
本研究では、地域の幸福を定量化するために、全国の日本人15000 人に対するアンケート調査を行った。まず、幸せ の4因子を基にしたしあわせ風土スコアを用いて、都道府県別の幸福度を明らかにした。次に、学術的な裏付けをすべく、 ディーナーの人生満足尺度を用いて分析を行った結果、両者の有効性を明らかにした。さらに、人生満足尺度と友人の数が 相関していることを明らかにした。これらより、地域の幸福度向上のためには人々のつながりを醸成することが重要である といえる。

 

地域ビジネス創造における地域内外資本関係と補助金政策問題

桂信太郎、那須清吾(高知工科大学)
論文要旨▼
地域活性化のためには、①地元にある資源、②人材、③産業クラスター、④県内産業基盤が有機的に絡み合いながら 相乗効果を生むシステムが戦略的に構想される必要がある。国も国策として地域活性化を推進しながら、地域ビジネスの創 造と起業支援に注力している。我々が近年取り組んでいるビジネス創造のケース調査から得られた知見をもとに、県内外の 資本関係と補助金政策問題に焦点を当てて、地方公共団体と企業と地域の現状とあり方についてのモデル提案を試みる。

 

「共同行為における自己実現の段階モデル」を用いた
協創型地域づくり拠点の参加者の意識と行動変化の分析

坂倉杏介・保井俊之・白坂成功・前野隆司
(慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科)
論文要旨▼
「共同行為における自己実現の段階モデル」は、「地域の居場所」における来場者のつながり形成や自発的な活動の創出メ カニズムを解明するため、その代表事例の一つである「芝の家」を対象事例に、筆者らが開発した分析モデルである。本研 究ではさらにこのモデルを拡張し、地縁コミュニティを重視した居場所型拠点だけではなく、様々なテーマ・形態を持つ「協 創型地域づくり拠点」全般に応用可能なモデルを仮設的に構築し、比較事例調査を通じて検証する。事例は、地縁コミュニ ティ型/テーマコミュニティ型、居場所型/活動拠点型の4 類型に整理し、全国の協創型地域づくり拠点の成功事例として 「うちの実家」、「リタクラブ」、「津屋崎ブランチ」を取り上げた。参加者に対する聞き取り調査を実施した結果、拡張版モ デルを用いることで参加者の意識と行動変化の過程がよく説明されることがわかり、その有効性が明らかになった。

 

分権下における自治体議会の活性化に関する一考察

山口忠保(東北公益文科大学大学院・博士後期課程)
論文要旨▼
地方創生が叫ばれ、地域の自主性と創意工夫が従前にも増して重要な時を迎え、分権改革も新たなステージへ進展しよう としている。人が生きる地方創生とするために、二元代表制の一翼を担う自治体議会の使命と責任は重い。本研究は全国市 区議会を対象に実施したアンケート調査の分析を通して、議会改革を加速化させる方途を探った。その結果、改革推進の原 動力はその必要性の認識度にかかっていることが明らかになった。そして、その認識度を高める手段の一つとして議会基本 条例制定及び見直し等への取組みが有効であることがあらためて見えてきた。統一地方選を控え、全国の自治体議会が再度、 何のためという問いかけに真摯に向き合うときであると、強く思えてならない。

 

地域ブランディングの目的、実施主体、地域の範囲及び内部マネジメントに関する考察

桃井 謙祐(信州大学)
論文要旨▼
地域ブランディングには多様な主体が関わる一方、その目的や地域の範囲設定についても議論がある。またそのため 地域ブランディングでは地域内部のマネジメントは難しく、地域の範囲が広がるほど困難さを増す。本研究では、全国的な アンケート調査結果を定量的に分析しつつ、事例研究を実施することで、我が国では①地域ブランディングへの取組みは自 治体職員が中心となったものが最も多いものの、地域企業・団体といった民間主体が中心となったものと比べると、後者ほ ど成果を上げていないと評価されていること、②ゾーニングの地理的範囲が大きくなると、その目的として観光が重視され てくることなどを明らかにしつつ、その理論的説明を行った。

