地域課題に取り組む人々とサポートする地元や政府の行政グループを研究者が大学という場で有機的結合を図る。これによって三者が一体となって地域の再生に取り組む。これが2006年にスタートした「地域再生システム論」の基本構造でした。地域活性学会はこの「地域再生システム論」開講大学を中心に2008年に創設されました。まだ14年目という若い学会ですが会員数は1000名を超えました。また、研究大会の開催、研究論集の発刊をはじめ支部活動、研究部会活動も着実に実績を積み上げています。
学会がスタートした時点においても地域社会は少子高齢化、人口減少、過疎化の進行という厳しい状況の下で様々な課題を抱えていました。10年の月日を経た今日これらの状況は一層深刻さを増しています。高齢化による労働力不足は耕作放棄地の増加や森林の荒廃につながっています。地方の介護労働力不足も見逃すことはできません。これら従来から指摘されていた状況に加えて毎年のように繰り返される降雨水害をはじめとした自然災害は改めて地域コミュニティの力の再構築の必要性を訴えているかのように思えます。また、東日本大震災に見舞われた東北地方の復興にはさらに長い道のりが待っています。そのような状況に加えて新型コロナウイルスによるパンデミックが全世界を震撼させています。長期にわたる目に見えないウイルスとの戦いは人々の生活のあらゆる分野に影響し変化を起こしています。行動規制によって人々の心も行動形態にも深刻な影響が出ています。また、外出や接触の規制による経済活動への影響は甚大です。地域活性化に重要な役割を果たしてきた観光業、旅行業、飲食業の今後は予断を許さないでしょう。教育分野での影響は長期的な視点で慎重に見極めて行かねばなりません。
このように地域社会を取り巻く環境はさらに厳しさを増しています。その中でコロナによってもたらされた様々な影響を克服して地域の活力を取り戻すためには地域に関わる皆さんの叡智を結集することが求められています。これまでの延長線上ではない発想で暮らしや働き方、さらに社会のあらゆる面での見直し、立て直しが必要です。このアフターコロナの社会に速やかに移行しようとするための研究、努力、活動の一つ一つが我が国を立ち直らせる土台を作ることにつながります。
パンデミックを乗り越えて新しい活力ある地域社会を作るために研究者と地域の皆さんと行政、この三者が知恵を出し合い実践活動も展開する。地域活性学会はそんな役割を担った学会でもあるのです。地域の活性化に関心のある研究者の皆さん、実践家の皆さん、行政の担当者の皆さんをはじめ多くの皆さんとこの地域活性学会で地域社会のあり方、未来を語り合いたいと思います。