事例報告 |
〇 | プロスポーツチームと自治体の公民連携の一側面 - Jリーグクラブと自治体間の協定の事例 -
菅 文彦(大阪成蹊大学)
論文要旨▼
近年、自治体と企業や大学間での公民連携の事例が増加する中、連携対象としてスポーツ関係機関・団体にも期待が寄せ られている。本論ではJリーグクラブと自治体間の協定事例の存在に着目し、その概要や内容を明らかにすることを目的と した。協定事例は36 件が抽出され、協定内容は「スポーツ振興」が最も多く、「観光」「健康」「教育」が続く結果となり、J リーグクラブと自治体間の協定にみられる特徴が浮き彫りになった。今後の研究上の課題には、①協定の実施主体の解明、 ②Jクラブと自治体以外のステークホルダーとの関係性を視野に含めた分析視点、③協定に基づく事業の評価手法の確立が 挙げられる。
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〇 | 東日本大震災後の復興と観光 ―復興ツーリズムの事例を中心に―
小野 英一(東北公益文科大学)
論文要旨▼
観光には地域全体への様々な効果・影響があり、東日本大震災後の復興においても大きな役割が期待されている。そして 「復興」と「観光」の結合である復興ツーリズムに注目が集まっている。本稿は、東北地域の被沿岸自治体における東日 本大限災後の観光について概観したうえで、復興ツーリズムの取り組みについて、いわて復興ツーリズム推進協議会および ふくしま観光復興支援センターの事例を取り上げ、事例報告を行う。
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〇 | 地域再生マネージャーグループによる連携活動事例とその効果
難波江 任(愛媛大学地域再生マネージャー・アカデミー)
論文要旨▼
我が国では、近年、自治体や教育機関が主体となって、地域再生を進める人材の掘り起こしや人材育成の取り組みが活発 になってきている。そのような状況下、愛媛大学が実施した社会人学び直しの講座修了者が集まり新たな組織を形成し、そ の組織を核として学び直しの継続や会員間の情報交換、事業連携、新事業構築、新商品開発など、会員相互協力による地域 活性化の取り組みが進められている。本論では、この活動事例を検証・分析することで、当該活動の効果と課題および、今 後の地域再生活動の課題解決や活動促進のための政策提言につなげることを目的とする。
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〇 | 日本の農村社会における地域社会サービス事業の実施および地域活性化の可能性 - メキシコにおける地域社会サービス事業の視点から -
安部 雅人(東北大学)
論文要旨▼
本研究は、メキシコ国内において国公立大学における教育プログラムとして法制化されて長年実施されている「地域社会 サービス事業」に着目している。そして、実際にメキシコの国立工科大学(IPN: National Polytechnic Institute)による「地 域社会サービス事業」の各種プログラムについての現地調査をもとに考察し、その特質を明らかにしている。 その上で、日本の農村社会の「過疎化問題」に対処するためにメキシコにて「地域社会サービス事業」の一環として実施 されている「ソーシャルワーク教育」を教育カリキュラムとして採り入れて「日本版地域社会サービス事業」として実践し た場合、メキシコと同様に日本の農村社会における公共福祉サービスの向上や地域活性化等と共に若者の地域定着・還流に も貢献できることを示唆している
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〇 | 「おやじの会」の実践コミュニティ的特徴
小出 秀雄(西南学院大学経済学部)
論文要旨▼
小中学校などの保護者・OB が自主的に集い活動する、いわゆる「おやじの会」は、学校のPTA(父母教師会)や高齢化が 進む地域団体ができない活動を、独自にあるいは協働で行っている。本報告では、福岡市立百道(ももち)小学校のおやじ の会である「松葉の会」と同小PTAとの協働関係を事例として、実践コミュニティの枠組に基づき、おやじの会の特徴を明 らかにする。特に、実践コミュニティのキー概念の一つである多重成員性に着目し、おやじの会と本業(職場)、あるいはお やじの会と他の地域団体と本業との関係性についてふれる。
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〇 | 再生古民家が人を惹き付ける理由
菊森 智絵(関西大学大学院ガバナンス研究科)
論文要旨▼
近代化が私たちの生活を便利にし、豊かにする時代において、近代化によって取り壊される日本の伝統的な建築物 である古民家への関心も高まっている。古民家をリノベーションし、現代的な味付けを施された再生古民家は芸術的な要 素や店主などの感性が表れた要素を加えられることによって、私たち日本人の心のどこかに訴えかける魅力がある。その 魅力は「ほっこり」という言葉で表現されるのではないか。