 
事例研究報告

商店街組織によるコミュニティ・カフェのマネジメント

菅原 浩信(北海学園大学)
論文要旨▼
本稿の目的は、(1)商店街組織はどのようなコミュニティ・カフェのマネジメントを展開しているのかについて分析 するとともに、(2)今後、どうすれば適切なマネジメントが展開されるのかについて考察することである。事例として取り上 げた6 つの商店街組織では、地域コミュニティの活性化に向け、様々なコミュニティ・カフェのマネジメントが展開されて いるものの、それらは必ずしも適切なものであるとはいえないことが明らかとなった。今後、商店街組織が適切なコミュニ ティ・カフェのマネジメントを展開していくためには、(1)交流やふれあいの地域コミュニティへの波及、(2)地域住民等の コミュニティ・カフェへの参画、(3)商店街全体への効果の波及、(4)支援のあり方の見直しの働きかけの4 点を考慮する必 要があることも明らかとなった。

 

エコミュージアムによる地域概念の形成に関する研究

井上和久(早稲田大学大学院環境・エネルギー研究科)、友成真一(早稲田大学理工学術院)
論文要旨▼
1971 年にエコミュージアムは、ジョルジュ・アンリ・リヴィエールにより概念が提案された。以降、エコミュージア ムは世界的な広がりを見せ、我が国においては、1990 年代以降、朝日町エコミュージアムを初めとした多様なエコミュ ージアムが設置された。本稿では、エコミュージアムの現状を分析すると共にエコミュージアムにおける公共・共生を 軸とした地域形成概念の変化について検討を行った。エコミュージアムは動的に資源を活用しながら保存・展示を行う ことから、その活動において、住民参加を基軸としている。本研究では、地域概念の形成におけるフレームワークを明 らかにした。

 

大都市の公的支援機関における創業支援現場の一考察 -創業者と支援者の実践コミュニティ形成プロセス-

柴田 仁夫(埼玉大学経済学部非常勤講師)・井手美由樹(井手コンサルティングオフィス)
論文要旨▼
本稿では,パートナーシップ構築ノウハウを有した支援者が少ないという大都市部の公的支援機関が抱える課題に対し, 支援者がどのようにパートナーシップを構築しているのか,実際の支援者の事例からこれを明らかにした。支援者は創業 者等と「課題の見極め」「タイムリーな支援策情報の提供」「定期的なコンタクト」を通じてパートナーシップの構築を図 っているが,これらは「共同の企画」「共有領域」「相互関係」という実践コミュニティの構成要素であると考えられる。 つまり相談窓口は支援者と創業者等の実践コミュニティであり,創業者等と支援者のパートナーシップが強連結になれば 創業者等は実践コミュニティに十全的参加となり,弱連結であれば正統的周辺参加となる。

 

NPO 法人「ミラツク」の超域型場づくりフレームワークによる地域活性化の特徴分析 ―場づくりの比較分析や共同行為における自己実現の段階モデル分析を通じて―

坂倉杏介*1、西村勇哉*2、真木まどか*2、早田吉伸*1、前野隆司*1、保井俊之*1
(*1:慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科、*2:NPO 法人ミラツク)
論文要旨▼
本研究は、2000 年代に入り顕著となった地域活性化の場のとらえ方の変化を背景に出現した、従来の領域概念を超え た地域活性化団体を、「超域型場づくり」地域活性化団体モデルとして特定し、同団体の有する地域を活性化するシステムの 機能とふるまいを構造化した。そして、これまでの地域活性化団体の場づくりとの比較分析により、同団体が地域の社会イ ノベータの自己実現と成長の促進を通じて、地域活性化に寄与することを可視化した。さらに「共同行為における自己実現 の段階モデル」を用い、地域活性化団体と場への参加者がともに自己成長を遂げ、地域活性化を加速する効果があることを 示した。

 

