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|研究論文集「地域活性研究」Vol.21(2024年10月発行)目次


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~ 目次 ~

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学術研究論文

 

●市町村の人口問題に関する一考察 ―政策視点に基づく北陸3県の事例分析―

青木卓志(金沢星稜大学)

論文要旨▼
多くの地方圏では、人口減少や少子化・高齢化が進んでおり、自治体側としても、そうした状況にどのように対応すべきがが、政策的にも重要な課題となっている。そこで、本稿では、北陸地方に市町村を対象に、主に国勢調査に基づく各種数値を基に、人口政策の推進やその向上のための基礎分析として、北陸の市町村人口に関する相互関係性等についての各種分析を行った。結果としては、市町村間での関係性に各県ごとに違いが見受けられたり、その関係性が時系列上で変化していたりする等の特徴が見受けられた。また、3県全体での分析では、(内在している)課題等を踏まえた類似性が、人口規模が異なる市町村でも同じ傾向の場合がある点等も判明した。
 

 

 
 

●基礎自治体間で生じる生産年齢人口に圧し掛かる負担の差異に関する考察

大久保 武(愛媛大学大学院地域レジリエンス学環)
 
論文要旨▼
本研究は、わが国の基礎自治体が直面する人口減少と高齢化問題に焦点を当て、特に生産年齢人口に対する負担について、老年人口指数と老年化指数を用いて検証している。人口規模別に基礎自治体を比較した結果、小規模な基礎自治体間で負担の大きさに差異が存在し、その差異は今後も拡大する傾向にあることが明らかになった。また、生産年齢人口に対する負担が将来的にも低くなる正のスパイラル状態にある基礎自治体について検証したところ、それらの基礎自治体では早期から地域の特性を活かした持続可能な発展戦略に基づいて取組が行われているという共通点が見られた。
 

●地域活性化における移住者と地元出身者の相互変容に関する研究 ― 島根県海士町を事例に ―

     大野佳祐(AMAホールディングス株式会社)・坂倉杏介(東京都市大学)

 
論文要旨▼
現在、我が国では地方部の衰退が深刻化している一方で、都市部では若年層の地方部への移住・定住への関心が高まっている。今後、人口減少の進む地方部では、移住者と地元出身者が立場を超えて共創的な関係を築くことが重要である。本研究では島根県隠岐郡海士町を事例に、移住者と地元出身者の間でどのように共創的な関係が構築されるのかを明らかにするために調査・分析を行った。その結果、共創的な関係を構築していく上で、①移住者と地元出身者では地元出身者の変化がより複雑に推移すること、②移住者にとっては自然発生的に現れる「指南役」の機能が重要であること、③変容過程で双方に役割や特徴の捉え直しが起こることが明らかになった。

 

 

●市町村合併の規模が学校統廃合に与えた影響に関する実証分析

                                    鈴木宏幸(高崎経済大学大学院博士後期課程)

 
論文要旨▼
少子化の進展を背景に学校統廃合の必要性が高まっている。そのなかで、市町村合併が学校統廃合を進めるか否かについて議論が重ねられてきたものの、十分な検証がなされてきたとは言い難い。そこで本研究では、市町村合併が学校統廃合に与えた影響について実証分析を行った。推定結果からは以下のことが明らかになった。①市町村合併の規模が大きいほど小学校は統廃合が進むことが認められたが、中学校はそうではなかった。②市町村合併に伴う財政優遇措置が変更されるタイミングに駆け込みで合併した市町村は、小学校も中学校もともにその数を増やしていた。また、③合併経過年数は学校統廃合と関係が見られなかった。

●全部過疎化・一部過疎化する地域住民におけるウェルビーイングと来訪者との交流の構造
-新たなヘルスツーリズムの構築に向けてー

                                                                髙橋伸佳,那須清吾(高知工科大学大学院)

 
論文要旨▼
超高齢社会の本格的な到来により、労働力不足、医療・介護費の増大が一段と深刻になっている。コミュニティの維持や人の結びつきも希薄になるなど社会資本の形成が困難になりつつある。こうした社会の一つの処方箋として、地域住民のウェルビーイング向上に貢献する観光創造を目指し、ヘルスツーリズムの原理を追求することを目的とした。つまり、ヘルスツーリズムがウェルビーイング向上に資する理論構造を明らかにする為、地域住民の幸福感の構造化を行ったものである。研究にあたっては社会マネジメントシステム学を用いて、地域住民(前期高齢者)のウェルビーイングのロジックモデル、交流に関する認知マップの図式化に取り組み、ヘルスツーリズムの導入のための来訪者との交流パターンの分類の成果を得た。

