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|研究論文集「地域活性研究」Vol.20(2024年3月発行)目次


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~ 目次 ~

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学術研究論文

 

●大学と地域の協働によるプロジェクト型学習のデザインと実践

澤邉 潤(新潟大学創生学部)

論文要旨▼
本研究では、地域と協働した2つの授業科目の設計・実施プロセスに注目し、大学教員の立場からPBLにおける「プロジェクト設計と計画」「実施管理」の課題改善に向けた方策を検討した。授業設計・実施の記述や学生の学習記録等を用いた質的分析によって、授業設計から実践の段階ごとに教員に求められる役割が異なることが示された。特に、全体の時間管理の観点から、授業設計段階における目標やゴール(学生の学習成果)イメージを学外関係者と共有することの重要性が示唆された。最後に事例分析の限界を踏まえ、事例の蓄積や学外関係者の視点からの分析の必要性が議論された。
 

 

 
 

●調整力を活用した地域経済循環分析の域際収支に関する研究

長屋 太樹、川口 絵美、加藤 伸之、松井 康人(京都大学)
 
論文要旨▼
これまで、地域経済循環分析の域際収支では、エネルギー代金の域外流出を低減する地域内の再生可能エネルギー(以下、再エネ)を活用した定量分析が実施されてきた。一方、再エネの大量導入に伴い、出力抑制や調整力の必要性が高まっており、本研究では、地域内の調整力を3つの用途(容量市場、需給調整市場、電気料金削減)で運用した場合の域際収支を図式化し、定量化する方法を提案する。1キャンパスの電力データを1つの地域と見なし域際収支の定量化を行った。蓄電池出力1,600kW、6時間容量の調整力を活用し、地域内に流入する資金は65,074千円/年、地域外に流出する資金の低減効果は27,915千円/年と試算でき、調整力を活用した地域活性を見出した。
 

●シビックプライド概念の再検討

                                 藤根奈実子・五味壮平(岩手大学)

 
論文要旨▼
シビックプライドとは「都市に対する市民の誇り」のことであり、その源泉や活用方法、測定尺度に関する研究が多く行われている。しかし、この概念の定義や測定方法には再検討の余地が残されている。本研究では、インタビュー調査の結果からシビックプライドの構成要素について検討した。シビックプライドが地域に対する行動や活動に直接つながり得るものとして分析を行い、シビックプライドの構成要素として<感情>、<意欲>、<規範>の3つのカテゴリーが得られた。<感情>には『地域に対する願望』、『アイデンティティ』、『プライド』等のサブカテゴリーが含まれ、<規範>には『責任感』、『行動指針』等のサブカテゴリーが含まれる。

 

実務研究論文

 

●開放特許を活用した中小企業支援の在り方に関する一考察
~地域金融機関へのインタビュー調査より~

 

                                                                                                          新井 稲二(産業能率大学)

論文要旨▼

地域産業政策において、川崎市が実施する「川崎モデル」が注目されている。しかし、川崎モデルに類似する取組は各地の自治体・支援機関等でも実施されており、これら取組との違いはどこにあるのかを整理することで、開放特許を活用した中小企業支援に関して支援の在り方を明らかにすることを目的とする。

 調査では、支援機関が主体となった取組みとして2つの信用金庫を対象とした。結果からは、支援機関が中心となった取組みであっても他の行政・支援機関との連携は重要であるが、支援機関自身が支援方針を定めることも必要であることが明らかとなった。

 
 

●大学のない地方中小都市と大学生を繋ぐポストコロナにおける交流のあり方
-パターン・ランゲージを活用した域学連携のデザイン-

 

                        大宮 理夏子・小林 重人(札幌市立大学)

 
論文要旨▼

大学のない地方中小都市では、大学進学を機に若者の数が減少してしまう問題がある。そこで本研究は、ポストコロナにおける地方中小都市と大学生とのハイブリッド型の交流に効果的な要素を明らかにし、交流をデザインする現場において活用可能な方法を提案し、その効果を検証することを目的とする。インタビュー調査の分析から、ハイブリッド型の交流に効果的な要素をプログラムの入口、中身、出口の3つに分けて明らかにした。これらの要素をパターン・ランゲージの手法を用いて16個のパターンにまとめ、カードを作成した。ワークショップによる効果検証を経て、大学のないあらゆる地方中小都市で活用できる一般化したパターンカードを作成した。

 

●島大・地域ジョイント事業「じげおこしプロジェクト」の特徴
および市町村と大学の効果的なコーディネート手法

 