京築地域における経済指標を用いた地域特性の分析と今後の展開

宇佐圭司(西日本工業大学)・皆川重男(西日本工業大学)
論文要旨▼
福岡県東部に位置する京築地域は、2016 年を目標に整備が進められている東九州自動車道により、今後の地域基盤の変化 が予想されている地域である。この研究では、京築地域の特性を把握し、自動車道整備に伴う活性化策を講じることを目的 としている。そのため、都市に関する指標を用いて、福岡県・大分県の78 市町村の類型化を行い、この地域が4 つのクラス ターから構成されていることを明らかにした。また、今後の活性化策として、自動車産業の集積地としての機能を発揮する ための環境整備が必要であることと、交流人口を確保するための地域ブランドの構築、地域資源の開発などの必要性を提示 した。

 

情報メディアが作る地域活性化の課題 ~群馬県富岡周辺を事例に~

田畑 恒平(江戸川大学 メディアコミュニケーション学部)
論文要旨▼
2014 年群馬県富岡市にある日本の殖産興業の代名詞とも言える「富岡製糸場と絹産業遺産群」が、ユネスコの世界遺産 に正式に登録された。この情報は瞬く間にメディアに載り人々に知れ渡ることになったのである。その結果、富岡製糸場に は予想をはるかに超える観光客が押し寄せ、富岡市の中心地区は空前の観光ブームに沸いている。こうした中で、その土地 に代々暮らし、未だに絹産業に従事しながら生活している人々もいる。また、これを機に転換を図り観光を中心とした産業 へと転換する人々も存在している。念願の世界遺産登録が地域活性化に果たす役割として大きな果実を得た反面、そこに暮 らす人々の生活や産業への影響、また劇薬ともいうべきメディアによる地域活性化の功罪について検討する。

 

富山県におけるジェネリック医薬品の普及要因に関する研究 -地域活性化への取り組み-

近藤 博子(法政大学大学院 政策創造研究科 博士後期課程)
論文要旨▼
今日、日本の高齢化社会において医療費が増大している。厚生労働省の医療費の抑制政策の一つに、ジェネ リック医薬品の普及があるが、思うように進んでいない。富山県は、ジェネリック医薬品の使用割合が全国平 均を上回っている。富山県には多くの医薬品製造企業が立地しており、ジェネリック医薬品を製造・供給して いる企業も多い。主要産業が医薬品産業である富山県にとって、ジェネリック医薬品の普及は地域活性化に結 びついている。富山県はどのような取り組みで成功を収めたのだろうか。ジェネリック医薬品の普及要因とし て「安全性・品質の確保・安定供給・情報提供・医師や薬剤師における信頼度の向上」が重要であることが判 明した。

 

地域観光とアニメ舞台めぐりが両立するアニメツーリズム推進モデルの研究 ―富山県南砺市の恋旅公式ツアー「南砺に恋する女子旅」を事例として―

花房真理子(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科)
論文要旨▼
アニメツーリズムは魅力的なコンテンツによって集客交流産業を振興させる機能をもつ。本研究では地域観光とアニメ舞 台めぐりの両機能が備わるアニメツーリズム推進モデルを提案する。モデルに基づき企画した『恋旅』の舞台をめぐるバス ツアーの参加者へ質問調査を行い、地域資源の提供と作品を強調しないクチコミが作品に関心の低い旅行者を惹きつけるこ とを明らかにした。また作品に関心の低い旅行者も地域固有の物語を描く作品の視聴によってアニメツーリズム的行動を起 こすことを示した。以上の結果から、筆者らは作品への関心が低い旅行者を誘致することで、アニメツーリズムの持続的発 展を可能にするアニメツーリズム推進モデルを構築した。

 

総合型地域スポーツクラブの自立的運営に関する―考察
―二重県内総合型地域スポーツクラブを着日して―

黒川 祐光(岐阜経済大学大学院)
論文要旨▼
総合型地域スポーツクラブは、スポーッで地域を元気にする重要な役割 (新 しい公共)の担い手として期待されてい るが、運営面においても主財源に乏しく、各種助成金や指定管理者制度に頼つているケースが多い。クラブアンケー ト 調査を行った結果、運営が行き詰まっているクラブと新たな方向を見出したクラブの二極化傾向にあることがわかつた。 コミュニティ形成・促進を目的とした行政施策として誕生 した総合型地域スポーツクラブであるが、行政とクラブ (地 域住民)の協働関係を構築 し、住民主導へ方向転換していくことが、総合型クラブの自立的運営を促進するものである。