 

実務研究論文

 

住民主体の地域づくり活動における継続性に影響がある活動間の関係

             今村 智子(金沢星稜大学)

論文要旨▼

住民主体の地域づくりは、数年で活動が停滞する場合が少なくなく、一般に手探りで進められている。活動はほぼ同じ構成員により継続されていくため、継続要因を考えるにあたり、相互の関係を踏まえた解釈が必要である。本研究では、継続要因から活動のポイントを抽出し、福井県大野市の地域づくり団体を対象に、活動が継続に及ぼす影響についてアンケート調査を実施した。次に、調査結果を団体の発展段階に分け、パス解析を用い活動のポイントを体系的に整理した。結果、地域づくり団体が位置する発展段階を確認でき、課題の原因や今後の活動への影響の把握、活動の停滞要因の推測、あるいは停滞要因の解消に貢献できるプロセス図を作成できた。

 
 

●コーディネーターが介在する地域中小企業の人事機能の共創
―中間支援団体が主導する東海地域における地域の人事部の実践事例―

                              今永典秀(名古屋産業大学)、田中勲(NPO法人G-net)、

                             中村憲和(一般社団法人わくわくスイッチ)

 
論文要旨▼

地域の中小企業は、新卒採用の環境が厳しく、採用した場合も定着、成長して活躍し、企業の事業創造や社内変革に寄与する人材へと進化することには課題が存在する。地域企業単独ではなく、さまざまな関係者が共創し、地域単位で企業を支援する「地域の人事部」の取り組みが展開され始めている。そこで、本研究では、インターンシップ、採用、人材育成などの人事領域に対するアプローチを実施する中間支援団体の「地域の人事部」の取り組みに着目する。具体的には、東海地域でインターンシップや採用・人材育成領域に取り組むNPO法人G-netと一般社団法人わくわくスイッチの実践事例を取り上げる。実践事例より、採用・インターンシップ領域で、コーディネーターが介在することで、地域中小企業の課題である、採用、定着、活躍、成長へと導くための、地域中小企業が合同で実施する共創インターンシップや、入社後の若者に対する合同研修や外部人材とのプロジェクトが、実現できる点を確認できた。

 

●リスクマネジメントの視点からみた地方創生政策
-北海道上士幌町の事例からの一考察-

 

         大野 雅人 (アクサ生命保険株式会社)

 
論文要旨▼

本研究は、国土強靭化のための「東京一極集中是正政策」の一つのである「地方を活性化させる取り組み」について、筆者の経験(北海道強靭化計画有識者懇談会委員1)、北海道上士幌町SDGs推進アドバイザー2)、日本リスクマネジメント学会3)、一般財団法人リスクマネジメント協会4))をもとにした実務研究論文である。具体的には、地方創生の事例として北海道上士幌町を取り上げ、同町が持続可能な取り組みによりまちの価値を創造し、人口減少問題に一定の成果を挙げた要因をリスクマネジメント論の視座から分析することで、今後の地方創生の実現延いては国土強靭化への糸口を探求した。

 

●クロスセクター効果からみた自動運転システムによる公共交通サービスの定量的な価値の考察
―愛知県春日井市石尾台地区を対象として―
       

 

         小菅 謙次(大阪公立大学大学院都市経営研究科博士後期課程)

論文要旨▼人口減少や少子高齢化に伴う公共交通の経営状況の悪化でサービスの縮退が進む中、事業採算だけではなく公共交通サービスの必要性や価値を定量的に捉える「クロスセクター効果」による評価が実務でも進む。本稿は、昨今のドライバー不足の中で高齢者等の移動手段の確保策として期待される自動運転システムによる公共交通サービスに着目し、導入による定量的な価値を、まだ試みのないクロスセクター効果により捉えることにある。本稿では自動運転サービスを定常運行する愛知県春日井市石尾台地区の事例を分析し、自動運転サービスを実施しなかった場合やデマンドタクシーで代替した場合に比べクロスセクター効果が高くなることを明らかにした。

