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|研究論文集「地域活性研究」Vol.7(2016年3月発行)


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~ 目次 ~

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研究論文

首都圏における女性起業家に関する一考察-支援者から見た創業期の女性起業家の行動特性

柴田仁夫(埼玉学園大学経済経営学部専任講師)
論文要旨▼
本稿では創業期の女性起業家の行動特性を、支援者の視点から明らかにした。これまで女性起業家は地域に密着した事 業を行うため、その活動範囲は狭いと考えられてきた。しかし支援者に対するインタビュー調査から、創業期の女性起 業家の中には、居住地以外で開催されるセミナーなどに参加して情報収集を行う者がいることが分かった。こうした女 性起業家の行動は不足している経営資源を補うために経営情報のハブとなっている公的支援機関や支援者とのネットワ ークを意識的に広げ、弱い紐帯を築くためであると考えられる。ただし、こうした女性起業家の行動は、2 時間程度で 他地域への移動が可能な首都圏に独特のものであると推測できる。

 

地域に対する潜在的ネガティブステレオタイプと顕在的態度の関係性 -東北地域を事例として-

林靖人(信州大学)
論文要旨▼
本研究は、地域に対する潜在的ネガティブステレオタイプの存在を仮定し、それら保有者において地域産品の購買意向や地 域コミットメントの顕在化(態度表明)がどのように生じるかを検討したものである。東北地域に対する潜在的ネガティブ ステレオタイプを想定し、潜在連合テスト(Implicit Association Test:IAT)を用いた実験を行った。東北に対するネガ ティブな概念結合を示すD スコアを低群と高群に分けて比較を行った結果、低群ではネガティブステレオタイプが存在しな いが、高群では強いネガティブステレオタイプが存在することが示された。また、D スコア高群は顕在的な態度表出におい て、地域への強い愛着や他人任せにしない主体的な地域コミットメントを強調する特徴が示された。

 

DSM と CMM を用いた地域活動のつながり可視化・構造化モデルの提案

保井俊之*1, 坂倉杏介*2, 林亮太郎*3, 前野隆司*1
*1慶應義塾大学 大学院システムデザイン・マネジメント研究科
*2東京都市大学 都市生活学部
*3慶應義塾大学 大学院システムデザイン・マネジメント研究科 附属SDM 研究所
論文要旨▼
本研究は、自己組織的地域活動団体 (SoRA 団体) における参加メンバー間のつながりの深化並びに組織としての成熟 性を、システムズ・エンジニアリングの手法であるDesign Structure Model (DSM)とCapability Maturity Model (CMM)を使い、 「地域活動DSM-CMM モデル」(RAD モデル) として可視化・構造化するモデルを提案した。次にこのモデルの地域活動の 可視化・構造化への有効性を地域活性化の先進3 事例で、メンバー間の外面的関係性及び内面的関係性の両面に分けて実証 分析した。以上により、SoRA 団体のメンバーの関係性向上と組織の成熟は、内外両面でのメンバー間の関係性の向上とし て定量的に可視化・構造化されること、そして特に地域活性化の先進事例では、メンバー間の内面的関係性の向上が図られ ていることを示した。

 
研究ノート

乾杯条例を活用した地域創造に関する研究

井上和久(早稲田大学)、堀彰穂(京都府立大学)、友成真一(早稲田大学)
論文要旨▼
地域文化である日本酒の普及を推進し、地域創造に寄与することを目指す乾杯条例が自治体により制定され始めている。 乾杯条例は、京都市において2013 年において制定されたことを皮切りに増加の一途を辿っている。こうした背景には、日本 酒の消費量の減少により、地域産業である清酒事業者が休業・廃業に追い込まれていることがあげられる。本研究では、乾 杯条例を活用した地域創造の実態を明らかにすることを研究目的とする。乾杯条例に関係する地域の問題意識を検討し、日 本酒を活用した地域創造事例の分析を行った。その結果、乾杯条例を契機として、地域における連携が促進される可能性を 有していることを明らかにした。

 