 

大学教育における地域活性化をテーマにした協働学習
グループウェアを介した相互作用が学習成果に与える影響

松橋崇史 飯沼瑞穂 中村太戯留 千代倉弘明 (以上、東京工科大学)
論文要旨▼
工学系の学部生を対象にした2 年次の必修授業において、地域活性化をテーマにした協働学習を実施した。協働学習を促 すためにグループウェアを導入し、学生間の相互作用の促進を図った。本論では、まず、地域活性化をテーマにした協働学 習を大学の授業で行う際の課題と、グループウェアを導入した狙いとその仕組みの説明を行う。次に、履修者全員を対象に した事前事後のアンケート調査の結果に基づき、それがまちづくり学習に与える影響を把握する。調査結果から、グループ ウェアによって個人課題やグループ課題の相互参照を促すことが、まちづくりへの関心を喚起することが示唆された。

 

ヒト・モノ・カネ・コト蓄積型の持続可能な地域再生―海士町を事例として―

中島 恵理(上智大学)
論文要旨▼
我が国の持続可能な地域再生の取組を分析するため、持続可能な発展に関する国際的な原則、定義及び経営資源・地域経 済分析のレビューを踏まえ、地域の「ヒト」「モノ」「カネ」「コト」を地域資産と定義し、地域資産を発掘し、活用、循環、 蓄積し、それぞれを連結する地域資産の蓄積性を地域再生分析のフレームワークとして整理した。これを用いて、島根県海 士町の地域再生を分析したところ、行政と地域の「ヒト」からねん出された地域の「カネ」が出発点となり、島内外の「ヒ ト」と「ヒト」の連結による地域の「モノ」及び「コト」を生かした取組が、地域外の「カネ」を流入させ持続可能な地域 再生が行われていることが明らかになった。

 

「公益」をキーコンセプトとした地域づくり
―東北公益文科大学による研究と山形県庄内地域の自治体による実践―

小野 英一(東北公益文科大学大学院)
論文要旨▼
山形県庄内地域では、東北公益文科大学による「公益学」研究と、地元自治体である酒田市および山形県庄内総合支庁に よる「公益のまちづくり」および「公益のふるさとづくり」の実践により、「公益」をキーコンセプトとした地域づくりが進 められている。研究と実践を両輪とし、「公益」という独自性を出した地域づくりである。本稿では、この地域づくりについ て事例研究報告を行う。はじめに東北公益文科大学による「公益学」研究と地元自治体による実践について整理する。そし て、東北公益文科大学による「公益学」研究と地元自治体による実践の結び付きの具体事例として「酒田市公益のまちづく り条例」の制定の事例を取り上げ事例研究する。

 

地域資源からコンセプトを創出するNPO 砂浜美術館によるサステナビリティーと価値提供

福良冴香、桂信太郎、井形元彦(高知工科大学)、村上健太郎(砂浜美術館理事長)
論文要旨▼
地域活性化は、近年、国家的にも重視されている課題であり、地域にある資源を最大限に生かしながら地域の活力を 生む取り組みが求められている。これまでの地域活性関連研究は、社会学、農業経済学、経済政策、経営学、スポーツ科学、 農業土木学など幅広い学問分野にまたがってなされてきたが、方法論はもとより用語の意味や定義も明確になっていない。 本稿では、我々が近年取り組んでいる地域との連携活動の中から、高知県黒潮町で展開されているNPO 砂浜美術館の観光系 プロジェクトについて、帰納法的アプローチによる定性分析(インタビュー、直接観察、インターンシップを含めた継続的 参加観察)の手法による調査研究について事例を報告する。

 