                         服部 大輔(島根大学 地域未来協創本部)

 
論文要旨▼

島根大学は、市町村と協働で地域課題を解決するじげおこしプロジェクトを行っている。本研究は、(1)じげおこしプロジェクトの特徴、(2)成功事例と課題事例の要因、(3)効果的なコーディネート手法を明らかにすることを目的とした。じげおこしプロジェクトは、松江市と出雲市で最も多く実施されていた。代表者の約半数は、生物資源科学部だった。分野は、農業・農産品が最も多かった。成功事例と課題事例は、登場組織や人物の意志の方向性により説明できた。その結果、プロジェクトの成功には、①活動資金をえること、②相互理解を促し信頼関係を築くこと、③強引なマッチングを避けることが重要であることがわかった。大学のコーディネーターは、これらのことをふまえ効果的なコーディネートを行う必要がある。

 

●社会人のマインドチェンジを実現する要因の考察
―信州大学リカレントプログラムの事例からー

 

                          

                              

                                                                                                              藤尾 宗太郎・林 靖人

                                                                                (信州大学 ユニバーシティ・エンゲージメント室)

 

論文要旨▼

本研究ではリカレント学習の普及を促し地域活性化へ貢献することを目的として「社会人が学び始めるといったマインドチェンジを実現する要因」について考察した。2018年より国立大学法人信州大学とコンソーシアムが実施している実践型リカレント学習プログラム「信州100年企業創出プログラム」を研究対象とし調査を実施した。その結果、社会人がマインドチェンジを実現する要因は「大学側からの動機強化の働きかけ」「実施主体(組織・場所)」「参加者側の事情(キャリア転換のタイミング、応募当時の状況に対する不満、家庭の状況など)」であることが明らかになった。また40代-50代は「大学側からの動機強化の働きかけ」が機能すると示唆された。

 

 

 

 

学術研究ノート

 

関係人口を創出するシェアハウスとその機能 2
〜関係人口が地域と関係性を深めるシカケ〜

 

内田考生・林靖人(信州大学) 
論文要旨▼

関係人口を創出する一つの施策としてシェアハウスに注目した。本研究はその中でも、当該シェアハウスを地域コミュニティへの関与を意識したシェアハウス“地域コミュニティ関与型シェアハウス”として定義し、関係人口を創出する機能を持った施策として体系的に捉え、当該地域はもとより他地方の多様な社会問題解決の可能性を検証する萌芽的研究として2022年度より進めている。本研究では、2022年度の研究で確認できた関係人口と定住人口との社会関係資本の拡大についてさらに推し進め、その仕方、また拡大させるポテンシャルを持つシェアハウスの住民がどのように集まるのかにフォーカスし、調査を進めた。

 

地方自治体によるワーケーションを活用した産業政策に関する研究
―福山市・妙高市・かすみがうら市に着目して―

 

                       薗 諸栄(追手門学院大学大学院経営・経済研究科)

 
論文要旨▼
本研究では、地方自治体のワーケーション事業を地域産業政策として捉えた上で、3市を典型事例として調査を行い、産業政策としてのワーケーションの実態を明らかにするとともに、事業の実施状況と併せて事業の具体的成果を調査することにより、特に地域イノベーションとの具体的関係を考察した。その結果、ワーケーションを単なる観光誘致の手法として捉えず、地域の課題解決や活性化といった産業政策に重点を置き事業を展開していることが明らかになった。
 
 

 

地方自治体のワーケーション推進による関係人口の創出
-青森県青森市と静岡県下田市を事例として-

 

                                                                                   薗 諸栄(追手門学院大学大学院経営・経済研究科)

 
論文要旨▼
本研究では、関係人口の先行研究を踏まえながらワーケーションとの関係性について、わが国における政策背景を概観する。ワーケーションによる関係人口を創出する事業に着目して取り組んでいる下田市と青森市を事例として取り上げ、実態調査に基づいて地方自治体の取り組みの経緯について分析を行い、関係人口の創出に向けて地方自治体に求められる役割について考察した。研究結果として、ワーケーションによる関係人口の創出には、組織体制の整備、効果的な情報発信、地域住民との交流強化、地域資源の有効活用が重要であることが確認された。また、ワーケーション参加者と地域内での協働が大きいほど関係人口が創出されやすいことが確認された。

 

異質-開放型地域コミュニティの成立過程の解明―新参者と地域の「共同性」に着目してー

田原洋樹(明星大学経営学部)
 