地域のリーダー人材育成に向けたカリキュラム開発および実施効果の検証
―信州大学地域戦略プロフェッショナル・ゼミの実践―

白神 晃子・林 靖人・松浦 俊介・新 雄太(信州大学地域戦略センター)
福島 万紀(都留文科大学)
論文要旨▼
本研究は、Community-Based Participatory Research の原則に基づき、中山間地域に暮らす高齢農家の健康の維持・ 増進という課題解決に取り組んだとき、住民の健康状態や生活の質はどのように変化するのかを明らかにする。そのた め、研究者は住民と看護学生の社会的ネットワークをつくる働きかけを行った。住民は、看護学生と協働して「食・緑・ 健康」に関する地域づくりを行い、研究者や専門職はそれを支援した。3 年間の地域づくり活動における身体・社会的 健康指標の変化を分析した。その結果、住民と学生の社会的ネットワークを通して住民の社会的な健康度は増進した。 併せて、住民は身体の良好な健康度を維持した。高齢者の主体的な社会参加の有用性が示唆された。

 

中山間地域の自動車生活を支える地域イノベーション-ガソリンスタンドの過疎地域における安全運転の啓発及び自動車メンテナンス活動による地域活性化の検討-

鈴木 誠二(法政大学大学院 政策創造研究科 博士後期課程)
論文要旨▼
「SS の過疎化」が進み、ガソリン供給や、コミュニティ拠点の問題だけに留まらず、安全運転の啓発や、自動車メンテナ ンスの対応も生活圏内から消滅させ、中山間地域の自動車生活を支える機能が弱体化している。本稿では、この問題を対策 する住民活動を導き地域活性化を検討する。検討にあたっては、SS 過疎地域である、みなかみ町藤原地区の事例を用いた。 研究により、中山間地域の自動車生活を支えるためには、基幹産業業者の結束による、燃料の安定供給を可能にするビジ ネスへの変革と、人材交流を促進し住民が担う役割を導くことであった。取組を定着させる条件は、①自動車関連サービス のフロントを、基幹産業と協業で設置すること、②安全運転への啓発を、コミュニティ活動と提携し、住民同士の啓発を可 能にする地域文化を醸成すること、③自動車メンテナンスを、コミュニティ場所で実演会での実施を開催することであった。

 

自宅で最期を迎えるための支援についての実証分析

鈴木 朋子(名寄市立大学)
論文要旨▼
地域において自宅で最期を迎えるためにはどのような支援があればよいのかという問題意識から、自助・互助・共助・ 公助に注目し分析を行った。分析の結果、以下のことがわかった。1 自宅で最期を迎えるためには、所得によって影響を受 ける、2 家族が自宅にいる状況のほうが自宅で最期を迎えやすい、3 訪問看護ステーションが整備されていればいるほど、自 宅で最期を迎えやすい、4 療養病床が整備されていればいるほど、自宅で最期を迎える人が少なくなる、5 ボランティア活動 の活発な地域ほど、自宅で最期を迎える人が少なくなる、自宅で最期を迎えるために互助を活用することは、日本人には課 題があるのではないかということである。

 

中山間地域における廃校活用の経年分析-栃木県茂木町「昭和ふるさと村」を例として-

田中 美香(東京農工大学大学院)
論文要旨▼
近年、廃校となる公立学校が全国で発生している。本研究は、中山間地域での地域資源である廃校を活用した宿泊・ 体験メニューの利用者数と売上高を経年分析し、宿泊と体験メニューの関係性を明らかにすることを目的とした。調査手法 は、資料調査・聞き取り調査・臨地調査・参与観察、だった。その結果、①木造建築の廃校を活用した民間ビジネスにおけ る宿泊の経営は、地域資源を活用した体験メニューの提供が有効、②1 人当たりの消費額を6,000~7,000 円にすることによ り利用者が増加、③開業4 年目に増改築することにより利用者が増加、④宿泊者増加は古民家が有効、を明らかにした。

 

地方議会における行政評価を利用したアカウンタビリティ改革

森 勇治 小川直紀(静岡県立大学)
論文要旨▼
本研究は1990 年代以降に広まった地方自治体における行政評価に対して、議会が関与している全国の先進事例に対する 質問票調査と我々の理論モデルの整合性について議論する。行政評価は2013 年10 月時点で全国の59 パーセントの自治体 で導入されているが、そのうちで議会が主体として行政評価を行っている自治体はわずかである。その先進的な取り組みを 行うとされる39 議会に対してアンケート調査(回答率84%)を実施し、その現状での取り組みを明らかにした。その実態 と小川・森(2012)で提唱した「行政における住民参加のモデル」を発展させた「議会を通じた住民参加モデル」とは整合 しているものの、「先進事例」においても取り組みには格差があることが分かった。