大学の技術シーズ実用化による地域活性化 ―弘前大学のプロテオグリカンを事例として―

野澤一博(文部科学省 科学技術・学術政策研究所)
論文要旨▼
現在日本各地において、地域経済活性化のために地域にある大学の技術シーズをもとにイノベーションの創出が図られて いる。本稿では、弘前大学を事例に大学発の技術シーズの実用化プロセスを分析した。弘前大学は県内企業と組んで国の研 究開発助成を継続的に活用しながら研究開発を進め、機能性食品や化粧品の開発に結びつけた。その開発マネジメントには 青森県も大きく寄与していた。しかし、イノベーションの価値連鎖の段階を見ると、鍵となる段階ではノウハウや販売力の ある県外企業が大きな貢献を果たしていた。今後、イノベーションを地域活性化に結びつけるためには、県内における価値 連鎖の発展と県内企業の存在感を高めることが求められる。

 

小規模自治体における、医療提供体制構築の成立要因 -北海道寿都町を事例に-

稲垣 円(慶應義塾大学)、金子 郁容(慶應義塾大学)
論文要旨▼
本論の目的は、北海道の小規模自治体において、行政組織が民間医療法人の持つ医師派遣のしくみや法人に所属する医師 が専門とする「家庭医療」を実践することで、持続的な医療サービスの提供に一定程度成功している事例として、北海道寿 都(すっつ)町を取り上げ、そのプロセスから、小規模自治体における医療提供体制の成立要因について考察することであ る。調査結果から、首長と議員が問題の解決に向け課題設定を共有していたことが、医師の派遣元である医師派遣の民間医 療法人との協働を実現した要因であることが判明した。また、寿都町は従来の医師を個人単位で派遣するしくみに頼るので はなく、民間医療法人の持つ医師派遣のしくみを活用する一方、派遣された医療従事者(医師、看護師、薬剤師、診療放射 線技師)は、診療所内での治療行為のみならず、自治体の多様な主体(行政組織、地域組織、住民等)への働きかけや主体 間の調整などの役割を果たしていた。また、医療従事者の働きかけに沿った行政や地域組織、住民の協力も重要であること がわかった。

 

大学との連携による地域振興 ―福島県会津若松市の事例―

梅村 一晃(稲沢市役所)
論文要旨▼
日本の数多くの地方自治体は、産学官連携に積極的であるが、成功事例は極めて少ない。会津若松市は、数少ない成功事 例である。会津若松市の成功の要因は会津大学である。会津大学が主導し、市役所と商工会議所は、支援に徹している。会 津大学は、日本で唯一のコンピュータ専門大学である。会津大学は、開学当初からベンチャー企業の育成に積極的であり、 数多くの大学発ベンチャー企業を輩出しており、会津若松市の地域振興に大きく貢献している。

 

官学協働による「まちづくり学習プログラム」の設計・運用に関する基礎研究 ―埼玉県戸田市におけるまちづくり活動への接続を視野に入れた学習プログラムの展開を中心に―

大西律子(目白大学)、富澤浩樹(岩手県立大学)、津々見崇(東京工業大学)
論文要旨▼
近年、山積する地域課題に果敢にアプローチし、その解決に向けて主体的に考え、行動していく人材を養成する「まちづ くり学習」の動きは各所で盛んになっている。しかし、学習と実際のまちづくり活動との「接続」には多くの課題もあり、 研究知見もほとんど蓄積されていない。本研究では、学習と活動の接続の観点から、1)著者らが埼玉県戸田市と協働で設 計・運用した「まちづくり学習プログラム」を対象に、実際の設計から運用までの工程と内容を体系的に明らかにし、2) 実証実験によって得られた定量・定性データに基づいてその評価及び課題を検討することを目的としている。最終的には、 当該プログラムが一定の運用条件下において、まちづくり活動との有機的接続に有用であることが明らかとなっている。