論文要旨▼
本研究は、地域社会学における「共同性概念」を端緒にし、従来の同質-閉鎖型の地域コミュティではなく、異質-開放型の地域コミュニティにおける共同性の成立過程を明らかにすることを目的とした。そこで本研究では、多様な動機にもとづいて、特定地域に新たに参入する地域外人材を新参者と呼び、新参者が共同性を育む主体として地域社会に定着していく過程に着目した。福島県西会津町で活動する新参者を対象にした、半構造化インタビューから得られたデータをもとに検証した結果、共同性の成立過程における新参者の自覚化と行動化のプロセス、新参者を受容する地域側の変化が明らかになった。
 

 

再生可能エネルギー及び調整力を活用した脱炭素化シナリオにおける
地域経済循環分析の域際収支に関する研究

 

                                                                  長屋 太樹、川口 絵美、加藤 伸之、松井 康人(京都大学)

 
論文要旨▼
再生可能エネルギー(以下、再エネ)の大量導入に伴い、再エネの出力抑制や出力変動に対応する調整力[1]の必要性が高まりつつある。地域活性化において、再エネを活用したエネルギーの代替だけでなく、調整力を活用した域際収支の改善を図る必要がある。地域新電力が再エネと調整力を運用する脱炭素化シナリオを用意し、地域経済循環分析に必要となる卸電力市場、非化石価値取引市場、容量市場、需給調整市場、インバランス精算等を考慮した域際収支を定量化した。計測した需要及び発電データを活用し、4シナリオを基に域際収支を比較することで、再エネと調整力の運用により域際収支の改善に寄与できる可能性を見出した。
 
 
 
 
  商業高校が取り組む商店街活性化実践における教育効果の検証
-神戸市長田区大正筋商店街での取り組みを事例として-

                         

                                       延原 宏(神奈川工科大学)

論文要旨▼

近年、住民の消費行動の変化に伴い、商店街の衰退は地域の大きな課題となった。こうした状況を受け、全国の商業高校が商店街活性化に参加する学習活動が進められている。これまで商業高校の商店街活性化では、①店主の理解不足、②指導教員の力量不足、③生徒のやる気不足などの課題があった。

今後も商業高校が、商店街活性化に参加する上で、教育効果を検証しておくことは重要である。本稿では、特に神戸市の商業高校が行う神戸市長田区の大正筋商店街活性化活動に参加した生徒の意識変化に着目し、教育効果を整理・考察した。その結果、事前授業で評価の観点等を共有することで、生徒の多面的なアプローチが引き出されることが明らかになった。

 

自治体とJICAの地域連携による地域活性と国際協力の相乗効果
―JICA草の根技術協力事業地域活性型の事例分析から―

 

             

                                                                        森田 晃世(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科)

                                                                                             玉村 雅敏(慶應義塾大学総合政策学部)

 
論文要旨▼

本研究では、自治体による国際協力が国内の地域活性にもたらす成果を検証した。①草の根技術協力地域活性型を実践する自治体及び実施団体の傾向は何かと、②自治体及び実施団体はどのような地域活性の成果を地域に還元したかを課題として設定した。地域活性型では、基礎自治体と多様な団体による共同実施体制が主流化しており、実績のある117の基礎自治体の内、27の自治体が3案件以上の継続性のある国際協力を実施している傾向がわかった。また、自治体と実施団体の連携を①交流型、②価値発見型、③課題解決実践型、④知識共有型に類型化し、事業成果を概念化することで、地域活性にもたらす成果指標を構築した。

地域活性化に貢献し得る芸術祭出展作品の特徴の分析

                                                                         森本祥一(専修大学)

 
論文要旨▼
地域活性化を志向したアートイベントが各地で行われているが、どのような作品を制作すれば地域活性化につながるのか、具体的には示されていない。よって本研究では、成功事例である大地の芸術祭と瀬戸内国際芸術祭の出展作品270点を対象に、混合研究法を用いてその特徴を分析し、地域活性化に貢献し得る作品制作の在り方について考察した。まずフィールドワークによって作品の質的データを収集し、グラウンデッド・セオリー・アプローチにより分析した。そこから質的変数を定義し、コレスポンデンス分析を行った。双方の結果を統合し、対等な協働によって制作された作品は芸術性・公共性を両立させ、地域活性化に貢献し得ることが明らかになった。
 

 

 

事例報告

『サイクリング×人のつながり×学び』の相関性がもたらす地域が潤うサイクルツーリズムの研究

―帯広市での実証実験を通じてー

海野 麻恵(信州大学)