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〇 | 週3日労働普及による地域活性化
山中 鹿次(NPO法人近畿地域活性ネットワーク)
≫ 論文要旨▲
近年、少子高齢化が進む中で、2017年で全国平均で有効求人倍率が求人1に対して、1,5を超過する状態が続いている1)。また一方で、産業ロボットや人工知能の急速な普及、いわゆる仕事のAI化が進み、車の自動運転が普及し、タクシー運転手の仕事が無くなるといった形で、大量の仕事が失われる懸念もある2)。 人手不足と失業という相矛盾する将来の課題対策と、併せて週3日労働の普及を提案するものである。
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〇 | 鬼ごっこ協会公認指導員・審判員の地域活性化への取組の事例報告 ~多様なステークホルダーとの協働によるイノベーション~
平峯 佑志(一般社団法人鬼ごっこ協会)
≫ 論文要旨▲
鬼ごっこ協会は、団体ビジョンとして「鬼ごっこのある町づくり」を掲げている。日本古来の伝承鬼ごっこやオリジナル 開発したスポーツ鬼ごっこの普及を担う人材育成制度の仕組みとして、公認ライセンス制度を創設している。スポーツ鬼 ごっこや伝承鬼ごっこの各地域社会への普及活動を担っているのは、日本全国にいる公認ライセンス保持者であ る。公認ライセンス保持者は、地域社会における地域活性化の担い手として、地域の多様なステークホルダーと のイノベーションを起こしているイノベーターとしての側面も持っている。本論文では、その根拠について様々 な事例やデータを用いて明らかにしていきたい。
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〇 | よりインクルーシブなコミュニティを目指して:アールブリュット(アウトサイダーアート)の可能性を探る - 平塚市、横浜市、東京都中野区のまちなか展示事例から -
楠田 弥恵(横浜市立大学都市社会文化研究科)
≫ 論文要旨▲
「アールブリュット(アウトサイダーアート)」とは、アートの伝統的な教育を受けずに内在的なパワーによって作品を作り 上げる人々の芸術を指す。知的障害を持つ人々の中にも、個性的な作品を創作するアーティストが多数存在する。知的障害 者は、言語によって自分の気持ちをうまく表せないことも少なくないが、障害の有無にかかわらずコミュニティの一員とし てその力を発揮する場が必要なのは、みな同様である。コミュニティとの接点は、労働の場、生活の場、イベントの場など、 さまざまな場が想定されるが、本論では、言葉に拠らない心の表現という点に注目して、アート活動を取り上げた。町の通 常スペースを利用して、アールブリュット作品を紹介し、よりインクルーシブなコミュニティ構築に尽力している平塚市、 横浜市、東京都中野区の事例を分析し、その共通項を探究することが本論の目的である
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〇 | 世界が日本を訪れる『和文化ナイトタイムエコノミー』の多様性と地域活性の試み
西田 尚司(一般社団法人癒愛道)
≫ 論文要旨▲
訪日外国人旅行者が夜の時間帯に安全で安心して楽しめる体験型アメニティ『ナイトタイムエコノミー』(夜の経済活動 圏)が日本に不足している。日本が観光大国になるには、ナイトタイムエコノミーにおける課題解決は重要な意味がある。 日本のナイトタイムエコノミーの先行研究事例は極めて少ない。この新しい分野の学際の研究として、日本のナイトタイム エコノミーの先行事例と観光大国フランスの事例、禅を活用した『和文化ナイトタイムエコノミー』(筆者造語)の多様性 が地域活性に貢献するアクションリサーチ研究について論ずる。
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〇 | 航空交通を活用した産学官民連携による地方創生への取り組み - 徳島阿波おどり空港における事例 -
服部 大輔(島根大学 地域未来協創本部)
≫ 論文要旨▲
航空交通は、最速の移動・輸送手段であり、地方空港は地域活性化のための大きな潜在価値を持っている。徳島県では、徳 島阿波おどり空港を拠点として、産学官民が連携し様々な活動が行われている。平成 26-27年に 2つの産学官民からなる 協議会が創出され、航空需要創出のための県内調査、マッチングフォーラム、FAMツアー、空港におけるアクティブディ スプレイ設置、省エネ診断、カーボン・オフセットが実施された。航空交通の分野では、産学官民連携はまだまだ進んでい ない。今後、地域ステークホルダーが協力し空港を地域の拠点として強化するとともに旅客や貨物の新たな需要を創出して いくことは地域の大きな活力になると考えられる。