 

●地域の老舗中小企業と外部人材との協働に向けたコーディネーターの役割
―一般社団法人わくわくスイッチによる山二造酢株式会社の実践事例―

   中村憲和(一般社団法人わくわくスイッチ)、今永典秀(名古屋産業大学)

 
論文要旨▼

近年、社外での人材育成の需要の高まりなどの越境学習の影響から、社会人プロボノが、地域中小企業のプロジェクトに参画する意欲が増加する状況にある。本研究では、2015年から2023年の期間に、外部のコーディネーターである一般社団法人わくわくスイッチが、三重県津市の老舗中小企業の山二造酢株式会社のイノベーションの創発に向けて、社会人のプロボノに対して取り組んだコーディネートの特色と、それに伴って生み出された対象企業の事業成果の事例を明らかにした。事例より、中小企業が外部人材を活用することによる新規事業の推進への効果や、学生と社会人プロボノでは、ニーズやスキルが異なり、コーディネーターの役割や対応方法が異なることが確認できた。

 

●専門職大学における「臨地実務実習」の実践と評価
~初年次科目の実施方法の分析から~

 

                            福田 稔 (開志専門職大学 事業創造学部) 澤邉 潤(新潟大学 創生学部)

 
論文要旨▼

本研究は、専門職大学での臨地実務実習、特に初年次の科目に焦点を当て、汎用的能力とアントレプレナー

シップの育成に貢献する教育方法とその効果を検証することを目的としている。実習の結果、学生は実習先の事業活動に参画し、自らが主体的に学ぶことで社会人基礎力やアントレプレナーシップが向上したことが示された。

臨地実務実習の教育手法については、学生・企業等・教員(大学)を3極とする動的な連携の中で学生の経験知につなげていくこと、具体的には教員は学生と企業等との不断の対話を重ねていくことが必要となる。臨地実務実習は、専門職大学が地域産業社会との連携を深め、高等職業教育の質を高める基盤となる可能性がある。

●消費者行動分析に基づいた自然保護活動の観光資源化への検討-中部山岳国立公園を事例として-

                         堀 彰穂、岩永 青史、原田 一宏(名古屋大学大学院生命農学研究科)

 
論文要旨▼

本研究では、国立公園での自然保護活動を観光資源化することの可能性について、登山者へのアンケート調査を通じて検討した。分析の結果、自然保護体験の観光資源化に対し一定の需要が見込まれ、場所の認知や過去のボランティア経験が体験プランへの興味に影響を与えていることが明らかとなった。また、内的参照価格の分析から、地域の認知が体験プランの価値を高めることが示された。これらの結果は、自然保護活動の観光資源化に向けたマーケティングに資するほか、観光資源化を促進することによる財源確保や、国立公園における自然保護の活性化による持続可能な活性化に貢献すると考えられる。

 

●経営幹部から見たワーケーションの現状と課題

                                                             松田智生(三菱総合研究所)

 
論文要旨▼

ワーケーションが注目を集めてから久しいが、既往研究の対象はワーケーションの参加者が中心であった。本研究は「自らが参加するのではなく部下を参加させる立場の経営幹部」を対象に、従業員1千人以上と未満の企業規模別にワーケーションの現状評価を比較分析した。経営幹部の関心はあるものの実施率は約1割に留まり、約7割が今後普及しないという厳しい評価であった。従来のバケーションと異なる新たな目的を示したところ、地域での事業創造重視の「イノベーション型」と地域での学び重視の「エデュケーション型」の関心が高く、さらに新たな目的を持ったワーケーションに経営幹部が参加する試行事業も実施し、その関心度を把握した。

 

学術研究ノート

 

観光資源を活用した地域活性化に関する実証研究:
長崎市の魚料理は観光客の旅行満足度を高め、リピート訪問を促進するのか?