 
事例研究報告

自治体における「顧客志向」の行政サービス改革
―山形県庄内総合支庁における「おもてなし」推進の取組みを事例として―

小野英一(東北公益文科大学大学院)
論文要旨▼
山形県庄内総合支庁では、県民満足度を高めることと職員が働きやすい職場環境を創ることを目指し、これまで「おもて なし」推進のための様々な取組みを行ってきている。具体的には、2013 年度の「おもてなし推進課」の立ち上げから始まり、 「おもてなしアイデア職員提案」の募集、「ベストおもてなし課」総選挙などの「ベストアイデア賞」の決定とその実施、「お もてなし推進員」の任命などに継続して取り組んできている。本稿では、自治体における「顧客志向」の行政サービス改革 について、山形県庄内総合支庁において展開されてきた「おもてなし」推進の取組みを事例として取り上げ、事例研究報告 する。

 

地域活動や挨拶と地域への愛着に関する考察~中学生の意識調査を事例として~

亀山清美(佐賀大学大学院)
論文要旨▼
地方の人口減少・少子高齢化が進展しているなかで、子どもを地域社会で育てようとする動きがある。地域の大人が子ど もにまなざしを向け、地域の祭りや行事のなかで子どもを育てようとしている行為が、子どもの心にどのように伝わり、地 域愛着を醸成しているかを解明することが、本論文の目的である。そのために、中学生の地域活動と地域への愛着に関する アンケート調査を実施した。アンケートの分析結果から、中学生の地域活動参加は地域への愛着と関わりがあるということ がわかった。また、地域活動のほかに、地域の人々とかわす挨拶も地域への愛着と関わりがあることがわかった。

 

自治体立病院に於ける利用者拡大にむけての方策―患者対応と医療観光の試み―

宋 潔(小樽商科大学大学院商学研究科博士後期課程)、伊藤 一(小樽商科大学)
論文要旨▼
本研究は自治体立病院である小樽市立病院を対象に、病院で利用者拡大のために行われている「外来患者満 足度調査」と「メディカルツーリズム(MT と略称する)の導入」といった2 つの試みに焦点を当て調査成果を 考察した。結果、外来患者満足度調査において、医師・看護師への信頼感が患者満足度に強く影響している点 が明らかになった。また、病院の施設・設備や清潔度が患者満足度に強く影響することも判明した。特に、新 旧施設の経営業績や利用者数の比較では、病院の施設・設備が患者満足度の向上や利益の上昇、利用者拡大に おいて重要な要因である点を解明した。最後に、医療機器の稼働率を高めるためのMT(健診)導入を検討し、 導入のための事業モデル及び課題等を提示した。

 

住民参加まちづくりにおける主体形成10 ステップモデルの提案
- studio-L が支援するプロジェクトの分析を通じて -

醍醐孝典*1、保井俊之*2、坂倉杏介*3、前野隆司*1*2
*1東北芸術工科大学、*2慶應義塾大学大学院SDM研究科、*3東京都市大学
論文要旨▼
本研究では、20 の住民参加まちづくりプロジェクトを事例とし、合意形成を実現できるのみならず、プロジェクトを通じ て参加住民が主体的に公共的な活動を展開する主体形成を実現できる支援手法のモデル化を行った。すなわち、従来の合意 形成へ至る3 プロセスに加え、新たに7 つのプロセスを加えた10 のプロセスから成るモデルを構築した。また、それらの 各支援プロセスの重点化の度合いを分析することによって、主体形成を目指した住民参加まちづくりにおいては、まちづく りの類型によって、支援において重視すべきポイントの違いも見られることを明らかにした。

 

コンテンツを媒体とした地域リレーショナルシップ形成要因に関する考察
-岩手県久慈市を事例としてー

中村 忠司(一橋大学大学院)
論文要旨▼
テレビに代表される映像メディア誘発型の観光は、放送年に多くの観光客が舞台となった地域を訪れるが、放送終了後は 一気に観光客数が減少する場合が多い。2013 年に放送された『あまちゃん』の舞台となった久慈市では、放送終了後もコア なファンが持続的に同地を訪れ、積極的に地元の方と交流する現象が見られる。その理由を調査すると、SNS で知り合った 者通しでオフ会を構成し、地元の方や他地域のオフ会とネットワークを作るというネット時代の新たな地域リレーションシ ップの形が検証された。

 