論文要旨▼

2017年に国土交通省が自転車活用推進法を施行して以来、各地でサイクルツーリズムが推進されている。しかし、その取組の最下位がガイドの養成とガイド付サイクリングツアーの企画・発信であるため、ガイド付サイクリングにおける学びや消費購買行動などに関する先行研究も途上である。

本研究では、『サイクリング×人のつながり×学び』の相関性がもたらす地域が潤うサイクルツーリズムついて実証実験を通して調査分析を行った。その結果、地域消費購買行動促進システムを導入したガイド付サイクリングツアーは『サイクリング×人のつながり×学び』を創出し、五感の活用を向上させ、地域での消費購買行動向上を促進させることが示唆された。

 

 

『スポーツによる地域振興』に関する取組の現状と課題
‐東海エリアの調査結果から‐

 

                                       

                                                                                                                    海野 麻恵(信州大学)

 
論文要旨▼
少子高齢化社会や3大都市圏への人口集中などにより、地域においては人口減少の顕在化や地域経済の停滞が起こり、税収の減縮が顕著になっている。このような状況下において地域経済を活性化させるためには交流人口の増加による経済効果の創出が重要な地域振興策である。さらに、地域資源を活用した目的活動を創出することが必要であり、そのための取組として「スポーツによる地域振興」が注目されている。本論文では、東海エリアに焦点を当て「スポーツによる地域振興」に関する実態調査の実施を通して、各自治体の取組について現状と課題を分析・検証しながら基礎研究を行い、今後、自治体が果たすべき役割を明らかにするための課題を考察した。
 
 

津久井やまゆり園事件後の神奈川県における「ともに生きる社会」活動の推移
-ともいきアートサポート事業を通して-

 

楠田弥恵(横浜市立大学都市社会文化研究科)
論文要旨▼
2016年に発生した県立津久井やまゆり園での施設利用者殺傷事件後、神奈川県は障がい者に対する偏見・差別的思考をなくし、誰もが安心して暮らせる社会を実現するために「ともに生きる社会かながわ憲章」を定めた。そしてその目標への具体的アプローチのひとつとして、2020年度より「ともいきアートサポート事業」を展開している。アートを通じて障がいの有無に関わらず、お互いを理解し尊重しようという試みである。作品の露出機会は、各種会場での展示のみならず、オンライン展示さらには仮想空間メタバースの利用に発展してきている。特に仮想空間の利用は空間的な制約にとらわれず自由な展示が可能になるため、注目に値する。本稿ではその事業の進捗を現場に立って取材し検証した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地方自治体におけるコワーキングスペースの運営実態に関する研究​

薗 諸栄(追手門学院大学大学院経営・経済研究科)

本研究では働き方改革の観点からテレワークが推奨される中で、地方自治体のコワーキングスペースの運営実態を明らかにする。研究手法としては地域においてコワーキングスペースを開設する地方自治体にその取り組み状況に関するアンケートを実施し、開設の状況、イベント交流、実施利用者の実態、連携している企業・団体を明らかにすることを目的としている。本研究の結果、コワーキングスペースの設置による影響として関係人口の増加、ベンチャー企業の設立など地域社会に対して影響を持っていることが明らかになった。

 
自治体のサテライトオフィス誘致に関する実証研究

                       薗 諸栄(追手門学院大学大学院経営・経済研究科)

論文要旨▼

本研究では、新型コロナウイルス感染症の拡大によって柔軟な働き方に関心が高まり、都市部からの人の流れを創出するために自治体がサテライトオフィスを誘致する目的やその手法を明らかにすることである。研究手法としては地域においてサテライトオフィスを誘致する自治体にその取り組み状況に関するアンケート調査を実施し、その結果を整理する。研究の結果、自治体が誘致したい企業規模は中規模な企業や都市部の企業で、職種としては情報サービス業であることが明らかになった。

総社市の移住促進を狙うPR動画における、テーマ設定と視聴者の移住意向に関する実践的研究

                                                   髙橋 俊臣(岡山県立大学)

論文要旨▼
地域で制作されているPR動画は、そのほとんどが認知向上を目的とし、話題化を狙ったものが多い。一般的なマーケティング・コミュニケーションは消費行動の初期段階である注意や認知をコミュニケーション目標とし、段階を経て行動に導いていく。しかし、地域が抱える人口減少問題は深刻で急いで取り組む必要がある。仮にPR動画が注意や認知を超えて移住行動へアプローチできれば、地域活性に特化した行動プロセスに迫ることができ、問題解決への大きな力になる。そこで本研究では、まず、移住を目的としたコミュニケーションの接触から行動までのプロセスについて先行研究の調査と考察を行い、新たな定義を試みた。そして、岡山県総社市のPR動画を2年にわたって2本制作し公開した。その後、アンケートによってPR動画による移住意向への影響とテーマ設定との関係性を分析した。
 