            瀬川紗菜(長崎大学)、 昔宣希(長崎大学)、 山本裕基(関西大学)  

論文要旨▼

長崎市は、2021年から「さしみ」を観光コンテンツの1つとしてアピールし、「長崎=さしみシティ」というキャッチコピーを掲げている。本研究は、長崎市の主要観光資源の一つである「魚」における長崎市旅行の満足度への影響に着目し、訪問客を対象にしたアンケート調査を通じた実証研究を行った。分析の結果、まず、長崎観光の満足度や再訪問意向に関連する要因を明らかにし、観光客が魚に関する情報を事前に受け取ることと観光満足度に統計的に有意であることを検証した。また、魚に関する情報を持つ観光客が魚料理を食べる可能性が統計的に上昇し、それが満足度とリピートに与える効果について議論した。これに基づき、結論では、長崎市における観光産業について提言を行った。

 

和歌山県のワーケーション事業における県・市町村関係と事業展開に関する研究

 

   薗 諸栄(追手門学院大学大学院経営・経済研究科)

 
論文要旨▼

本研究では、和歌山県におけるワーケーション事業の変遷に注目し、その動態を定性的に把握する。具体的には、和歌山県内の自治体に対してインタビュー調査を行い、特に各市町村がどのようにしてワーケーションの受け入れ拠点を多様化させ、地域全体に波及させてきたのかを明らかにする。研究の結果、和歌山県では段階的な導入、波及範囲と波及速度、地域の特性、地域間の協力と差別化戦略、企業と地域のマッチング、地域住民と自治体の協働、政策の柔軟性と地域振興が相まって、ワーケーション事業の受け入れが地域全体に広がりを見せていることが明らかになった。

 

非階層クラスター分析による市町村の地域分類​

  中山 雅友美、笹原 結友、和久井 直樹、武樋 孝幸(長岡高専)、佐野 淳也(神山まるごと高専) 

 
論文要旨▼
本稿では、2020年度の政府統計データを主成分分析して得られる市町村の分類軸およびクラスター分析による市町村類型の結果について紹介する。分類軸は都市の構造を表すものが得られた。さらに、類型結果を座標平面および空間へ射影し映し出すことで、各類型の広がり各市町村の位置関係が可視化され分類結果を明示的に表すことを紹介する。

 

長崎市東山手・南山手地区における案内サインを立ち止まって見る歩行者の割合の調査

                                                                                       平岡透(長崎県立大学)

 
論文要旨▼
本研究では、長崎市東山手・南山手地区の案内サインに焦点を当て、歩行者(観光客)がどの程度案内サインを立ち止まって見ているかを実際に計測する。調査は、2023年7月23日の10:00から17:00に東山手・南山手地区の4箇所の案内サインを対象に実施した。調査の結果、視認率の低い案内サインが存在することが明らかになった。また、3箇所の案内サインにおいて、視認率が8.6%から9.8%の範囲で同程度になるという大変興味深い結果も得られた。さらに、各時間帯の視認率において、12:00-13:00または13:00-14:00にピークがあり、すべての案内サインで10.0%以上となることも明らかになった。
 

 

地域に対するエンゲージメントの形成プロセスに関する研究 -小樽市のまちづくり活動を事例として-

                                                 藤本浩樹(小樽市役所)、平岡透(長崎県立大学)

 
論文要旨▼
近年、地域活性化の方法として地域ブランドが注目されている。しかしながら、地域ブランドは、多様な主体によっ て形成されるにもかかわらず、住民についての検討は希薄である。そこで本研究では、プレイス・ブランディングの視点か ら小樽市の事例を分析し、住民の地域に対するエンゲージメントの創出要因を抽出した。その結果、地域固有の歴史や文 化、まちづくり活動への参加経験、多角的視点での価値共創、行政のサポートが重要であるとの結論を得た。また、地域に 対するエンゲージメントによって、リーダーシップ行動や組織市民行動などの行動変容および地域に対する肯定的感情など の心理変化が引き起こされることが示唆された。
 
 
 
 藩札制度及びMMT理論を参考にした新たな地域通貨制度について
                         

 真殿 修治(京都芸術大学)

論文要旨▼

2000年代以降、各地で地域通貨が導入され、コミュニティの活性化や地域経済の活性化を目指したが、その効果は限定的であり、とりわけ中長期的な経済成長への寄与は不十分と考える。一方、近世の日本では藩札制度が地域経済の成長に貢献した例があり、これには現代通貨理論(Modern Monetary Theory)との共通点が見られる。この点に着目し、現代通貨理論を地域経済に適用し、地方自治体が地域通貨を発行することによって財政支出を行うプロトタイプを作成、地域通貨が中長期的な地域経済の成長に寄与する可能性について検討をした。

 