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〇 | マチオコシ実施者から見た主体形成について
坂田 真一郎(一般社団法人 WIB協会)
論文要旨▼
行政が仕掛けたマチオコシを体験した筆者から見た、マチオコシの主体形成などの体験を通じて実状を詳らかにし、 醍醐らが研究した主体形成10 ステップモデル提案が実施者に適当な提案なのか否かを検証した。その上で今後の 課題を4つほど示した。また、古民家再生手法や商店街の活性化、災害対策等の実施結果を報告する。
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〇 | 九州北部豪雨被災地に楽曲・映像制作を通じて向き合う -「いっちゃん好きばい」制作の記録
神本 秀爾(久留米大学)
論文要旨▼
本報告では、2017 年7月の九州北部豪雨災害を受けておこなった一連の楽曲・映像制作の過程を報告することを目的とし ている。この豪雨では、筆者の勤務する久留米大学が位置する筑後地方の朝倉市・朝倉郡杷木町も大きな被害にあった。こ のことから、筆者は前年度から学科でおこなっていた、楽曲・映像制作プロジェクトの 2017 年度のテーマに朝倉を選んだ。 制作のコンセプトは、被災はきっかけではあるが、いずれ朝倉を歌った楽曲のひとつとして浸透して欲しいということであ る。本プロジェクトが示唆するのは、地域のファンをつくることもまた、地域活性化につながる大学の地域貢献の重要な役 目であるということである。
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〇 | 韓国型地域おこし協力隊の展望と課
金 智薫(大邱慶北研究院)
論文要旨▼
大都市で失業に残留中である青年層(15~39 歳)を地方に呼び入れ、ヨソモノの視点から地域資源を活用した商品を開発す るなど、地域に活力を吹き込む政策が慶尚北道の「都市青年田舎派遣制」である。 都市青年田舎派遣制は 2017 年7 月から 始まった政策である。 分かりやすく言うと、韓国型地域おこし協力隊である。慶尚北道において、地域外の人材を積極的に 受け入れ、地域で創業(起業)活動を行ってもらい、その定住・定着を図る。その際受けることができる援助は、2年間の生 活費や創業に関する活動費で一人当たり 300 万円を支給される。金銭的な支援、自治体の積極的な広報などは強点である。 しかし、地域情報取集の悩み、ロードマップの不在は弱点である。
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〇 | コミュニティ主導による気候変動への適応策 ~長野県高森町における市田柿の事例
中村 洋(地球・人間環境フォーラム) 白井 信雄(山陽学園大学地域マネジメント学部) 田中 充(法政大学社会学部)
論文要旨▼
気候変動の影響を受ける長野県南信州の地域ブランド「市田柿」の気候変動への適応策を、コミュニティ主導により検討 した。その結果、「1 柿の栽培・加工技術の改善」、「2 生産・経営形態の改善」、「3 産地・地域づくり」に分類されるアイ ディアが出された。従来の適応策の検討は、単体の対策技術が中心であるが、本検討では生産・経営形態の改善や、産地・ 地域づくりに踏み込んだ適応策を具体化できた。本検討は、地域の適応能力を高める適応策の検討プロセスの実践例である とともに、経営や地域の課題と適応策の同時解決という、適応策の新たな枠組みを提供するものとして意義を持つ。
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〇 | 地域資源を活用したプログラミング教育の実践と報告 - 商店街を学びの場とした「まちあるきプログラミング」 -
菊地 章雄(茨城大学 社会連携センター)
論文要旨▼
2020 年度より小学校でのプログラミング教育が必修化される。しかし教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数 は6.5 台とほぼ横ばいで、ICT 機器の整備は進んでいない。本研究ではパソコンを使わないアンプラグドのプログラミング 教育として茨城県笠間市および石岡市で実施された「まちあるきプログラミング」を取り上げる。「まちあるきプログラミ ング」は、自分たちの町をより深く知るとともに、町の仕組みを分解し、自分たちの生活との関わり合いに気付くことが出 来る。アンプラグドのプログラミング教育は注目されているも、指導方法が確立されていないため、本報告は数少ないアン プラグドのプログラミング教育の報告であろう。
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〇 | イノベーションおよび高付加価値化を志向した地域中小企業と大学の共同研究開発