自治体-大学連携による地域活性化;地域の課題解決事業

西川洋行(県立広島大学)
論文要旨▼
地方創生の推進において、地域の自治体はその主役となる存在である。大学の社会貢献活動とそうした自治体の動き が結びついた結果、地域の課題解決事業として取り組みがなされてきた。自治体等が抱える地域課題を大学との連携によっ て解決を図ることを目的とした協働事業の意義や有効性を明らかにするとともに、失敗要因を抽出して運用改善の要点を明 確にした。さらに、課題提案段階での成果活用に向けた検討が極めて重要であることや、学術的専門性がそれほど重視され ないといった地域課題解決型事業の特異な性質を明らかにするとともに、事業成果が自治体等で活用され、地域活性化や地 方創生に貢献する事業を創出するために効果的な手法・方法を明確にした。

 

協働による広域行政の成功要因 ―大阪湾フェニックス事業の分析

樋口 浩一(関西大学ガバナンス研究科)
論文要旨▼
大阪湾フェニックス事業は1982 年に広域臨海環境整備センター法を根拠に開始された近畿2 府4 県168 市と在 大阪湾4 港湾管理者による廃棄物埋立処分と土地造成を目的とした広域の共同事業である。多数の関係者の利害が輻 輳する事業であるが、これまで30 年余に亘り成功裡に運営がなされている。この間に幾つかの危機もあったが、関係 者の理解と協力の下で、当初の基本スキームを大幅に見直すことも含めて解決を図り、事業継続を確保してきた。そ こには言わばコモンズに類似した各団体間相互の規範的な関係が想定され、関係者間の共同事業の成立・維持のため の相互の互恵・協力関係が醸成されている。

 

地方老舗菓子店の競争戦略‐つるおか菓子処木村屋を事例として‐

藤科智海・新妻綾乃*・小沢亙(山形大学・*株式会社デイリー・インフォメーション)
論文要旨▼
山形県鶴岡市には、1887 年に創業し、庄内地域に計18 店舗を展開する老舗菓子店「つるおか菓子処木村屋」がある。地 方老舗菓子店の存在は、地域の雇用を創出するとともに、地域の魅力を効果的に発信するという意味で、地域経済の活性化 に影響を与えている。本研究では、木村屋の競争戦略を戦略ストーリーの概念を利用して解明する。木村屋社長、18 店舗店 長に対する聞き取り調査の結果、木村屋は、「地域を代表する菓子店」というコンセプトのもと、地域企業、まちの菓子店、 地域のお土産屋という3 つの役割を持っていることが明らかになった。独自性と一貫性の源泉となる中核的な構成要素(ク リティカル・コア)は、自社生産主義と多店舗展開である。

 

我が国の地方へのインバウンド誘致に関する研究-長野県野沢温泉村の事例から-

桃井 謙祐(信州大学)
論文要旨▼
我が国において、地方へのインバウンド誘致が課題となる中、近年外国人を集める日本のウィンターリゾート地に着 目し、野沢温泉村を事例に外国人観光客への調査を実施し、他の既存人気地域の存在にもかかわらず、外国人観光客が来訪 するメカニズムについて検討した。その結果、(1)単にスキー場や雪質のような機能的価値のみに囚われず、地元の文化や街 並み、地元の人のホスピタリティなどによるその地域ならではの経験価値の創造・訴求、(2)周辺地域との連携による情報発 信、(3)他方で周辺地域との連携による周遊ルートの開発のみに囚われず、自らを滞在拠点に大都市や人気観光地と併せて訪 れてもらう戦略、も重要であることを示した。

 

中山間地域の自治活動における広域連携活動の意義と可能性
-島根県旧赤来町の地域自治組織の差異に着目して-

竹村 佑子*1 ・保永 展利*2
*1 島根大学生物資源科学研究科地域活性化人材育成特別コース
*2 島根大学
論文要旨▼
本研究の目的は、近年、集落を超えて形成されている地域自治組織の意義とその可能性を考察することである。島根 県旧赤来町において複数の集落からなる地域自治組織を対象とした実態調査をもとに広域連携活動と既存の集落活動と の関連から考察を行った。その結果、次の点が明らかになった。(1)集落間で行う広域連携活動の項目数は2~9項目と ばらつきがあり、広域連携活動の進展度合いに違いが見られる。(2)このような広域連携の活動性の違いには、組織内に おける集落の農業条件や集落での共同性、高齢化の進展度合い、組織運営における財政的問題などが関係している。(3) 直面する課題は地域自治組織ごとに異なる。一方、地域自治組織の役員の人口構成には偏りがあり、補助金額は少なく依 存度は高い。これらの結果は、地域自治組織の活動を展開していく上では、組織活動を担う人材(雇用労働の確保)とそ のための財政的支援、町内の地域自治組織が相互に情報交流を行える場や自治組織内の集落・住民間で情報共有する場づ くりなどの他、個々の組織の条件に合わせた支援が重要であることを示唆している。