芸術祭を契機としてソーシャルキャピタルが形成されるのか
―森ラジオ ステーション×森遊会を事例に―

                                                                吉田隆之(大阪公立大学)

 
論文要旨▼

芸術祭を契機として、住民らがプロジェクト「森ラジオ ステーション×森遊会」を通し自立的に活動してきた。即ち、①一緒に作業することで、アーティスト、住民、ボランティア、行政の間で、幅広い他者一般への信頼が構築され、②「元気に、無理なく、楽しむ」というモットーで、緩やかな規範が作られた。③異質な人や組織を結び付け、ネットワークが形成され、④信頼関係、ネットワークができたことで、自発的な協調が促進され、⑤10年間活動が継続された。その結果、アート活動で生じた共同体を軸に橋渡し型ソーシャルキャピタルが形成されたとする余地がある。一方で、地域活動の点からは、地区全体の広がりが見られず形成は認められなかった。

 

 

事例報告

大阪府門真市における公民連携による「ものづくり産業」の持続的な発展に向けた取組み

                                                                                           石原 肇(近畿大学)

論文要旨▼

本報告の目的は、大阪府門真市における公民連携による「ものづくり産業」の持続的な発展に向けた取組みを明らかにすることである。「ものづくり産業」は、オープンファクトリーを実施したり、社会実験へ参画したりしている。門真市の都市計画では、『立地適正化計画』の中に「産業誘導区域」を設定している。門真市の産業振興施策では、技術力の認定や助成金の交付等を行っている。2024年3月には、『門真市ものづくり産業振興計画』が策定されている。この計画に基づき、「ものづくり産業」の持続的な発展に向け、公民が連携して取組みを今後さらに展開していくものと考えられる。

 

 

杉を活かした地域振興について
―取組事例報告と「公益学」に依拠した考察―

                                         小野英一(東北公益文科大学)

 
論文要旨▼
本稿では、杉を活かした地域振興の取り組みとして、山形県金山町および宮崎県日南市の事例を取り上げ、事例報告を行う。地域の杉として金山町には「金山杉」、日南市には「飫肥杉」がある。そして金山町、日南市はそれぞれ金山杉、飫肥杉を活かした様々な地域振興の取り組みを行ってきている。本稿ではこれらの取組事例について調査・整理・記述し、そして新しい学問である「公益学」に依拠した考察を加える。最後に今後の取り組みの課題と研究課題について述べる。
 
 

地域中小企業における新規事業の構想・立案・実施を実現する「e サイクルモデル」の有効性の立証 ― 株式会社油米のケースを通じて ―

 大西 昌子、浅井 義文、岡山 大成 ( 株式会社油米 、三重大学大学院地域イノベーション学研究科 )

論文要旨▼
伊勢市でガソリンスタンドを経営している株式会社油米では、インナーブランディングにより社内の意見調整の場と しての会議時間を確保することが可能となった。このことにより新規事業に取り組める状態を作り出し、今後も事業継続し ていく意思を固めた。ところで、問題には大別すると 2 種類のタイプがあり、それらはジグソーパズル型の問題とルービッ クキューブ型の問題であるとする。複雑な問題とされるルービックキューブ型の問題の解決方法を取り上げ、実際にその適 用が可能かを確かめることとした。試行錯誤を伴う思考体系として「e サイクルモデル」を用いて、株式会社油米において新 規事業の立案に臨んだ。作成資料や申請書類の修正と再提出を繰り返し、最終的に新規事業を開始することができた。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地方民芸館の展開と可能性―愛媛民芸館の取り組みを事例として

          梶谷 崇(北海道科学大学)・坂井 俊文(北海道科学大学)

本稿はコロナ禍にも関わらず入館者数を増加させている愛媛民芸館(愛媛県西条市)に注目し、地方における文化施設の運営事例を紹介し、考察するものである。本研究においては愛媛民芸館の協力を得て、関係者へのインタビューの機会および内部文書記録の提供を受けた。それらの言説や文書記録をもとに、愛媛民芸館の成立事情、時代背景の再整理、および現在の館の運営面における改革や新たな事業への取り組みについて情報整理を行った。愛媛民芸館は設置後約50年が経過し運営面で様々な課題を抱えていたが、2020年以降運営形態や財政面、事業において改革を重ねた結果、スポンサー等会員数や入館者数の回復や運営財政面での安定化を実現した。愛媛民芸館が地域社会とのつながりを強化し、地域活性化に向けた取り組みを展開したことが、地域社会からの理解や支援につながっていることを明らかにした。