内山 大史・工藤 裕介(弘前大学)
論文要旨▼
人口減少は我が国が抱える大きな課題であり、地域活性に取り組むうえで、重大な阻害要因となっている。政府が主導す る地方創生は、戦略に基づく多様な観点からの取組みがなされている。地方に対しては、その地域資源を活用しながら地域 特有の課題に主体的に取り組むことを要請しており、国立大学法人においては、機能別分化の考えに基づき、3類型を示し た結果、地方大学の多くは「地域貢献」型を自ら選択した。大学は地方創生に主体的に関わる地域資源であるという認識は 既に一般的となっている。本報告では、国の政策を概観したうえで、特に「ひと」と「しごと」の循環を意識した、地方国 立大学法人の取り組み事例について述べる。
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〇 | 花の領域における農業経営体の成長プロセスに関する一考察 - 愛知県渥美地域を事例に -
松下 昌史(法政大学地域研究センター)
論文要旨▼
花は、国際競争力の高い農業品目だと言われている。しかしながら、国内の花の生産は他の農業品目同様に低迷して いる。一方で、個別の経営体に着目するならば、成長・発展を遂げている経営体も存在する。そこで、本報告では、花の領域において成功事例とされる複数事例の分析を通じて、その成長・発展のための条件を導くことを目的とする。
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〇 | 大学における家具・家電等リユース活動を合理化してみた(社会実験) - 筑波大学「3E EcoCycle(エコサイクル)」の軌跡 -
山本 泰弘(青年シンクタンクRHO)
論文要旨▼
大学周辺に下宿する学生等には、家具・家電等のリユース(転出者が手放し、転入者が取得する)のニーズがある。それ に対して、学生団体等によるリユース活動(転出者から品物を引き取り、転入者に提供する)が行われているが、労働集約 的で非効率な点が問題である。 そこで筆者らは、費用対効果を追求したリユース活動の仕組みを考案し、実証実験を行った。実験においては、①集積拠 点を設けユーザーに取扱品を運搬させる、②学生サークルとの取引により労働力を調達、③一般のブログサービスを活用し た情報発信・応募受付などの工夫により合理化を実現した。 この知見は、循環型社会の推進および学生の就学費負担の抑制に資すると期待される。
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〇 | 異文化交流ワークショップ「秩父音頭から Chichibu Ondo へ」活動報告
岩垣穂大(早稲田大学人間総合研究センター)
鈴木大介(早稲田大学人間科学部)
齋藤 篤(早稲田大学人間科学学術院)
Kadikova Samal(アル ・ ファラビカザフ国立大学)
Amantay Zhanar(アル ・ ファラビカザフ国立大学)
Yem Natalya(アル ・ファラビカザフ国立大学)
扇原 淳(早稲田大学人間科学学術院)
論文要旨▼
埼玉県皆野町は平成28 年より「皆野町まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定し,秩父音頭まつりを通したまちづくりに取り組んでいる.今回,地元の中学校や教育関係機関と連携し,秩父音頭を含む郷土の歴史・文化について深く学び,留学生や大学生との協働によって,新しい価値を創造する異文化交流ワークショップを開催した.各参加者がそれぞれの立場で秩父音頭の魅力を再発見し,皆野町の歴史・文化を分かりやすく,かつ魅力的に発信するため,秩父音頭の新しい歌詞や囃子言葉を提案した.今後も,地域や教育行政と連携したまちづくりの取り組みを継続していく.
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〇 | 地域課題解決を企図した地域ゼミ「西京銀行PBI」の実践と教育効果
中嶋 克成(徳山大学)
論文要旨▼
本学(徳山大学)は、"地域に貢献できる人材の育成"をめざして、地域とともに地域問題の解決に取り組むべく、研 究体制の充実と教育の改革を進めているところである。そこで学生が主体となって地域の身近な問題を見つけ、その解決に 向けて調査・分析から解決策の提示までを行う(課題解決型学習)、「地域ゼミ」を2年次に必修科目とした。その地域ゼミ テーマの1つに、㈱西京銀行・地域連携部の提供する「西京銀行課題解決型インターンシップ」がある。この中で山口の課 題の調査・旅行企画・発表を行うことになっている。コモンルーブリックを用いこの学びを評価したところ、本PBI は学生 の「課題対応力」に対して良好な教育効果を持つことが推測された。
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