 
シェアリングエコノミーを活用した地域活性化に関する研究
〜福井県永平寺町を対象として〜

                                             永野 聡(立命館大学産業社会学部)

論文要旨▼

(一社)シェアリングエコノミー協会では、シェアリングエコノミーの定義を「インターネットを介して個人と個人の間で使っていないモノ・場所・技能などを貸し借りするサービスです。」としている。一方、日本では「互助・共助の姿勢」が存在している。また、農村部を中心として生産から消費まで生活圏での循環型社会が構成されている。本研究では、この人的かつ社会的関係も「田舎版シェアリングエコノミー」ではないかと捉えている。そこで、本研究では、シェアリングエコノミーと「田舎版シェアリングエコノミー」を活用した地域活性化に関して、福井県永平寺町での実証からみえる成果と課題をまとめる事を目的とする。その結果、福井県永平寺町において、シェアリングエコノミーの用語自体を知らない、または、プラットフォーム自体のコミュニティが小さく、サービスを享受する者が圧倒的に少ない等の課題が山積している事がわかった。

 

首都圏在住高齢者のギャンブル行動特性
-定量調査をふまえて-
 
 

                                                                                                     福井 弘教(横浜国立大学大学院 環境情報学府)  

論文要旨▼

本研究は、高齢者のレジャー行動の一環であるギャンブル行動の実態を性差に焦点をあてて明らかにする
ことを目的とした。首都圏在住の高齢者1044名に対する調査の結果、高齢者全般に関する知見としては、1)ギ
ャンブル行動はレジャーのなかで特異な位置づけではあるが障壁は高くない。2)ギャンブル行動が多様な条件
下(目的)を契機としても、ギャンブル依存症に罹患する可能性があるという示唆が得られた。3)ギャンブル
行動において、他者との「交流」は必ずしも重視されていないことが示唆された。4)参加要因の主流は、「儲か
る可能性がある」ことから参加していたことが、自由記述回答からも明らかとなった。通常、レジャー行動は金
銭を消費することはあっても増加することはないが、ギャンブル行動においては、金銭を増やせる可能性を含意
している。それがギャンブルの魅力であるといえよう。他方、性差に関する知見としては、1)活動的であるの
は男性だが、ギャンブル志向が強いのは女性であった。男性は「儲け」を重視して参加するが、女性は儲けを重
視するわけではない。女性の方が「儲け」、「金銭」に執着しないという示唆が得られた。2)女性は、男性と比
較するとギャンブル依存症に罹患しづらいことが示唆された。地域活性化に資する適切なレジャー行動に向けて
は、自身の経済事情などに合わせた金額を設定するなど事前の対策を網羅することで依存症などの問題行動への
架橋は遮断される可能性があると考えられた。

 

地方の優位性と企業戦略

                  山本樹育(YAMAKIN株式会社)、那須清吾(高知工科大学)

論文要旨▼

高知県香南市に本社を置くYAMAKIN株式会社(以下、ヤマキン)は、1957年に大阪府にて創業した企業である。主に歯科医療材料の開発・生産・販売を行っている。1991年に高知工場を建設し、1995年に研究開発拠点を設け、2001年には生産拠点を大阪府から高知県に全面移転し、同社は急速に成長を遂げた。その成長メカニズムを、高知県のエコシステムを形成する企業、行政、公的機関、大学、マスコミなどのプレイヤーとの関係性の動的変化のパターンから解明した事例研究である。経営者自らの参与観察により、企業の独立性の高さや市場形態、製品特性等の変数を踏まえた記述的推論によりそのメカニズムを示した。組織がその目的を達成する為に相互に必要とする経営資源を交換する関係を構築することで、中小企業が地方のエコシステムで成長していた。中小企業にとって特定の変数において地方のエコシステムの優位性を活かせることを示したものであり、一定の変数のもとで企業戦略により中小企業が地方のエコシステムで成長する論理の一般化の可能性がある。


地域活性学会 事務局(堀本・那須)
高知県高知市永国寺町6番28号 高知工科大学 地域連携棟4階
社会マネジメントシステム研究センター内
TEL:088-821-7211

学会事務局新代表メールアドレス:info@chiiki-kassei.com

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