 
地域住民主導の子育て支援の社会的意義に関する考察

黒田哲夫(八尾市)

論文要旨▼

都市部では住民間の関係性の希薄化が進行しており、地域社会から孤立して子育てする「孤育て」が生じている。本稿では子育て支援施設に着目し、子育て支援施設空白地に親子が気兼ねなく集まれる「キッズルーム・プロジェクト」を設定した。「公」である自治体と「私」である地域住民が、子育て世代を支援するという共通の目的を設定し、公と私の双方が連携・協働して子育て支援を行うことにより「公共」の涵養という課題に取り組んだ事例研究である。結論として、子育て世代は集まっては来たが、利用者間の交流は生まれず今後の課題となった。しかし、「公」と「私」による「公共」の涵養に取り組むという一定の成果はみられた。

女性が活躍する過疎農村地域の特徴とその効果
-島根県過疎地域の事例-

     品川隆博(島根県立大学大学院博士前期課程)

論文要旨▼
過疎農村地域は、人口減少により地域の担い手が不足し、高齢単身世帯や高齢夫婦世帯の割合が増加する傾向にあるため、多様な人々が関わり支え合う地域社会が求められている。本研究では、女性が主体的に活動している2地域を事例に、共通する要素及び女性の地域づくりへの関わりを明らかにする。研究方法は、筆者自身が地域づくりの実践者としてのアクションリサーチの手法とインタビュー調査により、地域づくり活動組織の特徴や、活動への女性の関わりなどを分析した。その結果、住民主体による支え合いの仕組みには、地域づくり活動組織の人材、活動プロセス、女性との協働があることが明らかになった。
 
 
中山間地域における移住者の実態と移住支援に関する研究
-和歌山県紀美野町における移住者へのインタビュー調査を事例に-
                 薗 諸栄(追手門学院大学大学院経営・経済研究科)

論文要旨▼

近年、多くの地方自治体では移住促進に向けた支援策が進んでいる。 先行研究では、移住者の意識や課題、地域振興における中間組織の役割が重要だと指摘されてきたが、地方自治体の移住支援策が移住者の定住や生活向上にどの程度寄与しているかは確認されていない。本研究では、和歌山県紀美野町を事例として、移住者と自治体や地域住民との関係、中山間地域での生活、また移住後に直面する課題や困難についてインタビュー調査を通じて調査した。調査の結果、移住者と地域住民との関係が比較的良好であることが示唆された。宿泊業や地域活性化プロジェクトを通じて、地域住民とのコミュニケーションが深まっていることが明らかになった。

 

地域づくり計画に関する大学と住民との協働プロセス​-
                                      長尾敦史(高知工科大学工学研究科博士後期課程)  

論文要旨▼

本研究では、地域コミュニティ協議会が大学と住民と協働して実施した地域づくり計画策定の事例である。計画策定前からの活動および策定期の活動における協働プロセスを報告する。

 

高齢期の顕在的ギャンブル行動
―定性調査をふまえて―

                                         福井 弘教(横浜国立大学大学院 環境情報学府)

論文要旨▼

本研究は、高齢者の顕在的ギャンブル行動の実態を行動観察法によって性差に焦点をあてて明らかにすることを目的とした。考察の結果、ギャンブル行動には、「日常」と「非日常」の側面があり、来場・来店の契機、ギャンブル行動・付随行動、そして、結果が伴う。そして、公営競技への参加はパチンコと比較すると多様な行動となり人的交流の確度が高まる。高齢者の場合、顕在的に明らかに男性参加が多く、ギャンブル行動にあたり、多くのラベル(概念)が生成された。男性が主流のリアル空間に女性が参加することは困難であると考えられる。女性のラベル数は限定されているものの、生成されたカテゴリー数にラベルほどの差はなく、潜在的な参加をふくめて、数値ほどの性差はないと考えられた。

 


地域活性学会 事務局(堀本・那須)
高知県高知市永国寺町6番28号 高知工科大学 地域連携棟4階
社会マネジメントシステム研究センター内
TEL:088-821-7211

学会事務局新代表メールアドレス:info@chiiki-kassei.com

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