 

有機・無農薬柑橘産地の展開過程―愛媛県無茶々園の事例―

山藤 篤(愛媛大学)
論文要旨▼
無茶々園は、1974 年に愛媛県明浜町(現西予市)に設立された無農薬・無化学肥料による柑橘栽培を目指す農家グルー プである。同グループは柑橘生産を行う農事組合法人と販売組織である株式会社を併せて設立することで、独自の生 産・流通システムを構築してきた点に際だった特徴をもっている。 同グループの活動は、既に40 年以上に亘っており、かかる柑橘生産の持続的な発展に一応の成果をあげていると考えら れる。本稿は、こうした無茶々園の活動の経過を整理することでその特徴を明らかにし、今後の有機・無農薬柑橘産地 の展開について考察していく。

 
事例紹介

若者の職業選択と地方都市定着

植田 美由紀(東北公益文科大学大学院)
論文要旨▼
少子高齢社会が進む我が国では、地方の高齢化や若者の地方離れが目立ち、様々な面において都市部と地方の格 差が現れている。地方における地域の活性化には、人材が不可欠であるが、特に次世代を担う若者が地域で定着し て暮らせる条件が必要である。ひとつには職業があり、本研究では若者が職業選択の際に、何らかの職業価値観や ライフコースを決める判断基準を内包していると仮説をたて、山形県内の高等学校および四年制大学の学生を対象 に調査を実施した。結果では、学生が職業選択やライフコースの方向性に影響するものを他者から受けていること が明らかになった。またこの結果から、地域の活性化には職業と共に新たな要素の必要性が見出されている。

 

経済復興と風評被害対策―福島県いわき市の事例―

梅村 一晃(稲沢市役所)
論文要旨▼
いわき市は東日本大震災による地震と津波、福島第一原子力発電所過酷事故による放射能汚染と風評被害を被った。いわ き市は、風評被害を迅速に払拭するため、2011 年4 月9 日・10 日の2 日間開催された「オールいわきキャラバン」を初めと して、様々な事業を展開した。製造業についても復興特区に指定され、様々な支援策があるので、企業進出も活発となり、 工業団地が不足し、新たな工業団地を造成中である。

 

PFI の活用による地方自治体行政サービスの民間委託推進

岡村克彦(国際公共政策研究センター)
論文要旨▼
日本は人口減少時代に入り、過疎化と高齢化に悩む地方都市では、既存の公共施設の利用度が低くなっていく恐れが ある。国と地方の公的債務は1000 兆円を突破し地方財政の効率化は喫緊の課題となっており、高度成長期に建設した 大量のインフラの統廃合や更新投資という課題もあるため、地方自治体は行政サービスの民間委託を推進して業務と財 政の効率化に取り組んでいくべきであり、取り分けPFI(民間資金活用による公共施設整備手法)を活用していくべき である。PFI 利用のための国の制度はかなり整ってきているが、地方自治体におけるPFI の実施率はかなり低い。地方 自治体は公共事業方式に比べて経費抑制効果が大きいPFI の活用により、行政サービスの民間委託を更に進めて地方財 政の効率化を行い、地域活性化につなげていくべきである。

 

中山間地域における大学生による農業組織のマネジメントと人的資源集合

長谷達弥、桂信太郎、井形元彦(高知工科大学)
論文要旨▼
地域活性化は、近年、国家的にも重視されている課題であり、地域にある資源を最大限に生かしながら地域の活力を 生む取り組みが求められている。本稿では、我々が近年取り組んでいる地域との連携活動の中から、中山間地域における大 学生による農業組織のマネジメントと人的資源集合についての調査研究を事例報告する。

 

観光の視点による非日常性のデザインを通じた大学生の地域メッセージの発信

上総毬椰、桂信太郎、井形元彦(高知工科大学)
論文要旨▼
地域活性化は、近年、国家的にも重視されている課題であり、地域にある資源を最大限に生かしながら地域の活力を 生む取り組みが求められている。本稿では、我々が近年取り組んでいる地域との連携活動の中から、観光の視点による非日 常性のデザインを通じた大学生の地域メッセージの発信についての活動についての調査研究を事例報告する。

 

