●地方の小規模企業者を廃業から救う仕組みの構築と実践 ~株式会社ノトツグを事例として~
友田 景・山中 裕子 (株式会社ビズデザイン大阪)
論文要旨▼
深刻な人口減少と産業衰退が進行している能登地域で、小規模企業の事業継承を行う株式会社ノトツグの取り組みを報告す る。ノトツグは、地方に若い経営者を増やすことをKPIとして、民間の力を結集させてネットワークを築きながら廃業問題 に取り組み、複雑な要素が絡み合う地域の産業活性化を目指す株式会社である。本論の事例研究から、地方の産業を持続さ せるために重要な点として、組織間の契約締結などに基づく裏打ちされた関係性において少人数で力を結集させること、関 係する主体が目的や目標を十分に共有していること、行政主導ではなく民間主導で補助金・助成金等に依存しないキャッシ ュフローに基づいた自走可能な活動を構築することが示唆された。
●J リーグシャレン!(社会連携活動)における新たな市民協働の試み - FC東京「TOKYO SOCIAL COLLABORATION」の可能性を市民協働の観点から -
橋本 佳明(法政大学大学院 政策創造研究科) 上山 肇 (法政大学大学院 政策創造研究科)
論文要旨▼
Jリーグ、JクラブはJリーグシャレン!(社会連携活動)取り組みを推進している。本研究では、Jリーグ全60クラブ のシャレンの実態を分析することにより、その活動内容の傾向を明らかにする。さらに、ファン・サポーターがシャレンに 主体的に関わる市民協働の取り組みに着目し、FC東京が2024年よりスタートさせた「TOKYO SOCIAL COLLABORATION」の取 り組みを事例として、その目的、戦略、ポジション、ゴール、組織形態、運営、コミュニティ、活動実態などを検証するこ とにより、従来のシャレンの枠組みを超えたファン・サポーターによる自律・自走し、永続可能な社会貢献に資する新たな 市民協働の取り組みの可能性を明らかにした。
●研究シーズ紹介における対面実施およびオンライン実施の比較研究 ―島根大学「技術コミュニティラボ」の実践事例―
服部 大輔(島根大学 地域未来協創本部)
論文要旨▼
島根大学では、地域企業と大学の交流を目指した少人数・双方向性の研究シーズ紹介とライトニングトーク(LT)をあわ せて「技術コミュニティラボ」と称し、これまで対面とオンラインで開催してきた。本研究では、技術コミュニティラボの 対面開催とオンライン開催における参加者数、後日面談数、共同研究受入額などを比較し、地域企業との連携への効果の違 いを明らかにすることを目的とした。参加者数と後日面談数は、少人数・双方向性の研究シーズ紹介では有意差はなかった。 一方、LT では対面開催の方が多かった。共同研究受入額は、対面開催では、少人数・双方向性の研究シーズ紹介の平均値が 約86万円、LT の1回目の合計値が260万円だった。一方、オンライン開催では、いずれも0円だった。
●関係人口と地域住民が紡ぐゆるやかな繋がり -共食を通じた大垣市御殿町自治会の再活性化-
論文要旨▼
本研究は、高齢化による自治会の弱体化を再活性化するため、地域住民のみならず新たな地域の繋がりを構築し、新しい 自治会の可能性を探求することを目的とする。中心市街地に位置する大垣市御殿町自治会を対象に実施した共食イベントを 通じて、地域住民と非居住者が自然に交流し、多世代間の連携やゆるやかな繋がりが形成されていくことが参与観察から明 らかになった。有志による柔軟な実行委員会の活動は、地域活動への心理的ハードルを下げるとともに、住民同士の信頼や 相互扶助の強化に寄与した。また、住民の主体的な課題解決と、多様な背景を持つ自治会地域外の人たちとの協働が、地域 の活力を高めることを示した。本研究は、他地域への応用可能性を視野に入れ、新たな地域の繋がりの在り方を提示するも のである。さらに、共食を通じた柔軟な交流が自治会の役割を再構築し、地域全体の協働意識を醸成する可能性を示した。
●2次元アイドル作品におけるツーリズムおよび交流に関する一研究 ―『IDOLY PRIDE』、『THE IDOLM@STER MILLION LIVE!』の各ファンを対象としたアンケート調査から―
平林 柚葵(法政大学大学院 政策創造研究科)
論文要旨▼
2次元アイドル作品におけるコンテンツツーリズム研究では『ラブライブ!サンシャイン!!』を事例とした研究が 多くみられる。しかし、他の2次元アイドル作品でも、地域振興や関係人口の創出などにつながる可能性がある取組みが進 められている。本研究は、2次元アイドル作品のファンが実践している観光、消費、交流といった行動を明らかにすること を目的に2作品を取り上げ、アンケート調査と参与観察を行った。その結果、2次元アイドル作品のファンは聖地で音楽を 活用した体験を求めていることや、コラボイベントでは等身大パネル撮影をするファンが多いこと、ファンの間では名刺を ツールとした交流が行われていることなどが明らかになった。
●しまなみ未来社会人材育成プラットフォームによる地域共創型リカレント教育の展開
正本 英紀(愛媛大学 地域協働推進機構)
論文要旨▼
愛媛県今治市と広島県呉市において、Town&Gown構想を推進するため、産学民官金連携による地域共創型リカレントプロ グラム開発のためのプラットフォームを構築し、合わせて23会員の加盟を得られた。これと併せて、経営者や管理職、あ るいはNPO理事等の候補者を対象としたパイロットプログラムの開発及び先行実施を行ったところ、愛媛県・広島県内外か ら20名の正規受講者を得ることができた。
●地域おこし協力隊インターンシップを活用した大学生と行政職員の協働実践に関する研究-北海道音威子府村での実証を通じて-
横山貴志(北海道科学大学、前・音威子府村役場)
論文要旨▼
北海道で最も人口の少ない音威子府(おといねっぷ)村では、年から年間、都市圏の大学生との協働まちづ くり事業を実施し、年から派生事業として地域おこし協力隊インターンシップ制度を活用した大学生と若手行政職員 との協働まちづくり試行を行っている。地域外から若者が訪れ滞在し活動することでの地域への効果は、移住定住や関係人 口創出だけではない。インターンシップ受け入れを、若手行政職員の資質向上にもつなげることを意識し実証を行った。地 域に関心のある大学生と、地域で仕事をする職員とが同じ目線で協働することができる事業構想と試行・実証の積み重ねか ら、職員資質向上が見えつつあるとともに、地域内外との交流は小規模自治体でもさまざまな可能性があることが見えた。
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