 
事例紹介

伝統的工芸品産業の生き残りに向けた取り組み ―有松絞り染めにみる明治期と現在の比較検討

アンニサ・アニンディタ、江川 緑(東京工業大学大学院社会理工学研究料)
論文要旨▼
工芸品の生産をささえる職人・伝統工芸士の高齢化が進み、産地では技術の継承やこれら地場産業の活性化が大きな課 題となっている。本稿では、愛知県の地場産業である有松絞染を取り上げ、その生き残りの現状を歴史的視点から検討し、 今後の課題に検討を加えたい。本研究は、有松絞染の歴史と技法を紹介したうえで、尾張藩の庇護が失われその苦境のなか で生き残りに苦戦した明治期の取り組みを整理する。ついで、近年の新たな取り組みを明治期との比較の視点から検討し、 伝統産業の抱える課題と今後の方向性に検討を加えることを目的としている。

 

サンブスギの化学的成分分析による地域再生の可能性に関する研究

森田直之(千葉大学)、足立真理子(千葉大学)、中込秀樹(千葉大学)
論文要旨▼
千葉県山武市では古くからサンブスギという挿し木在来種である杉を二段林という独特な造林法によって生産し てきた。しかし、近年、非赤枯性溝腐病が蔓延しており、その病木処理が急務である。私たちは建材として流通 しにくい病木に新たな付加価値を見出だすためにサンブスギの廃棄される葉から放出される化学的成分を分析す ることによって、サンブスギの持つ付加価値を模索した。化学的成分について季節を追って調べることにより、 サンブスギから放出される化学的成分から林業再生、地域再生の可能性を見出すことを試みた。

 

コンテンツ観光に基づく地域活性化の新展開

軍司聖詞(早稲田大学)
論文要旨▼
本研究は、コンテンツ観光客の受け入れが全国各地に広がりつつあるこんにち、この新展開として現れはじめているとこ ろの、民間機関が自治体に代わり、この受け入れをはじめた事例を考察した。また、民間機関が独自に受け入れを行う際に 懸念する、自治体等の後援を受けられない場合に長期的・継続的な受け入れを行えるかについて、これを達成している事例 を考察し、自治体等の後援がなくとも長期的・継続的な受け入れは十分に可能であることを明らかにした。また、受け入れ の先駆的地域の新展開である、コンテンツ観光関連施策が他の施策に影響を与えはじめた事例についても考察を行い、コン テンツ観光関連施策の多面的機能について明らかにした。

 

事例研究に基づく浜松地域における産業競争力強化のための
オープン・イノベーション政策への提言

江馬正信(浜松市役所)、鈴木康之(静岡大学)
論文要旨▼
ものづくりのまちとして発展してきた浜松地域は、企業の海外進出の増加、生産の減少、事業所・従業員数の低下が 急激に起こっており、地域経済は低迷しつつある。本研究は、地域企業の競争力強化のため「はままつ産業イノベーション 構想」の重要戦略の一つであるオープン・イノベーションの推進について、他地域の事例研究を伴う調査検討を行い、この 手法を取り入れた次世代型産業振興施策の構築を目指すものである。

 

歴史と文化を活かした地域・まちづくり ―岐阜県土岐市土岐津町高山地区の事例報告―

益川浩一(岐阜大学)
論文要旨▼
人びとが活き活きと暮らすことのできる地域・まちを創成していくには、どうすればよいのか。本稿では、岐阜県土 岐市土岐津町高山地区における歴史と文化を活かした地域・まちづくりの取り組みを事例として検証する。 高山地区では、地域住民が、「高山城高山宿史跡保存会」を発足させた。高山城や高山宿等の歴史・文化と自然の大切さ を次世代に継承していくとともに、これらの地域資源を活かして観光交流人口の増加を目指し、子どもたちが自慢できる 活力あるふるさとを創出すること、さらには、歴史と文化を「シンボル」として、人と人とのつながり、あてにしあてに される人間関係、「絆」=ソーシャル・キャピタルを地域・まちに蓄えていくことを目的として、活動を進めている。

 


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地域活性学会 事務局(寺尾・堀本)
高知県高知市永国寺町6番28号 高知工科大学 地域連携棟4階
社会マネジメントシステム研究センター内
TEL:088-821-7211

学会事務局新代表メールアドレス:info@chiiki-kassei.com

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