地方創生プログラムと大学の地域連携活動―大学と地域の関係性を念頭に―

木村晴壽(松本大学)
論文要旨▼
日本創成会議の人口減少問題検討分科会が、2040 年までに消滅の危機に瀕する自治体が続出するという人口動態予測を 発表した。地方の衰退が極限に達しつつある今、日本の多くの大学には地域社会に目を向け、地域課題の解決に貢献す ることが求められている。本論は、歴史的に大学と地域との連携は極めて弱いことを検証し、大学としての地域連携活 動を評価・検証する際、教育的視点・研究に関わる視点・地域活性化からの視点・大学づくりからの視点が必要である との見解を提出する。そのうえで、大学の地域連携について共通の考え方を確立する一助となるよう、地方創生に向け た具体的な、大学の地域連携活動の事例を提示する。

 

コンテンツ観光に基づく地域活性化における都道府県の役割

軍司聖詞(早稲田大学)
論文要旨▼
本研究は、コンテンツ観光客の誘致、ないしこれに基づく地域活性化における都道府県の役割とその施策のありようを考 察するため、県内に数多くの聖地自治体を有し多くの若年コンテンツ観光客が訪れている都道府県のうち、富山県と埼玉県 を捉え、その施策担当者に対してヒアリング調査を行った。調査結果から、観光施策としては、富山県は既存の観光資源に 対する施策を優先させるためコンテンツ観光施策には消極的であり、埼玉県は既存の観光資源に乏しいことから新たな観光 資源としてコンテンツ作品の舞台を捉え、積極的に施策を打ち出していることが分かった。しかしこれに基づく地域活性化 施策は、未だ十分に行われていないことが分かった。

 

福岡の人的ネットワークを活用した教育プロジェクトの“学生活性化”効果

小出 秀雄(西南学院大学経済学部)
論文要旨▼
西南学院大学教育インキュベートプログラム「福岡超大学環境ゼミナール」(ふくお環かんゼミ)は、学生の基礎能力を向上 させるために行われた、福岡の産官学民の人的ネットワークを活用した3年間の教育プロジェクトである。本研究は、ふく お環かんゼミの実施によってその取組主体である小出ゼミの学生がどの程度「活性化」されたのかを、持続可能な開発のため の教育(ESD)の視点を参考に検討する。その結果、専門である環境・エネルギー問題の深い学び、卒業論文の質の向上、優秀 な学生のゼミ参入などの成果と、ゼミ自体の出席率の低さ、社会で求められる人材像の不徹底、新規学生との交流不足など の課題が明らかとなった。

 

6次産業化における事業成長に関する研究

高屋 聡(山形大学大学院理工学研究科)、小野 浩幸(山形大学大学院理工学研究科)
論文要旨▼
我が国における農林水産業・農山漁村は、総じて、高齢化や過疎化の進展、農林水産物価格の低迷等による 所得の減少や耕作放棄地の増加、及び農業産出額の減少等により厳しい状況に直面しており、その再生・活性 化が求められている。しかしながら、地域活性化の観点からすれば、単一の農林漁業者だけではなく、6次産 業化に関与する多様な主体を捉えた取組みに注目しなければならない。さらに農林漁業者を含んだ地域全体の 所得向上、雇用の確保を達成するためには、6次産業事業の成長性が必要不可欠となる。本研究は6次産業化 を関与する主体によって分類し、その事業成長に着目して分析・考察を行ったものである。

 

総合型地域スポーツクラブの会員の非分離構造に関する一考察
-神奈川県内の総合型地域スポーツクラブ創設のための基礎調査を通じて-

難波和秀(高知工科大学大学院工学研究科)
論文要旨▼
総合型クラブの財政的自立をめぐる課題に対しては、受益者負担をすすめることが一つの方向性である。受益者負担を理解 してもらうために、サービスをする側とされる側を分けない会員非分離の総合型クラブが考えられる。会員非分離の場合、 会員は受益者としてだけではなく、提供者としての役割も担うことになり、提供者としての理解と意欲を高めることが課題 となる。この課題に対して、“地域の諸課題の解決に向けて取り組むべき内容の価値が高ければ高いほど受益者としての会員 行動を高めるとともに、提供者としての会員行動を高める”という仮説をアンケート調査で検証した結果、仮説は支持され る可能性があることが明らかになった。

 


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地域活性学会 事務局(寺尾・堀本)
高知県高知市永国寺町6番28号 高知工科大学 地域連携棟4階
社会マネジメントシステム研究センター内
TEL:088-821-7211

学会事務局新代表メールアドレス:info@chiiki-kassei.com

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